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ヨスガ編
044 いつまでも
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翔太郎が目を覚ますと、そこは知らないマンションの階段だった。
「歪の心象世界…か。」
すると正面に、外階段と外を隔てる塀の上に座って景色を眺める少女がいた。翔太郎は焦って、少女に駆け寄って言う。
「君、落ちるから危ないよ!」
その声に気づいて少女は振り返ってきた。少女の顔を見ると翔太郎は見覚えがあるのか目を丸くする。
その少女は事件の張り紙で見た亡くなった少女だった。翔太郎は呆然としていると、少女は笑顔で言う。
「大丈夫だよお兄ちゃん!私、もう死んでるもん!」
「え…」
(亡くなっているのを理解しているのに…この小さな少女は、現世に留まっているのか…?)
すると少女は塀を降りて、翔太郎の方まで歩いてきた。翔太郎は少女を見つめていると少女は俯き、そして言いにくそうにしつつも話す。
「あのね…、『れな』に言いたいの。凛々子もう、れなの事は怒ってないって。」
「凛々子…!?」
(さっきの女子高生が言っていた名前…!)
翔太郎はそう言って口を思わず塞ぐと、凛々子は続けた。
「れな、いっつもここに来るの。」
凛々子が見上げた先には、翔太郎達が現実で居るタワー。
「私、れなとタワーに行く約束してて。だかられなは、ここに来ると必ずタワーに行くの。
毎年毎年だよ。年に二回くらい、必ず来るの。別に遊んでる訳じゃないよ。その時のれなはね、凄く悲しそうなの。」
翔太郎は凛々子の言葉を聞いた途端、胸に手を当てた。
(亡くなって十年間…。ずっと、お友達がここを訪れるのを見守っていたのか…。子供なのにどこか大人びているのは…その十年があるからか…。)
すると凛々子はやっと年相応に、目に涙を浮かべた。凛々子は翔太郎の前で、手で涙を拭いながら泣く。
「私っ…れなとお話したくって…!『お話できる』って言われて、女の人についてっちゃったのっ…」
(ユリアさんの事かな…。)
「でもこのままじゃ、私がれなを傷つけちゃうよ…!!ヤだよ、ヤだよぉ~…!」
泣く凛々子の頭を、翔太郎は優しく撫でた。凛々子は翔太郎を見上げると、翔太郎は凛々子の目線までしゃがんで優しく笑む。
「そうか…。凛々子ちゃんは、れなちゃんとお話したかっただけなんだね。」
「うん…」
「わかった。僕がどうにかする。」
「ほんと…?」
凛々子の表情が変わると、翔太郎は安心できるように笑みを浮かべて強く頷いた。
「うん。」
その返事に凛々子の表情は晴れる。
「お兄ちゃん、普通の人と違う感じがする。優しくって、安心して、…凄く落ち着く感じ。」
「そう?ありがとう。」
「えへへ!」
凛々子が無邪気に笑うと、翔太郎は言った。
「凛々子ちゃん。」
「なに?お兄ちゃん。」
「…僕の身体を、少しの時間だけ貸すよ。れなちゃんとお話したいんだよね。」
「そんな事できるの?」
「うん、できるよ。」
翔太郎な真摯な様子に、凛々子は目を丸くする。そして笑顔を浮かべた。
「ありがとう!」
すると心象世界が白に包まれ、視界が真っ白になる。翔太郎はそれを見送りながら、軽く目を閉じた…。
心象世界の外。
翔太郎は歪に飛び込んだ訳だが、歪はその途中でどうやらタワー内に侵入していたようで飛び込んだ翔太郎もタワー内で倒れていた。歪は解かれると、漆黒の鳥型妖だけが分離して空へ飛んでいく。ポチはそれを見ると首を傾げた。
〔霊が出てこないな。〕
すると翔太郎は起き上がった。韻はそれに気づいて翔太郎に駆け寄る。
「兄貴、大丈夫か?」
「れな!」
翔太郎…もとい身体に憑依した凛々子はそう言って、女子高生に駆け寄った。女子高生は顔を上げると、翔太郎が近づいて来るのに驚いている。凛々子は続けた。
「凛々子、もうれなの事怒ってないよ!」
その言葉を聞いた途端、れなは目を丸くして呆然とした。韻は「れなって誰?」と言いたげな顔をしていた。凛々子は続いて言う。
「いつも見てた。れなが私の代わりにタワーに来てくれてるの。私のポーチと写真を持って、ここに来てるの。」
突然見知らぬ男性に話しかけられ呆然としていたれなだったが、話を聞くにつれ顔色を変えた。それはもう、遠い昔に別れた友と再会する様に感動を顕にした表情。
「凛々子…?本当に凛々子なの…?」
その問いに凛々子は強く頷いた。するとれなは目に涙を溜め、ポタポタと流しながら言う。
「ごめん凛々子…!私、凛々子をあの時……!怖くなって…逃げちゃった…」
その言葉の意味に気づき驚きを隠せないポチだったが、韻は話を全くわかっていない顔。凛々子は首を横に振る。
「私も、れなの傷つくこと沢山言っちゃったもん…こちらこそごめん。」
「言わないで凛々子…!私は、凛々子の人生を台無しにしたのよ…!犯人を探し続ける凛々子の両親にも言い出せず…十年も…!」
れなの罪悪感を感じ取ったのか、凛々子は口を噤んだ。
「…黙ってても、いいよ?」
やっと発した凛々子の言葉にれなが反応すると、凛々子は笑みを浮かべた。
「れなが苦しいなら、言わなくていい。」
凛々子はれなを一番に考えている様だった。れなは言葉に出来ないのか、小さな唸り声を上げている。そして凛々子を抱きしめると、れなは言った。
「私…凛々子の分も生きていていい…?」
「うん。」
「次もまた、ここに来てもいい…?」
「うん。」
「また会える?」
その質問に黙り込んでしまう凛々子。するとれなは、目を閉じて深く理解している様子を見せた。そしてれなは凛々子から離れると、涙混じりの笑顔を見せて言う。
「ありがとう…凛々子…!私…凛々子の事いつまでも、親友だと思ってるから…!」
そう言われた凛々子は、呆然として頬を赤らめた。凛々子は満天の笑みを見せ、れなに言う。
「私も!れなは親友だと思ってるよ!」
そう言った凛々子の身体、もとい翔太郎の身体から光が伸びる。伸びて出てきた形は、凛々子の霊魂。凛々子の霊魂は淡い光を放ち、成仏するようだった。凛々子の霊魂が翔太郎から完全に離れ、成仏して光が散った時…
翔太郎はバタリと気を失ってしまった。それを見て、れなは驚く。
「凛々子!?」
一部始終を見ていた韻は、ポチからの耳打ちでれなに言った。
「成仏したぜ、凛々子なら。」
そう言われると、れなは呆然と黙り込む。しかしやがて、翔太郎を仰向けで寝かせてあげた。そしてれなは韻に言った。
「両親に謝って…警察にも出頭しようと思います。」
「え?」
話を理解できていない韻は目を丸くしていたが、れなは笑みを浮かべたまま立ち上がった。
「凛々子の分を生きる為に、罪を償わないと。」
そう言って、れなは一同に頭を下げてからその場を立ち去った。韻は話の流れが一切わからない為か、始終目を点にしながら瞬きをしていた。
その日の夕方。
翔太郎達は帰り道をあるいていた。韻は言う。
「兄貴の力、すげぇな。本当に歪から妖が出てきた。…幽霊は見えなかったけど。」
褒められたのにも関わらず、翔太郎は落ち込んでいた。
「気分転換のつもりが、まさか力を消費する事になるなんて…。」
「ま、いんじゃね。収穫もあったし。力なんて休めば元に戻るしなー。」
「そうだね…」
そう言って翔太郎は俯いた。するとポチは言った。
〔にしても驚いたね。十年前に少女を殺した犯人が、まさか同級生の少女だったとはね。〕
「そうだね…。罪を背負ってきたれなちゃんも、言いたい事を伝えられなかった凛々子ちゃんも、お互い苦しい十年間だったろう…。」
「まさか兄貴が幽霊に憑依されるとは思わなかったぜ。」
韻の言葉に翔太郎は苦笑。ポチは続いて言う。
〔ま、この後はゆっくりしようよ。〕
「そうだね。僕も疲れて、今夜は良く眠れそう…。」
そう言って欠伸をする翔太郎。今日すべき事は全て成した様な空気感の中、韻は途端に真剣な表情になった。翔太郎はそれに気づくと、韻は言う。
「俺、今から要に龍の事を伝えに行く。流石に一週間以内に要の兄貴を見つけるなんて、要の協力がないと無理だぜ。」
韻にそう言われると、翔太郎も同じ考えなのか頷いた。
「確かにこのままにはしておけない。韻、お願いできる?」
「おう!」
韻は返事をすると、そそくさと立ち去っていく。それを見送りながら翔太郎は、隣に浮かぶレフに語りかけた。
「にしても不思議ですよね。ユリアさんはなぜ、僕達に団体の情報や龍の情報を渡したんでしょうか?」
「確かに不思議です。言わない方が有利なはずなのに…敢えて言う必要でもあったのでしょうか?」
レフも考え込んでしまうと、翔太郎は不安そうに夕日の空を見上げる。空は不気味なほど真っ赤で、いつもなら綺麗と思う景色でも不安を募らせた。
「歪の心象世界…か。」
すると正面に、外階段と外を隔てる塀の上に座って景色を眺める少女がいた。翔太郎は焦って、少女に駆け寄って言う。
「君、落ちるから危ないよ!」
その声に気づいて少女は振り返ってきた。少女の顔を見ると翔太郎は見覚えがあるのか目を丸くする。
その少女は事件の張り紙で見た亡くなった少女だった。翔太郎は呆然としていると、少女は笑顔で言う。
「大丈夫だよお兄ちゃん!私、もう死んでるもん!」
「え…」
(亡くなっているのを理解しているのに…この小さな少女は、現世に留まっているのか…?)
すると少女は塀を降りて、翔太郎の方まで歩いてきた。翔太郎は少女を見つめていると少女は俯き、そして言いにくそうにしつつも話す。
「あのね…、『れな』に言いたいの。凛々子もう、れなの事は怒ってないって。」
「凛々子…!?」
(さっきの女子高生が言っていた名前…!)
翔太郎はそう言って口を思わず塞ぐと、凛々子は続けた。
「れな、いっつもここに来るの。」
凛々子が見上げた先には、翔太郎達が現実で居るタワー。
「私、れなとタワーに行く約束してて。だかられなは、ここに来ると必ずタワーに行くの。
毎年毎年だよ。年に二回くらい、必ず来るの。別に遊んでる訳じゃないよ。その時のれなはね、凄く悲しそうなの。」
翔太郎は凛々子の言葉を聞いた途端、胸に手を当てた。
(亡くなって十年間…。ずっと、お友達がここを訪れるのを見守っていたのか…。子供なのにどこか大人びているのは…その十年があるからか…。)
すると凛々子はやっと年相応に、目に涙を浮かべた。凛々子は翔太郎の前で、手で涙を拭いながら泣く。
「私っ…れなとお話したくって…!『お話できる』って言われて、女の人についてっちゃったのっ…」
(ユリアさんの事かな…。)
「でもこのままじゃ、私がれなを傷つけちゃうよ…!!ヤだよ、ヤだよぉ~…!」
泣く凛々子の頭を、翔太郎は優しく撫でた。凛々子は翔太郎を見上げると、翔太郎は凛々子の目線までしゃがんで優しく笑む。
「そうか…。凛々子ちゃんは、れなちゃんとお話したかっただけなんだね。」
「うん…」
「わかった。僕がどうにかする。」
「ほんと…?」
凛々子の表情が変わると、翔太郎は安心できるように笑みを浮かべて強く頷いた。
「うん。」
その返事に凛々子の表情は晴れる。
「お兄ちゃん、普通の人と違う感じがする。優しくって、安心して、…凄く落ち着く感じ。」
「そう?ありがとう。」
「えへへ!」
凛々子が無邪気に笑うと、翔太郎は言った。
「凛々子ちゃん。」
「なに?お兄ちゃん。」
「…僕の身体を、少しの時間だけ貸すよ。れなちゃんとお話したいんだよね。」
「そんな事できるの?」
「うん、できるよ。」
翔太郎な真摯な様子に、凛々子は目を丸くする。そして笑顔を浮かべた。
「ありがとう!」
すると心象世界が白に包まれ、視界が真っ白になる。翔太郎はそれを見送りながら、軽く目を閉じた…。
心象世界の外。
翔太郎は歪に飛び込んだ訳だが、歪はその途中でどうやらタワー内に侵入していたようで飛び込んだ翔太郎もタワー内で倒れていた。歪は解かれると、漆黒の鳥型妖だけが分離して空へ飛んでいく。ポチはそれを見ると首を傾げた。
〔霊が出てこないな。〕
すると翔太郎は起き上がった。韻はそれに気づいて翔太郎に駆け寄る。
「兄貴、大丈夫か?」
「れな!」
翔太郎…もとい身体に憑依した凛々子はそう言って、女子高生に駆け寄った。女子高生は顔を上げると、翔太郎が近づいて来るのに驚いている。凛々子は続けた。
「凛々子、もうれなの事怒ってないよ!」
その言葉を聞いた途端、れなは目を丸くして呆然とした。韻は「れなって誰?」と言いたげな顔をしていた。凛々子は続いて言う。
「いつも見てた。れなが私の代わりにタワーに来てくれてるの。私のポーチと写真を持って、ここに来てるの。」
突然見知らぬ男性に話しかけられ呆然としていたれなだったが、話を聞くにつれ顔色を変えた。それはもう、遠い昔に別れた友と再会する様に感動を顕にした表情。
「凛々子…?本当に凛々子なの…?」
その問いに凛々子は強く頷いた。するとれなは目に涙を溜め、ポタポタと流しながら言う。
「ごめん凛々子…!私、凛々子をあの時……!怖くなって…逃げちゃった…」
その言葉の意味に気づき驚きを隠せないポチだったが、韻は話を全くわかっていない顔。凛々子は首を横に振る。
「私も、れなの傷つくこと沢山言っちゃったもん…こちらこそごめん。」
「言わないで凛々子…!私は、凛々子の人生を台無しにしたのよ…!犯人を探し続ける凛々子の両親にも言い出せず…十年も…!」
れなの罪悪感を感じ取ったのか、凛々子は口を噤んだ。
「…黙ってても、いいよ?」
やっと発した凛々子の言葉にれなが反応すると、凛々子は笑みを浮かべた。
「れなが苦しいなら、言わなくていい。」
凛々子はれなを一番に考えている様だった。れなは言葉に出来ないのか、小さな唸り声を上げている。そして凛々子を抱きしめると、れなは言った。
「私…凛々子の分も生きていていい…?」
「うん。」
「次もまた、ここに来てもいい…?」
「うん。」
「また会える?」
その質問に黙り込んでしまう凛々子。するとれなは、目を閉じて深く理解している様子を見せた。そしてれなは凛々子から離れると、涙混じりの笑顔を見せて言う。
「ありがとう…凛々子…!私…凛々子の事いつまでも、親友だと思ってるから…!」
そう言われた凛々子は、呆然として頬を赤らめた。凛々子は満天の笑みを見せ、れなに言う。
「私も!れなは親友だと思ってるよ!」
そう言った凛々子の身体、もとい翔太郎の身体から光が伸びる。伸びて出てきた形は、凛々子の霊魂。凛々子の霊魂は淡い光を放ち、成仏するようだった。凛々子の霊魂が翔太郎から完全に離れ、成仏して光が散った時…
翔太郎はバタリと気を失ってしまった。それを見て、れなは驚く。
「凛々子!?」
一部始終を見ていた韻は、ポチからの耳打ちでれなに言った。
「成仏したぜ、凛々子なら。」
そう言われると、れなは呆然と黙り込む。しかしやがて、翔太郎を仰向けで寝かせてあげた。そしてれなは韻に言った。
「両親に謝って…警察にも出頭しようと思います。」
「え?」
話を理解できていない韻は目を丸くしていたが、れなは笑みを浮かべたまま立ち上がった。
「凛々子の分を生きる為に、罪を償わないと。」
そう言って、れなは一同に頭を下げてからその場を立ち去った。韻は話の流れが一切わからない為か、始終目を点にしながら瞬きをしていた。
その日の夕方。
翔太郎達は帰り道をあるいていた。韻は言う。
「兄貴の力、すげぇな。本当に歪から妖が出てきた。…幽霊は見えなかったけど。」
褒められたのにも関わらず、翔太郎は落ち込んでいた。
「気分転換のつもりが、まさか力を消費する事になるなんて…。」
「ま、いんじゃね。収穫もあったし。力なんて休めば元に戻るしなー。」
「そうだね…」
そう言って翔太郎は俯いた。するとポチは言った。
〔にしても驚いたね。十年前に少女を殺した犯人が、まさか同級生の少女だったとはね。〕
「そうだね…。罪を背負ってきたれなちゃんも、言いたい事を伝えられなかった凛々子ちゃんも、お互い苦しい十年間だったろう…。」
「まさか兄貴が幽霊に憑依されるとは思わなかったぜ。」
韻の言葉に翔太郎は苦笑。ポチは続いて言う。
〔ま、この後はゆっくりしようよ。〕
「そうだね。僕も疲れて、今夜は良く眠れそう…。」
そう言って欠伸をする翔太郎。今日すべき事は全て成した様な空気感の中、韻は途端に真剣な表情になった。翔太郎はそれに気づくと、韻は言う。
「俺、今から要に龍の事を伝えに行く。流石に一週間以内に要の兄貴を見つけるなんて、要の協力がないと無理だぜ。」
韻にそう言われると、翔太郎も同じ考えなのか頷いた。
「確かにこのままにはしておけない。韻、お願いできる?」
「おう!」
韻は返事をすると、そそくさと立ち去っていく。それを見送りながら翔太郎は、隣に浮かぶレフに語りかけた。
「にしても不思議ですよね。ユリアさんはなぜ、僕達に団体の情報や龍の情報を渡したんでしょうか?」
「確かに不思議です。言わない方が有利なはずなのに…敢えて言う必要でもあったのでしょうか?」
レフも考え込んでしまうと、翔太郎は不安そうに夕日の空を見上げる。空は不気味なほど真っ赤で、いつもなら綺麗と思う景色でも不安を募らせた。
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