屍人の陰陽師

うてな

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ヨミ編

066 潜入、高校生

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そして、韻の通う高校にて。
要の兄は廊下を歩きながら、教室を目指していた。肩の上にいるポチは、棒声で話している。

〔二階へ行って…手前から四番目の教室。あ、正面にいるシルバーのインナーカラーは韻の親友で、【神楽見 銀弥(カグラミ ギンヤ)】。銀弥って韻は呼んでる。〕

「おはよ!銀弥!」

要の兄は、完璧な演技で銀弥に挨拶した。銀弥は笑顔で答える。

「おはよ韻!なあなあ昨日の『コクロヲチチャンネル』見たか?」

勿論そんなチャンネルは知らないので、要の兄は両手を合わせて申し訳なさそうな表情をした。

「ごめん!昨日は疲れて寝ててさー!」

そう言われると銀弥は口を尖らせる。

「なんだよ語れねーじゃん!」





そう二人は話していたが、数分後。要の兄はトイレの個室にいた。
そしてなぜか要の兄はトイレ掃除をしている。要の兄は不機嫌そうな顔をしていた。

「韻の周りの連中は変な奴ばかりだな。」

しかし空かさずポチは言う。

〔急にトイレ掃除を始めちゃう、君も大概だけどね。〕

「汚れが気になって仕方ないのだ。」

そう言って要の兄は掃除を終えてトイレの水を流すと、呆れた様子になる。

「それに『コクローチチャンネル』って…韻の友人のレベルも知れる。開設者はゴ○ブリオタクか?それともゴ○ブリみたいな人間が出演しているのか?どちらにせよ、もっとマシな名があったろう。」

〔『コクロヲチ』だよ、伸ばしちゃ駄目。〕

「一緒だ。」

〔それにゴ○ブリじゃなくて『告ろう』って意味らしいから。〕

「だからもっとマシな名があっただろう。」

要の兄は、再び同じ言葉を強調して言った。ポチはそれに鼻で笑い、要の兄はとりあえず手を洗ってからトイレから出る。そして廊下を歩いていると、マイと偶然にも会ったので、ポチは言う。

〔ああ、彼女だよ。韻が訪ねた家の、名前は尾崎まい。〕

「おはよう、尾崎まい!」

韻がそう言うと、マイは要の兄を見て驚いた表情を見せた。そして青ざめた様子になると、その場から離れる。

「ちょ!待てよ!」

要の兄はそう言って追いかけると、周りの生徒達は口々に言う。

「なんかいつもなら不器用に挨拶してんのに、今日の韻は積極的だな。」

「逃げられてんな…遂に振られたか?」

要の兄はそれらを無視し、あっという間にマイに追いついた。マイが恐怖の表情を浮かべていたので、要の兄はそのまま近くの教室にマイを押し込んだ。場所は化学室らしく、今は電気も点灯されていない無人の教室。足音が響く教室で、マイは黒板に背をつけて要の兄を恐れた。

「あなたは…神木間くんじゃないわね…!」

「わかるのか。」

要の兄が言うと、マイは肩を驚かせる。

「だ、だってあなたは…神木間くんと違って強い霊力を持っているから…。で、でも肩にいる妖は…神木間くんの妖みたいだし…。」

マイの戸惑った様子に要の兄は黙り込むと、マイに近づく。そしてあと一歩で密着という距離で、要の兄は品定めでもするかのようにマイを見つめて言った。

「お前から強い霊力を感じる。だが、霊能者ほどではない…精々幽霊が見える程度だ。…人間の癖に、妖も見えるらしいな。」

「ど、どうしてそんな事がわかるの…!?」

マイがそう聞くが、要の兄は冷ややかに言う。

「質問は受け付けていないぞ、私の問にだけ答えろ。昨日、韻がお前の家に向かった事は知っているだろう。」

「え…ええ。でも、目が覚めた時には家にいなくて…。」

その言葉に要の兄は眉を潜め、ポチも反応を見せた。

「目が覚めた時?」

「どうやら私、疲れて途中で眠ってしまったみたいで…。その後は神木間くん、お父さんと話してたらしいの。」

要の兄は意外な展開と感じたのか、目を丸くした。

「ほう。…実は昨晩、韻が帰ってきたのだが様子が変だった。」

「…え…?」

「韻の持っていた妖力は消え、知らない霊力が韻の身体を蝕んでいる。もしかすると、韻の命はあと数日やもしれん。」

要の兄の言葉に、マイは蒼白した。マイは手で開いた口を覆うと、青ざめた様子で言う。

「嘘…」

純粋にショックを受けた様子のマイを見ても、要の兄は警戒を解かない。マイが何かを隠しているのを見抜いており、圧の強い言葉で詰める。

「嘘だと思うのなら無視しても構わない。…少しでも本当だと思うのなら、心当たりを話せ。」

要の兄にそう言われると、マイは覆っていた手を軽く握って言えそうで言えない言葉を喉で突っ返させた。それから心に決めた様に手を下ろすと、マイは真剣な様子で話す。

「…私のお父さん、よく私と親しい友達と遊ぶ約束をするの。でも、お父さんと遊んだ友達は必ず…行方不明になって…時には遺体で発見された子もいて…」

「なのに韻を家に?」

「神木間くんは強いし、そんな事にならないって思って…。家なら私もいるし、もしもの事が起こっても守れるって思ったの…。でも実際、途中で眠っちゃったし…。」

〔ちなみに他のお友達はどうやって亡くなったの?〕

ポチが質問すると、マイは青ざめてしまう。そして恐怖の表情を浮かべて言いづらそうにしていたが、口を開いた。

「破裂していたんですって…。まるで、体内に爆弾でも仕込んだかのように…。」

マイはそう言って涙を流した。要の兄はそれらを聞いて、ある結論にたどり着いたのか言う。

「お前は、自分の父親が怪しい…と踏んでいるんだな?」

その言葉に、マイは泣きながらも静かに頷いた。要の兄はその様子に偽りはないと感じたのか言う。

「…望むなら、韻の家へ来てもいい。お見舞いくらいは許す。」

「…え…」

マイは涙を止めて顔を上げると、要の兄はもう一言加えた。

「お前の父親の名を教えろ。」

「…【奈江島(ナエジマ) 美輝】…。」

その名を聞いた途端、要の兄は目を剥く。ポチは驚いた様子で言った。

〔奈江島って…!〕

「まさか、知り合い…?」

マイが聞くと、要の兄は急に笑みを浮かべて言う。

「いいや、お前の父とは他人だ。だが…お前の祖父とは切っても切れない縁でな。昨晩の翔太郎と正晃との会話でまさかと思っていたが…ここまで来たら確定だな。仕方ない、ちょっと会いに行ってやるか。」

どうやら要の兄とポチは、美輝の父を知っている様子だった。ポチは焦りを覚えた様子で言う。

〔ちょ、ちょっと…!翔太郎さんと正晃さんの会話って何?初耳なんだけど。〕

「後で話してやるから待っていろ。今はそんな事を話している場合じゃないからな。」

〔…確かに、韻の回復が最優先だ。〕

ポチがそう言うと、要の兄は時計に視線をやった。

「いいや、ホームルームが始まる。」

〔は…?〕

ポチはポカンとすると、マイも目を丸くする。要の兄は教室の扉を開くと、廊下に出ながら言った。

「学業を疎かにできない。…学生の本分はしっかり全うしないとな。」
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