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ヨミ編
068 黄泉の家に、意外な人物
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歩くこと二十分ほど、立ち並ぶ住宅街に突入した。
ここは翔太郎の家がある方の住宅街でなく、建物の外見を見る限り富裕層の多い住宅地のようだ。ポチは辺りを見ながら言う。
〔お金持ちの家ばかりだね、ゲーテッドコミュニティみたい。君は本当に彼が黄泉だと思っているの?〕
「わからないから聞きに行くのだろう。」
〔と言うより、手持ちの情報でどう彼が黄泉って結論になったの?〕
「適当だ。」
要の兄の言葉に、ポチは非常に頭を痛めた様子になる。
〔それ、君の口癖だよね。説明を省きたい時とか、よく使うイメージ。〕
「説明した所で理解される気がしないからな。」
そう言って到着したのは、一軒家。
家は周囲と比べて質素ながら、外観の綺麗さや植木が整っている事で他の豪華な建造物にも劣らない存在感がある。表札には『奈江島』とある。要の兄は早速インターホンを押すと、ポチは驚いた。
〔ちょっと。黄泉がいるかもしれない家に、いきなりインターホン押す?〕
「私と奴の仲だからな。」
一切の警戒心の無さに、思わずポチは呆れる。
〔楽観的だな…全く。〕
するとインターホンで出ること無く、扉が開いた。二人は扉の先を見ると、そこには見知った人がいる。
ケンが家から出てきたのだ。ポチは驚いた様子で言う。
〔翔太郎さんのサークルメンバーの…!?〕
ケンは要の兄とポチを見ると驚いた様子を見せた。
(部長の弟さんに妖さん…! あれ…?)
半妖のケンは、すぐに異変に気づく。鼻をよく利かすと、要の兄を見て警戒した。
「…あなた、翔太郎さんの弟さんではないですね。」
「ほう、今日は正体がバレすぎて困るな。」
そう言って要の兄は家の敷地内に勝手に入り、ケンの前まで来た。ケンは警戒した様子のままでいると、要の兄は言う。
「お前、名前は?」
「…奈江島ケンです。」
「ほう、じゃあ聞くぞ。【奈江島 綺瑠(キル)】とお前はどんな関係だ?」
要の兄がそう言うと、ケンは真面目な顔をした。
「親子です。…俺は養子ですが、それでもあの人は俺の父上です。」
「アイツはまた化物を拾っているのか。」
その言葉にケンが反応すると、恐る恐るケンは聞く。
「…あの、あなたは?匂いは妖の類みたいですが。父とどんな関係なんですか?」
「私が幼き頃、人に馴染めなかった私を、数年間育ててくれた。お前の父は私の恩人と言うべきか、はたまた私の父と言うべきか…。」
それを聞いた途端、ケンは様子を変えて目を輝かせた。そして要の兄に前のめりになって言う。
「つ、つまり!父上に育てられた者同士って訳ですね!お兄様とお呼びしてもよろしいでしょうか!?」
「やめろ。」
要の兄が即答すると、ケンは露骨にしゅんとなる。落ち込んだケンに慰めの言葉などかけず、本題に入る要の兄。
「綺瑠はどこだ。」
「父上なら、もう数ヶ月いません。行方不明なんです。」
「なんだと?」
「警察にも届け出て、俺も探しているんですが見つからないんです。凄く心配で…でも父上は元気でパワフルですから、生きていると思うんです!」
「ああ、生きているだろうな。」
要の兄はそう言うと、ケンに背を向ける。そして立ち去ろうとするので、ケンは思わず呼び止めた。
「待ってください!もう帰られるんですか?父上の話を聞きたいと言いますか…」
ケンは緊張した様子でそう言うが、要の兄はクールにも言う。
「今は時間がないんだ。…また今度な。」
要の兄の並々ならぬ雰囲気に、ケンは黙ってそれを見送る事しかできなかった。二人は住宅街を再び歩くと、ポチは言う。
〔収穫なしか。どうしたら韻を救えるんだろう…。〕
「蚕女と話していて、一つ案を思いついた。力を抜けぬのなら奪える奴を連れてこればいい。」
〔例えば?〕
「あの『マリモ頭』とかな。」
マリモ頭、その言葉にポチの脳裏に星夜が浮かんだ。
〔ああ、琴爪星夜ね。確かに彼の能力なら…。〕
「連絡を入れたいが…マリモの番号がないな。」
〔翔太郎さんなら知ってるよ。〕
「そうか、なら翔太郎に一報入れるか。マリモの力でどうにかなると思うが…。」
こうして二人は、一度家へ帰る事になった。そして一緒に連れられている蚕は、為す術もなく連れて行かれるがままだった。
場面は、街中で放置されている歪の方へ。
歪は放置されたまま、黄泉側にも見捨てられて孤独だった。周囲にあつまる野次馬だけが、歪(氷の塊)を見ていた。
そこへ、要の兄からの連絡でやってきた翔太郎。翔太郎は氷漬けにされている歪を見上げると、仰天してしまう。
(ちょ…!韻の姿でこんな事したの!?…いやいや、早く解かないと…。)
そう思いつつも、翔太郎は近くまで来た。しかし歪から漂う冷気は、半径五メートルにいても肌を刺すほど感じる。
(しかもこんなに凍っていて、どうやって歪に触れて心象世界へ入ればいいの…!?要くんのお兄さん…!)
翔太郎は今の状態だと歪を解く事が出来ず、半泣きの状態であった。
ここは翔太郎の家がある方の住宅街でなく、建物の外見を見る限り富裕層の多い住宅地のようだ。ポチは辺りを見ながら言う。
〔お金持ちの家ばかりだね、ゲーテッドコミュニティみたい。君は本当に彼が黄泉だと思っているの?〕
「わからないから聞きに行くのだろう。」
〔と言うより、手持ちの情報でどう彼が黄泉って結論になったの?〕
「適当だ。」
要の兄の言葉に、ポチは非常に頭を痛めた様子になる。
〔それ、君の口癖だよね。説明を省きたい時とか、よく使うイメージ。〕
「説明した所で理解される気がしないからな。」
そう言って到着したのは、一軒家。
家は周囲と比べて質素ながら、外観の綺麗さや植木が整っている事で他の豪華な建造物にも劣らない存在感がある。表札には『奈江島』とある。要の兄は早速インターホンを押すと、ポチは驚いた。
〔ちょっと。黄泉がいるかもしれない家に、いきなりインターホン押す?〕
「私と奴の仲だからな。」
一切の警戒心の無さに、思わずポチは呆れる。
〔楽観的だな…全く。〕
するとインターホンで出ること無く、扉が開いた。二人は扉の先を見ると、そこには見知った人がいる。
ケンが家から出てきたのだ。ポチは驚いた様子で言う。
〔翔太郎さんのサークルメンバーの…!?〕
ケンは要の兄とポチを見ると驚いた様子を見せた。
(部長の弟さんに妖さん…! あれ…?)
半妖のケンは、すぐに異変に気づく。鼻をよく利かすと、要の兄を見て警戒した。
「…あなた、翔太郎さんの弟さんではないですね。」
「ほう、今日は正体がバレすぎて困るな。」
そう言って要の兄は家の敷地内に勝手に入り、ケンの前まで来た。ケンは警戒した様子のままでいると、要の兄は言う。
「お前、名前は?」
「…奈江島ケンです。」
「ほう、じゃあ聞くぞ。【奈江島 綺瑠(キル)】とお前はどんな関係だ?」
要の兄がそう言うと、ケンは真面目な顔をした。
「親子です。…俺は養子ですが、それでもあの人は俺の父上です。」
「アイツはまた化物を拾っているのか。」
その言葉にケンが反応すると、恐る恐るケンは聞く。
「…あの、あなたは?匂いは妖の類みたいですが。父とどんな関係なんですか?」
「私が幼き頃、人に馴染めなかった私を、数年間育ててくれた。お前の父は私の恩人と言うべきか、はたまた私の父と言うべきか…。」
それを聞いた途端、ケンは様子を変えて目を輝かせた。そして要の兄に前のめりになって言う。
「つ、つまり!父上に育てられた者同士って訳ですね!お兄様とお呼びしてもよろしいでしょうか!?」
「やめろ。」
要の兄が即答すると、ケンは露骨にしゅんとなる。落ち込んだケンに慰めの言葉などかけず、本題に入る要の兄。
「綺瑠はどこだ。」
「父上なら、もう数ヶ月いません。行方不明なんです。」
「なんだと?」
「警察にも届け出て、俺も探しているんですが見つからないんです。凄く心配で…でも父上は元気でパワフルですから、生きていると思うんです!」
「ああ、生きているだろうな。」
要の兄はそう言うと、ケンに背を向ける。そして立ち去ろうとするので、ケンは思わず呼び止めた。
「待ってください!もう帰られるんですか?父上の話を聞きたいと言いますか…」
ケンは緊張した様子でそう言うが、要の兄はクールにも言う。
「今は時間がないんだ。…また今度な。」
要の兄の並々ならぬ雰囲気に、ケンは黙ってそれを見送る事しかできなかった。二人は住宅街を再び歩くと、ポチは言う。
〔収穫なしか。どうしたら韻を救えるんだろう…。〕
「蚕女と話していて、一つ案を思いついた。力を抜けぬのなら奪える奴を連れてこればいい。」
〔例えば?〕
「あの『マリモ頭』とかな。」
マリモ頭、その言葉にポチの脳裏に星夜が浮かんだ。
〔ああ、琴爪星夜ね。確かに彼の能力なら…。〕
「連絡を入れたいが…マリモの番号がないな。」
〔翔太郎さんなら知ってるよ。〕
「そうか、なら翔太郎に一報入れるか。マリモの力でどうにかなると思うが…。」
こうして二人は、一度家へ帰る事になった。そして一緒に連れられている蚕は、為す術もなく連れて行かれるがままだった。
場面は、街中で放置されている歪の方へ。
歪は放置されたまま、黄泉側にも見捨てられて孤独だった。周囲にあつまる野次馬だけが、歪(氷の塊)を見ていた。
そこへ、要の兄からの連絡でやってきた翔太郎。翔太郎は氷漬けにされている歪を見上げると、仰天してしまう。
(ちょ…!韻の姿でこんな事したの!?…いやいや、早く解かないと…。)
そう思いつつも、翔太郎は近くまで来た。しかし歪から漂う冷気は、半径五メートルにいても肌を刺すほど感じる。
(しかもこんなに凍っていて、どうやって歪に触れて心象世界へ入ればいいの…!?要くんのお兄さん…!)
翔太郎は今の状態だと歪を解く事が出来ず、半泣きの状態であった。
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