屍人の陰陽師

うてな

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ヨスガ編

042 一週間の制約

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タワーの頂上まで来ると、そこは展望台で街を一望しようと集まる観光客で賑わっていた。壁は一面ガラス張りで、高所が苦手な人にとっては耐えがたい場所だろう。
翔太郎はユリアを探しながら歩き、レフも翔太郎を追いかける。レフは高く浮くと、ユリアを見つけて言った。

「翔太郎さん、こっちです!」

それを聞いて翔太郎は、レフの指す方へと向かう。ポチもレフを見ており、韻に言った。

〔韻、こっち。〕

「おう。」

そして一同はユリアのすぐ近くまで来ていた。ユリアは気づいていたのか、翔太郎の方を見て言う。

「来ていたのね。」

すると翔太郎と並んだ韻は、ユリアを見ると見惚れたように頬を赤らめた。

「え…めっちゃ美人じゃん…」

〔こら韻。〕

ポチがそう言うと、翔太郎は呆れた様子で言う。

「韻はね…こういう内に強さを秘めてそうな清楚系な子が好みなんだよ…。」

〔そっか…だから尾崎まいの事も…〕

「言うなッ!」

韻は惚れていた様子から一変、眉を釣り上げてポチに怒った。しかしポチは顔を背け口笛を吹いてスルー。翔太郎はそれに苦笑してから、ユリアに真剣な表情を見せた。

「一つ質問します。…龍が現れた日の歪は、あなたが放ったもので間違いないですか?」

「ええ。」

「サトリさんからあなたの名前を伺いました。それで僕は仮説を立てたんです。…あなた達は黄泉という人物を中心に集まる団体なのではないかと。」

翔太郎が聞くと、ユリアは少し黙る。韻は一歩前に出て言った。

「黙るなよ。せめて連絡先…」

〔韻。〕

強めにポチが言うと、韻はつまらなそうな表情。するとユリアは口を開く。

「…ええ、そうよ。私達は、黄泉を中心とした霊能者の集まり。勿論昨晩の龍も、私達の仲間。」

その言葉を聞き、翔太郎は目を剥いて驚く。韻は何が何だかわからないので、首を傾げていた。ちなみにポチはある程度の事情を知っているのか、警戒した様子を見せる。ユリアは続けた。

「黄泉は、この世界を完璧にしようと考えているの。その為には、沢山の魂が必要なんですって。」

「それで歪に人を襲わせているのですか?」

「そういう事。」

「その人の理想の為に、人間を犠牲にしようとしているのですか…?見過ごせない話です…!」

翔太郎がそう答えると、韻はユリアを睨んで言う。

「おい、待てよ。龍がお前達の仲間って言ったか?」

「ええ。姿を自由に変えられる妖…便利な玩具ね。」

すると韻は怒りの剣幕を鋭く相手に向け、拳を握った。

「玩具だって…!?要の兄貴が黄泉とか言う他人の為に、人を殺める訳ねぇ!お前達、要の兄貴に何かしたんだろ!」

「…あら、あの龍…貴方の知り合いだったのね。」

ユリアは悠然と答えると、韻は怒りを抑えきれない様子でいた。翔太郎も相手を警戒していると、ユリアは言う。

「そうね。…あと一週間だわ。」

「…は?」

韻がそう言うと、ユリアは背を向けた。

「あの龍はあと一週間で私達の物になる。それ以降は…例え取り戻したって、精神を失った『抜け殻』になる。」

その言葉に韻は意味がわからなく目を丸くしたが、翔太郎は意味を理解したのか眉を潜めた。

「…韻、一週間以内に要くんのお兄さんの正気を戻さないと。そうしないと、元のお兄さんは帰ってこない…記憶も心も失うんだ…!」

「はぁ!?そんな事させねぇ!!」

韻の言葉に耳を傾けず、ただ都会の街並みが広がる様子を窓から見つめるユリア。その瞬間、ユリアのいる付近を中心に窓ガラスが広範囲にかけて割れてしまう。人々は驚き、悲鳴を上げたりしながらも避難をし始めた。ちなみに先ほど掲示板を見ていたポシェット持ちの少女も現場におり、半分パニックになっていた。

「嘘…まさか…!」

そう呟いて。一方ユリアは言う。

「…言いたい事は言ったから、さようなら。」

そしてユリアは、割れた窓から飛び降りた。韻はお構いなしに追いかけ、それを翔太郎が呼び止める。

「韻ッ!やめるんだ!」

それでも韻は窓の外へと向かう。しかしタワーの下から、一羽の歪が現れる。鳥の翼を得た、漆黒で小柄の歪だ。韻は思わず足を止め、戦闘をする構えを取る。ポチは言った。

〔逃げ足の速い人だ。韻、とりあえず歪を倒すよ。〕

「ああ、そうすっか。」
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