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ヨスガ編
043 人間は良いけど、屍人は?
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ユリアの消えたタワーの下から、一羽の歪が現れる。鳥の翼を得た、漆黒で小柄の歪だ。韻は思わず足を止め、戦闘をする構えを取る。ポチは言った。
〔逃げ足の速い人だ。韻、とりあえず歪を倒すよ。〕
「ああ、そうすっか。」
そう言って韻は片手に電気の球を作り出す。そして球をボールの代わりにして、サッカーの様にして蹴り飛ばした。鳥は素早い動きで避けるので、韻はもう一度チャレンジ。しかし何度も何度も同じ事の繰り返しで、遂に韻は頭を抱える。
「速ぇ!なんだよコイツ!」
頭を抱えた韻に、思わず翔太郎は苦笑。レフは純粋に同情していたが、ポチは呆れた様子だった。そこで歪が隙を突いて攻撃をしてくるので、翔太郎は急いで結界を貼って韻を救った。韻は笑みを浮かべる。
「兄貴…!」
「言っただろう、韻を守るって。」
「そーかよ!」
韻はニカッと笑うと、翔太郎も笑顔を向けた。するとポチは言う。
〔だけど、このままだと埓があかない。〕
するとポチの周囲で電気がバチバチと火花を散らす。続いて現在地から少し高度を下げたタワー周辺に電気の膜が薄らと浮かんできた。それに翔太郎は目を丸くして見ていると、膜は徐々にしっかりとした柵のように。現在地を中心に全方向を、タワーを包む様に円形の巨大な電気の柵で囲ってしまうポチ。その大きさはざっと直径百メートル弱。更にその柵は徐々に縮まって小さくなっていくので、歪はその中で自由に動けなくなっていく。
〔僕の【痺柵(ヒサク)】だよ。〕
「ナイスポチ!」
そう言って笑顔を見せる韻。翔太郎は目を丸くして見ていた。
(凄い…。ポチくんは韻の足りない所を補っている感じがする。にしても、僕もあのくらい大きな結界を貼れるようになりたいな…。)
「できますよ。」
と傍で言ってきたのは、なんとレフ。翔太郎は驚いてしまう。
「れ、レフさん!?今、僕の心の中を…!」
しかしそれを笑顔ではぐらかされてしまう。
「ほらほら翔太郎さん、早く歪を解きませんと。」
「…はい。」
翔太郎は詳細を聞けずに、歪へ向かう。翔太郎は考えていた。
(やっぱりレフさんって不思議な幽霊…。本当にただの幽霊なんだろうか…?)
翔太郎は韻の近くまで来ると、韻は言った。
「兄貴、ポチが柵を貼ったから降りても平気だぜ。」
「え?でもあの柵、電気だよね!?」
〔僕の電気は『人間』に通用しないから。〕
「そうそう!ポチの人間大好きな心が、電気を無害にさせてるんだってよ!」
韻とポチはそう言っていたが、翔太郎は何一つ喜べなかった。翔太郎は満面の笑みを二人に見せつつも思う。
(『人間』じゃない『屍人』の僕はダメージを受けるって事だね…絶対に飛び込めない。)
「こ、怖いから僕はいいよ。」
翔太郎の答えにポチは、重要な事を思い出したような顔をした。ポチは焦った様子になる。
〔ま、まあ人間は高いところ苦手らしいし…無理にとは言わないよ。〕
それを見た翔太郎は思う。
(薄々感じてはいたんだけど、ポチくんって僕が屍人である事知ってるよね…?レフさんから聞いたのかな?)
ちなみに韻は歪相手にサッカーを続けており、やっと一発当てた所であった。韻はガッツポーズ。
「っしゃー!!兄貴見たか!?」
「いや、遊びじゃないんだから…!」
翔太郎はそう言いつつ歪を見上げた。
(僕の目的は、あくまで霊能者を倒して自分の願いを叶える事だけど…。その霊能者達が、たった一人の理想の為に歪まで作って人々を殺めるなんて……許される事じゃない…!)
すると、二人の背後から女の声が聞こえた。
「やめて『凛々子』!!」
一同は驚いて背後を見ると、そこには先程掲示板を眺めていた少女がいた。少女は泣き崩れており、頭を抱えて泣き叫んでいた。少女の子供用のポシェットを見ると、韻は目を丸くしている。
「なんで女子高生っぽいのが子供のバッグを?てかお前、避難しろよ危ねぇ。」
「許して凛々子!!本当に悪気は無かったの…!!」
その言葉を聞いて、翔太郎はピンと来た。翔太郎は歪を見ると言う。
「もしかして…あの歪が凛々子さん?」
「は?歪が普通の人間に見えるのか?」
韻の質問に、翔太郎は眉を潜めた。
「いいや、見えていないと思う。でも多分…彼女は何かあって、この怪現象を凛々子さんのものだと思っているんだろう。韻、その女性をよろしく。僕は歪を止める!」
すると翔太郎は勇ましくも、割れた窓から歪へ飛び込んだ。それも一歩間違えれば電気の柵に落っこちるのにだ。ポチは目を剥いて驚いており、事情を知らない韻は「行けぇー!」と笑顔でいた。
場面は変わり、黄泉の砦にて。
ここにユリアは帰ってきており、ビルの最奥の部屋へと来ていた。そこで黄泉は椅子に腰掛けており、その近くにヨスガもいる。ユリアは黄泉に言った。
「言われた通り、情報をチラつかせておいたわ。」
「よくやったユリア、これで作戦通りに行くだろう。」
黄泉はそう言うと、怪しい笑みを浮かべる。それからヨスガを見て言った。
「全く君は、とんでもない『化物』の身体を乗っ取っちゃったみたいだね。」
「すいません~。まさかこの身体が、妖世界の『王様の実兄』とはつゆ知らず~。」
ヨスガにあまり反省の色はなかった。ユリアは黄泉に言う。
「妖世界の王…。噂によると黄泉様を凌ぐ力を持つと聞くわ。」
「そう、だから厄介なんだよ。王様は必ず、兄を取り戻しにこの世界へやって来る。」
「不意を突いてやっつけるんですね!黄泉様あったまい~!」
ヨスガは笑って言うと、ユリアは軽く溜息を吐いた。
「上手く行くかしら。返り討ちにされる可能性もあるわ。」
「大丈夫だよ。王様と言えど、まだ妖力の扱い方もまともに知らない子供だから。」
そう言って黄泉は立ち上がった。すると黄泉の背から、蜘蛛の脚が四本生えてくる。漆黒で毛並みからしても禍々しい。黄泉は水色の瞳を光らせながらも言う。
「…行動を起こされる前に、【封印】すればいい。」
〔逃げ足の速い人だ。韻、とりあえず歪を倒すよ。〕
「ああ、そうすっか。」
そう言って韻は片手に電気の球を作り出す。そして球をボールの代わりにして、サッカーの様にして蹴り飛ばした。鳥は素早い動きで避けるので、韻はもう一度チャレンジ。しかし何度も何度も同じ事の繰り返しで、遂に韻は頭を抱える。
「速ぇ!なんだよコイツ!」
頭を抱えた韻に、思わず翔太郎は苦笑。レフは純粋に同情していたが、ポチは呆れた様子だった。そこで歪が隙を突いて攻撃をしてくるので、翔太郎は急いで結界を貼って韻を救った。韻は笑みを浮かべる。
「兄貴…!」
「言っただろう、韻を守るって。」
「そーかよ!」
韻はニカッと笑うと、翔太郎も笑顔を向けた。するとポチは言う。
〔だけど、このままだと埓があかない。〕
するとポチの周囲で電気がバチバチと火花を散らす。続いて現在地から少し高度を下げたタワー周辺に電気の膜が薄らと浮かんできた。それに翔太郎は目を丸くして見ていると、膜は徐々にしっかりとした柵のように。現在地を中心に全方向を、タワーを包む様に円形の巨大な電気の柵で囲ってしまうポチ。その大きさはざっと直径百メートル弱。更にその柵は徐々に縮まって小さくなっていくので、歪はその中で自由に動けなくなっていく。
〔僕の【痺柵(ヒサク)】だよ。〕
「ナイスポチ!」
そう言って笑顔を見せる韻。翔太郎は目を丸くして見ていた。
(凄い…。ポチくんは韻の足りない所を補っている感じがする。にしても、僕もあのくらい大きな結界を貼れるようになりたいな…。)
「できますよ。」
と傍で言ってきたのは、なんとレフ。翔太郎は驚いてしまう。
「れ、レフさん!?今、僕の心の中を…!」
しかしそれを笑顔ではぐらかされてしまう。
「ほらほら翔太郎さん、早く歪を解きませんと。」
「…はい。」
翔太郎は詳細を聞けずに、歪へ向かう。翔太郎は考えていた。
(やっぱりレフさんって不思議な幽霊…。本当にただの幽霊なんだろうか…?)
翔太郎は韻の近くまで来ると、韻は言った。
「兄貴、ポチが柵を貼ったから降りても平気だぜ。」
「え?でもあの柵、電気だよね!?」
〔僕の電気は『人間』に通用しないから。〕
「そうそう!ポチの人間大好きな心が、電気を無害にさせてるんだってよ!」
韻とポチはそう言っていたが、翔太郎は何一つ喜べなかった。翔太郎は満面の笑みを二人に見せつつも思う。
(『人間』じゃない『屍人』の僕はダメージを受けるって事だね…絶対に飛び込めない。)
「こ、怖いから僕はいいよ。」
翔太郎の答えにポチは、重要な事を思い出したような顔をした。ポチは焦った様子になる。
〔ま、まあ人間は高いところ苦手らしいし…無理にとは言わないよ。〕
それを見た翔太郎は思う。
(薄々感じてはいたんだけど、ポチくんって僕が屍人である事知ってるよね…?レフさんから聞いたのかな?)
ちなみに韻は歪相手にサッカーを続けており、やっと一発当てた所であった。韻はガッツポーズ。
「っしゃー!!兄貴見たか!?」
「いや、遊びじゃないんだから…!」
翔太郎はそう言いつつ歪を見上げた。
(僕の目的は、あくまで霊能者を倒して自分の願いを叶える事だけど…。その霊能者達が、たった一人の理想の為に歪まで作って人々を殺めるなんて……許される事じゃない…!)
すると、二人の背後から女の声が聞こえた。
「やめて『凛々子』!!」
一同は驚いて背後を見ると、そこには先程掲示板を眺めていた少女がいた。少女は泣き崩れており、頭を抱えて泣き叫んでいた。少女の子供用のポシェットを見ると、韻は目を丸くしている。
「なんで女子高生っぽいのが子供のバッグを?てかお前、避難しろよ危ねぇ。」
「許して凛々子!!本当に悪気は無かったの…!!」
その言葉を聞いて、翔太郎はピンと来た。翔太郎は歪を見ると言う。
「もしかして…あの歪が凛々子さん?」
「は?歪が普通の人間に見えるのか?」
韻の質問に、翔太郎は眉を潜めた。
「いいや、見えていないと思う。でも多分…彼女は何かあって、この怪現象を凛々子さんのものだと思っているんだろう。韻、その女性をよろしく。僕は歪を止める!」
すると翔太郎は勇ましくも、割れた窓から歪へ飛び込んだ。それも一歩間違えれば電気の柵に落っこちるのにだ。ポチは目を剥いて驚いており、事情を知らない韻は「行けぇー!」と笑顔でいた。
場面は変わり、黄泉の砦にて。
ここにユリアは帰ってきており、ビルの最奥の部屋へと来ていた。そこで黄泉は椅子に腰掛けており、その近くにヨスガもいる。ユリアは黄泉に言った。
「言われた通り、情報をチラつかせておいたわ。」
「よくやったユリア、これで作戦通りに行くだろう。」
黄泉はそう言うと、怪しい笑みを浮かべる。それからヨスガを見て言った。
「全く君は、とんでもない『化物』の身体を乗っ取っちゃったみたいだね。」
「すいません~。まさかこの身体が、妖世界の『王様の実兄』とはつゆ知らず~。」
ヨスガにあまり反省の色はなかった。ユリアは黄泉に言う。
「妖世界の王…。噂によると黄泉様を凌ぐ力を持つと聞くわ。」
「そう、だから厄介なんだよ。王様は必ず、兄を取り戻しにこの世界へやって来る。」
「不意を突いてやっつけるんですね!黄泉様あったまい~!」
ヨスガは笑って言うと、ユリアは軽く溜息を吐いた。
「上手く行くかしら。返り討ちにされる可能性もあるわ。」
「大丈夫だよ。王様と言えど、まだ妖力の扱い方もまともに知らない子供だから。」
そう言って黄泉は立ち上がった。すると黄泉の背から、蜘蛛の脚が四本生えてくる。漆黒で毛並みからしても禍々しい。黄泉は水色の瞳を光らせながらも言う。
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