六音一揮

うてな

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2章 接続独唱

第13音 夏虫疑氷

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【夏虫疑氷】かちゅうぎひょう
見聞の狭い者は広い世界を
理解できない例え。

========

青い空が広がる真昼。
今日は珍しく、あの魔物ペルドが昼間から児童園裏にいる。
アールも勿論そこにいて、ペルドはご機嫌だ。

ペルドは一枚の写真を持っている。
写真には男性。
ペルドは男性を見てメロメロになっている様子だった。

「あ~あの方に会いたい~今すぐにでも~!
お~い下僕ぅ~早く【容姿魔法】を持つ子供を見つけて来い~
私はその力で…あの方に相応しい魔物になるの~!」

(魔法に頼ってないで自分磨きをしろ。
その程度でラムの力を狙うなど…。)

アールは無表情ながらも、心は呆れきっていた。
するとペルドはアールを指差して言う。

「おっとお前に朗報だ。
【レイ】が学校を辞めてな、ここに越してくる。
面倒を見ろ、これは命令だぞ!ご主人様の!」

アールは一瞬反応すると、すぐに目を逸らしてしまう。

「左様でございますか…」

アールはそう呟くと、ペルドは言った。

「早く会いたーい!」

とは言い、ペルドが会いたいのは写真の中の男性だろう。

(もっと厄介な人が来てしまう…)

アールは無表情ながらも、心の声は不機嫌だった。

(一人でも面倒なのに二人も来たら…私の睡眠時間が消えてなくなるだろ…ッ)

どうやら自分の睡眠時間を気にしている様子。
それもその筈、ペルドは夜行性で、アールは夜に弱いらしい。
実際、ペルドに呼び出されて睡眠時間が減っている事は確かである。

それでも表情一つ変える事はない。

小さい頃から酷い虐めに耐えてきた為か、本性を露骨に見せないのが彼である。
自制は一丁前で、それでも心が腐り切る事はない。
なぜなら彼は自身のフツフツとした激情をよく理解し、向き合っているからだ。

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

ルネアは外を歩いていると、ノノを発見。
ノノは児童園の孤児では珍しい私服を着ており、何やら網やら袋を背負っている。

「どうしたんですかその荷物。」

ルネアが聞くと、ノノは笑顔。

「おお!丁度いいルネア!お前も来い!」

「へ?」



こうしてノノとルネアは森を歩く。
ルネアはスキップして、ノノの後をついていった。

「ワクワクですね!森の外!初めて~!」

「そうじゃろうと思っての!楽しいぞ外は!」

「いつも外に出かけてるんですか?」

「そうじゃな。パートリーダーの仕事があるからあまり遠くへは行けんの。
でも楽しいからいいのじゃ。」

ノノはそう言って谷のある道を通った。

「谷の下は町があるんじゃ。どこも平和な町、戦争さえなければな。」

ルネアは谷の下を覗いたわけではなかったが、町の先端が見えて目を見開いた。
そして谷の方まで走る。

「ええ…!戦時中とは思えないくらい平和じゃないですか!」

「まあの。しかし戦争は基本場所を問わず行われるのじゃ。
戦争に巻き込まれた町は数多い…。」

ノノはそう言いながら、町に興味も示さず進んでいく。
ルネアはそれを聞いてしょんぼりすると、ノノの後ろを再び歩いた。

「ノノさん、目的地の川はいつ着くんですか?」

「もうすぐじゃ。ほら、あそこ!」

ノノがそう言って指差した先は、綺麗な小川。
ルネアは感動で一足先に川に走ると、川の水に触れた。

「冷たい…。川なんて初めてですよ僕!」

「本当に不自由な生活しておったんじゃな。」

ノノは目を丸くして言うと、ルネアは笑う。

「あ、これから魚を捕まえるんでしたよね?」

「釣るのもいいぞ。」

ノノはそう言って釣竿をルネアにパスした。
ルネアは初めて触る釣竿にも感動をする。

「これ見た事あります!こうやって使うんですよね!」

しかしルネアは体に釣り糸を引っ掛けてしまい、ノノはそれを見て笑った。

「慌てるなルネア。今解いてやるぞ。」

そう言ってノノは糸を解くのではなく、魔法を使う。
指先に炎を灯し、糸を溶かして解いた。

「あ、ノノさん、外では魔法使っちゃダメなんじゃ…!」

ルネアが慌てて言うと、ノノは笑う。

「バレなきゃいいのじゃ、そんなもの。」

ルネアは苦笑すると共に、先程の指に灯った火を思い出す。

(火の鳥…か。)

「ノノさんって、いつから児童園にいるんですか?」

ノノは釣竿を垂らすと、ルネアもそれを真似る。
ノノは考えてから言った。

「確か六つの時じゃな。親に捨てられての、まめきちさんに拾われたんじゃ。」

「えぇ!?」

「そう驚くな。
…なんでじゃろうな。
私のいた惑星では魔法が使える者がいなくての、数百年に一度生まれると言われておったんじゃ。」

「へぇ!それがノノさんなんですね!」

ルネアは笑うと、ノノは頷く。

「しかしその生まれた子供は厄災と呼ばれていて、早い内に火山の炎で焼死させんといけんのじゃ。
それを知らずに六歳まで生きて、親に気づかれて出ていかされたのじゃ。」

「そう…なんですか…。」

ルネアは落ち込んだ様子で言うと、ノノは不穏がかった表情を無理に明るくして見せた。

「今は昔の事じゃ。今は今、しっかり前向きに生きていこうぞ。」

ルネアはそれでも暗い表情をしていると、ノノの釣竿が引っかかる。

「おっ!ルネア引っかかったぞ!これは大物じゃ!」

釣竿が引き、水面がバシャバシャと音を立てるとルネアは思わず立ち上がった。

「おお!凄いですノノさん!」

ルネアは釣竿をその場に置いて、ノノの隣までやってくる。
ノノは魚を釣り上げると、糸を手に持ってルネアに魚を見せた。
大きめの魚で、ルネアが手で抱えても少し重いくらいの魚。

「すっごい…!魚が生きてる…!」

「これは大食いのアールに見せたら大喜びするぞ!」

ノノはそう言って笑った。
ルネアも釣られて笑ってしまう。

「アールさんお昼前につまみ食いに行きますもんね!」

ノノはルネアのいい笑顔を見ると言った。

「いい笑顔じゃ。無愛想なアールもな、小さい頃は笑う子供じゃった。」

「え!?あのアールさんが!?」

ルネアは驚くと、ノノはクスッとする。

「一度だけな、私は見たんじゃ。児童園で誰も見た事がないアールの笑顔をな。」

「いいなぁ~!」

ルネアも羨ましがると、ノノは笑った。

「本当に小さい頃の話じゃ。
児童園は七歳からではないと森から先に立ち入るのを禁じられておってな、私は児童園に来た当初は六歳だから破ったんじゃ。
他の惑星の外を見たくてたまらんかった。」

ルネアはノノの相変わらずさに苦笑してしまうと、ノノは続ける。

「そこに当時三歳のアールがおった。一人でつまらなそうにしてたから連れてったんじゃ。
森を歩いて、沼を見つけて二人で泥だらけになって遊んだんじゃ。
とっても楽しくての、アールは楽しそうに笑っておった。
勿論、帰ったらまめきちさんにこっ酷く説教は食らったがの。」

ノノはそう言ってウィンクをすると、ルネアは温かいのか胸に手を当てて目を閉じた。

「アールさんも人間なんだなぁ~」

「当たり前じゃ。今はクールぶっとるがな。」

二人で会話に花を咲かせていると、次にルネアが放置していた釣竿が動き始める。

「ルネア!釣竿が!」

ノノは早くに気づき、釣竿に駆けつけて手に持つ。
次にルネアが駆けつけ、ノノはルネアに釣竿を渡した。

「獲物がしっかり食いついたのを見計らってから引くのじゃ!」

「はい!」

ルネアは登ってきた太陽の光で反射する川を見つめた。
チカチカして魚が見えにくいが、その瞬間を見定めようと必死。

「ここだぁ!」

ルネアはそう言って引くと、魚は釣り糸から離れてしまった。

「逃げられてしまったの。」

ノノの呟きに、ルネアは悲しそうな顔をしていた。



それから数時間後、ノノとルネアは大量の魚を背負って帰っていた。

「あ~結局三匹しか釣れませんでした。」

「最初だから気にするな。」

ノノはそう言うと、二十匹は超える魚を背負ってせっせと歩き出す。
ルネアは三匹背負い、まだ生きてる一匹の魚に怯えながらも歩き出すのであった。

「次も一緒に来てもいいですか!?」

「いいぞ。」

ルネアはリベンジを決めていた。
ノノは機嫌が良いのか、鼻歌を歌っていた。
その鼻歌を聞くと、ルネアは思う。

(希望に満ち溢れた人って感じ…鼻歌も明るくていいなぁ~)

ルネアはその鼻歌にノってスキップすると、ノノはそれに気づいて歌いだす。
ルネアはノノのソロに感心していると、遠くから大きな爆発音が聞こえた。

二人は驚いて振り返ると、見た先には煙が上がっていた。

「戦争じゃ…。あっちには確か村が…巻き込まれておらんじゃろうか…。」

「嘘…!」

ルネアは走って煙の方に向かうと、ノノも追いかける。

「待て!まさか向かう気か!」

「生きてる人もいます!避難させましょう!」

それを聴いたノノは、真面目な顔を見せるとルネアの腕を掴んで止めた。
ルネアは驚いてノノの顔を見ると、ノノの真面目な表情に黙り込む。

「現場の者を助けたら、敵軍に殺されてしまう。味方軍でもそれ層の罰があるのじゃ。」

「そんな…!」

ルネアは絶望した。

(大昔の国民の命も守れないなんて…)

悔しがるルネアに、ノノは微笑んだ。

「ルネアが未来から来たのは本当じゃったのか。今の時代、戦火に飛び込む馬鹿はお前しかおらんぞ。」

ルネアはしょんぼりするが、ノノは表情を変えない。

「今のお前には何も出来んじゃろう。私も無力じゃ、こうして合唱団と共に平和を歌う事しかできんのじゃ。
今では、東軍の戦勝歌の為にパートリーダー達は一役買われてしまっておる。何も出来ておらん。」

ノノの言葉にルネアは顔を上げると、ノノは更に言った。

「帰ろう。」

ルネアは悔しそうな顔を見せ、その遠くの煙を見つめながら言う。

「はい…」



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