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1章 序奏前奏
第10音 相関関係
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【相関関係】そうかんかんけい
二つのものが密接にかかわり合い、
一方が変化すれば他方も変化するような関係。
==============
ルネアはその次の日、ラムに連れられてある一室にお邪魔する。
その部屋は孤児の子供達が十人も満たないほどいて、学習机に座っていた。
学習机の正面には、黒板がありリートの姿もある。
緊張した、または生真面目な雰囲気ではなく、ふわふわとした空間が広がっていた。
「ここが学習室。児童園の子供達が勉強する場所。いつもリートが子供達に教えてるんだ。」
「すっご~い!未来のサグズィと違って、緩い感じなんですね!」
ルネアは目を輝かせて言うと、リートはルネアに気づいて笑顔で手を振ってくれる。
「おはようルネア。今、魔法について教えているのよ。ルネアも一緒に。」
「え?」
ルネアはポカンとすると、ラムは言った。
「お前も一応魔法力があるんだから習っとけ。ほら早く!」
ラムはそう言って部屋にルネアを押し入れると、リートは笑顔で言う。
「ラムがね、『護身の為にルネアに魔法を教えてやって欲しい』って言ってたのよ。」
するとラムは顔を赤くして言った。
「馬鹿っ…!それ言うなよ!」
「いいじゃない。ラムは素直な方が素敵よ。」
ラムは顔を赤くしたままそっぽ向くと、ルネアも笑顔で答える。
「ありがとう、ラム!僕沢山勉強します!」
「お、おう。頑張れよ。」
ルネアは近くの椅子に座ると、リートは一枚のプリントをルネアに渡した。
そのプリントには魔法の種類について書かれており、ルネアは初めて見る名前に感心する。
リートは言った。
「でもね、今の時代は魔法を教える事は罪に問われるの。
私が子供達に教えているのは、人前で魔法が暴走しないように教えてるのだけど
ルネアは特別に使い方も教えちゃうね。」
「ありがとうございます!」
ルネアが元気よく返事すると、子供の一人がルネアに話しかけてきた。
「ねえルネア!ルネアは何の魔法を使えるの?」
ルネアは首を傾げてしまうと、リートは教える。
「魔法は三つの区分に分けられており、【攻撃魔法】・【防御魔法】・【特殊魔法】があります。
魔法力を持つ者の殆どが、どれか一つの能力を扱う素質を持っています。
たまに魔法力が強い人だと、別の魔法も扱う事ができます。
ルネアは特殊魔法かなぁ…。」
ルネアは目を輝かせると、少年は言った。
「俺は攻撃魔法!リートは攻撃魔法と特殊魔法が使えるんだぜ!?でもってー、ラムは全部使えるんだ!」
「え!?ラム流石~!」
ルネアは褒めると、ラムは呟く。
「ま、魔法を使っちゃいけないから使う機会もないんだけどな。」
リートは解説の為、更に言った。
「その三つの魔法もね、それぞれもっと細かく分類があるの。
正確的にはその細かく分類された能力の適性を探って、実際に魔法を使ってみて、自分の魔法に慣れてもらう。
そうして魔法暴走の抑え方を学ばせるの。」
ルネアは手にメモをする様にして聞いていると、リートは言う。
「言葉だけじゃつまらないわよね。実践してみましょう。」
すると、子供達は席をバラバラと立つので、ルネアも便乗。
ラムは教室の扉に手をかけると、一瞬であったが部屋に魔法をかけた。
ルネアはそれを感じ取っていて、ラムの方を見ると目が合う。
「ああ、これから魔法を使うから、周囲に被害が及ばないように防御魔法を張ったんだ。」
「ラムすっご~い!」
ルネアはずっと目が輝いていた。
すると少年が手から炎を出すと、すぐに熱がって火を消してしまう。
それに気づいたリートは少年に駆け寄り、心配してくれた。
「大丈夫?怪我は?」
「大丈夫です…」
涙目になりながら少年が言うと、リートは指の先から水を出した。
水で少年の火傷した指を包み、水は重力で落ちる事無く指に引っ付いていた。
「少し冷やしましょう?ちょっとの間、みんなの練習を見ていようね。」
「はぁい。」
それを見たラムも少年の元に歩いていく。
「大丈夫かー?…このくらいなら数分冷やしてりゃ大丈夫かな。」
「ええ。」
リートは微笑んで言った。
するとラムは部屋の隅にあった大きな箱から数本の棒を取り出し、一部の子供に配った。
「こういう時はしっかり【物念魔法】を使うんだ。
危険な魔法は物に伝えて使用する。これはどの魔法でも基本中の基本だぜ。」
『はーい』
子供達が一斉に返事をすると、ルネアは問う。
「そう言えば、僕って攻撃魔法とか使えるんですかね?」
「俺の魔法力持ってんならできんだろ。」
ラムはそう言うと、ルネアは納得した。
ルネアは授業が終わった後、廊下に出て部屋の中のリートを見ていた。
リートは子供達に囲まれ、人気者といったところ。
ラムは部屋の端で微笑ましくその光景を見つめていた。
(凄い人気者だなぁリートさんは。
パートリーダーってみんなそんなものなのかなぁ。)
「そんなに気になるかい?」
背後から声がする。
ルネアは振り返ると、そこにはまめきち。
「まめきちさん!」
まめきちは部屋のリートを見てから言う。
「リートはみんなからの人気者さ。愛嬌もあれば、心優しい。」
「そうですよねぇ。僕もさっき授業を受けてて、そんな感じしました!」
「魔法の調子はどうだい?」
「え…、全然使えませんでした。」
ルネアは舌を出して笑うと、まめきちも笑った。
そして会話が途切れてしまうので、ルネアは言う。
「あの、パートリーダーの事なんですが、アールさんがダニエルさんに追い抜かれてリーダーを降りるって噂が…」
と言った瞬間、まめきちは即答する。
「あの子は降りさせないよ、安心しなさい。」
「え…?」
ルネアは首を傾げると、まめきちはルネアに振り向いてから言った。
「歌とはね、【心】なんだよ。
歌とは、それぞれ個性があるからこそ花が咲く。
パートリーダーは彼等ではないとダメなんだ。」
「ほう。」
「ノノの声は【希望】を歌う。あの軽快な歌声、闇を知らない太陽の鳥だ。
リートの声は【愛】をくれる。人々を包み込み、愛を分け与え愛を貰う。
シナの声は【喜び】の塊だ。飛び回る様なあの歌声は、自分だけでなく聴く者全てを楽しませる。
テナーの声は【勇気】を固める。脆き一人が果敢に立ち向かう様を、決意に溢れた…そんな声だ。
アールの声は【怒り】。胸の内に秘めた強い思いが解き放たれた時、人々は彼の心に動かされる。
ラムの声は【悲しみ】を誘う。彼女の語りかける歌声は、人々に優しさを思い出させる。
と、友達から言われてね。」
ルネアはズコッと転びそうになると
「友達のからですか~」
と言うのでまめきちは言った。
「児童園の孤児達で合唱団を作って欲しい、とその友達が言い出した事だからね。」
「へ~」
ルネアはパートリーダーの歌声を思い出してみた。
「あの、アールさんが怒りとか言われてましたけど、アールさんってあんまりやる気ない感じに歌ってた気がします。」
まめきちはそれを聞くと、困った顔をする。
それから近くの廊下の窓の外を見て言った。
「いいかルネア。彼等には本来、今言ったような個性が備わっている。
彼等の中には個性を失った者、失いかけている者がいる。
そうなるとその人の持つ歌声は【迷い】に変わってしまう。」
「迷い…ですか。と言うより、怒りとか悲しみとか、マイナスじゃないですか?」
まめきちはそれに笑ってしまうと、頷いた。
「でもね、その感情も大事なのさ。
愛はあっても怒りが無ければ、人を正す事は絶対にできない。
希望はあっても、悲しみが無ければ自分の誤ちに気づけない。
楽しい事ばかりを考えてしまっては、いざって時に決断ができなくなる。
その逆も然り。
勿論これも、友達から言われた事なんだけどね。」
するとルネアは目を光らせる。
「相関関係ですね!」
「似てるかもね。だから友達からは、六人で頑張って欲しいと言われたんだ。」
「僕、パートリーダーさん達に興味が沸いてきました!もっと仲良くなってみたい!」
ルネアの様子を見てまめきちは笑う。
「じゃ、私は忙しいのでこれでね。」
「はい!さよなら~!」
ルネアはまめきちの後ろ姿を見守りつつもウキウキしていた。
パートリーダー達の事をまた一つ、勉強できたと思ったからだ。
二つのものが密接にかかわり合い、
一方が変化すれば他方も変化するような関係。
==============
ルネアはその次の日、ラムに連れられてある一室にお邪魔する。
その部屋は孤児の子供達が十人も満たないほどいて、学習机に座っていた。
学習机の正面には、黒板がありリートの姿もある。
緊張した、または生真面目な雰囲気ではなく、ふわふわとした空間が広がっていた。
「ここが学習室。児童園の子供達が勉強する場所。いつもリートが子供達に教えてるんだ。」
「すっご~い!未来のサグズィと違って、緩い感じなんですね!」
ルネアは目を輝かせて言うと、リートはルネアに気づいて笑顔で手を振ってくれる。
「おはようルネア。今、魔法について教えているのよ。ルネアも一緒に。」
「え?」
ルネアはポカンとすると、ラムは言った。
「お前も一応魔法力があるんだから習っとけ。ほら早く!」
ラムはそう言って部屋にルネアを押し入れると、リートは笑顔で言う。
「ラムがね、『護身の為にルネアに魔法を教えてやって欲しい』って言ってたのよ。」
するとラムは顔を赤くして言った。
「馬鹿っ…!それ言うなよ!」
「いいじゃない。ラムは素直な方が素敵よ。」
ラムは顔を赤くしたままそっぽ向くと、ルネアも笑顔で答える。
「ありがとう、ラム!僕沢山勉強します!」
「お、おう。頑張れよ。」
ルネアは近くの椅子に座ると、リートは一枚のプリントをルネアに渡した。
そのプリントには魔法の種類について書かれており、ルネアは初めて見る名前に感心する。
リートは言った。
「でもね、今の時代は魔法を教える事は罪に問われるの。
私が子供達に教えているのは、人前で魔法が暴走しないように教えてるのだけど
ルネアは特別に使い方も教えちゃうね。」
「ありがとうございます!」
ルネアが元気よく返事すると、子供の一人がルネアに話しかけてきた。
「ねえルネア!ルネアは何の魔法を使えるの?」
ルネアは首を傾げてしまうと、リートは教える。
「魔法は三つの区分に分けられており、【攻撃魔法】・【防御魔法】・【特殊魔法】があります。
魔法力を持つ者の殆どが、どれか一つの能力を扱う素質を持っています。
たまに魔法力が強い人だと、別の魔法も扱う事ができます。
ルネアは特殊魔法かなぁ…。」
ルネアは目を輝かせると、少年は言った。
「俺は攻撃魔法!リートは攻撃魔法と特殊魔法が使えるんだぜ!?でもってー、ラムは全部使えるんだ!」
「え!?ラム流石~!」
ルネアは褒めると、ラムは呟く。
「ま、魔法を使っちゃいけないから使う機会もないんだけどな。」
リートは解説の為、更に言った。
「その三つの魔法もね、それぞれもっと細かく分類があるの。
正確的にはその細かく分類された能力の適性を探って、実際に魔法を使ってみて、自分の魔法に慣れてもらう。
そうして魔法暴走の抑え方を学ばせるの。」
ルネアは手にメモをする様にして聞いていると、リートは言う。
「言葉だけじゃつまらないわよね。実践してみましょう。」
すると、子供達は席をバラバラと立つので、ルネアも便乗。
ラムは教室の扉に手をかけると、一瞬であったが部屋に魔法をかけた。
ルネアはそれを感じ取っていて、ラムの方を見ると目が合う。
「ああ、これから魔法を使うから、周囲に被害が及ばないように防御魔法を張ったんだ。」
「ラムすっご~い!」
ルネアはずっと目が輝いていた。
すると少年が手から炎を出すと、すぐに熱がって火を消してしまう。
それに気づいたリートは少年に駆け寄り、心配してくれた。
「大丈夫?怪我は?」
「大丈夫です…」
涙目になりながら少年が言うと、リートは指の先から水を出した。
水で少年の火傷した指を包み、水は重力で落ちる事無く指に引っ付いていた。
「少し冷やしましょう?ちょっとの間、みんなの練習を見ていようね。」
「はぁい。」
それを見たラムも少年の元に歩いていく。
「大丈夫かー?…このくらいなら数分冷やしてりゃ大丈夫かな。」
「ええ。」
リートは微笑んで言った。
するとラムは部屋の隅にあった大きな箱から数本の棒を取り出し、一部の子供に配った。
「こういう時はしっかり【物念魔法】を使うんだ。
危険な魔法は物に伝えて使用する。これはどの魔法でも基本中の基本だぜ。」
『はーい』
子供達が一斉に返事をすると、ルネアは問う。
「そう言えば、僕って攻撃魔法とか使えるんですかね?」
「俺の魔法力持ってんならできんだろ。」
ラムはそう言うと、ルネアは納得した。
ルネアは授業が終わった後、廊下に出て部屋の中のリートを見ていた。
リートは子供達に囲まれ、人気者といったところ。
ラムは部屋の端で微笑ましくその光景を見つめていた。
(凄い人気者だなぁリートさんは。
パートリーダーってみんなそんなものなのかなぁ。)
「そんなに気になるかい?」
背後から声がする。
ルネアは振り返ると、そこにはまめきち。
「まめきちさん!」
まめきちは部屋のリートを見てから言う。
「リートはみんなからの人気者さ。愛嬌もあれば、心優しい。」
「そうですよねぇ。僕もさっき授業を受けてて、そんな感じしました!」
「魔法の調子はどうだい?」
「え…、全然使えませんでした。」
ルネアは舌を出して笑うと、まめきちも笑った。
そして会話が途切れてしまうので、ルネアは言う。
「あの、パートリーダーの事なんですが、アールさんがダニエルさんに追い抜かれてリーダーを降りるって噂が…」
と言った瞬間、まめきちは即答する。
「あの子は降りさせないよ、安心しなさい。」
「え…?」
ルネアは首を傾げると、まめきちはルネアに振り向いてから言った。
「歌とはね、【心】なんだよ。
歌とは、それぞれ個性があるからこそ花が咲く。
パートリーダーは彼等ではないとダメなんだ。」
「ほう。」
「ノノの声は【希望】を歌う。あの軽快な歌声、闇を知らない太陽の鳥だ。
リートの声は【愛】をくれる。人々を包み込み、愛を分け与え愛を貰う。
シナの声は【喜び】の塊だ。飛び回る様なあの歌声は、自分だけでなく聴く者全てを楽しませる。
テナーの声は【勇気】を固める。脆き一人が果敢に立ち向かう様を、決意に溢れた…そんな声だ。
アールの声は【怒り】。胸の内に秘めた強い思いが解き放たれた時、人々は彼の心に動かされる。
ラムの声は【悲しみ】を誘う。彼女の語りかける歌声は、人々に優しさを思い出させる。
と、友達から言われてね。」
ルネアはズコッと転びそうになると
「友達のからですか~」
と言うのでまめきちは言った。
「児童園の孤児達で合唱団を作って欲しい、とその友達が言い出した事だからね。」
「へ~」
ルネアはパートリーダーの歌声を思い出してみた。
「あの、アールさんが怒りとか言われてましたけど、アールさんってあんまりやる気ない感じに歌ってた気がします。」
まめきちはそれを聞くと、困った顔をする。
それから近くの廊下の窓の外を見て言った。
「いいかルネア。彼等には本来、今言ったような個性が備わっている。
彼等の中には個性を失った者、失いかけている者がいる。
そうなるとその人の持つ歌声は【迷い】に変わってしまう。」
「迷い…ですか。と言うより、怒りとか悲しみとか、マイナスじゃないですか?」
まめきちはそれに笑ってしまうと、頷いた。
「でもね、その感情も大事なのさ。
愛はあっても怒りが無ければ、人を正す事は絶対にできない。
希望はあっても、悲しみが無ければ自分の誤ちに気づけない。
楽しい事ばかりを考えてしまっては、いざって時に決断ができなくなる。
その逆も然り。
勿論これも、友達から言われた事なんだけどね。」
するとルネアは目を光らせる。
「相関関係ですね!」
「似てるかもね。だから友達からは、六人で頑張って欲しいと言われたんだ。」
「僕、パートリーダーさん達に興味が沸いてきました!もっと仲良くなってみたい!」
ルネアの様子を見てまめきちは笑う。
「じゃ、私は忙しいのでこれでね。」
「はい!さよなら~!」
ルネアはまめきちの後ろ姿を見守りつつもウキウキしていた。
パートリーダー達の事をまた一つ、勉強できたと思ったからだ。
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