六音一揮

うてな

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2章 接続独唱

第16音 愛多憎生

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【愛多憎生】あいたぞうせい
愛や恩を度を越して受けると、
人から憎しみや妬みを買う事になる事。

=================

(――児童園のとある一室。
テナーはアールによって壁に押された。
テナーは驚くと、アールは壁に手をつけて行く手を阻む。
アールはテナーの顎をクイッと持ち上げて、いつもの無愛想な顔で言った。

「可愛い…」

それに赤面するテナー、アールはテナーとの距離を一気に縮め…――

はっ!ダメダメ!朝から私こんな妄想しちゃ!)

と、さっきまでのくだりはリートの妄想。
坂上の大木の下で、一人趣味を楽しんでいた。

(暇さえあればこんな妄想を…。
うぅん…でもさっきの場面は良かった…
あの後、テノが来て、テノのライバル心に火が…!
って!うぅ…)

リートは妄想したり自制したりの繰り返し。
そして、彼女にとある考えが浮かんでくる。

(でも頭のなかって誰にも聞こえないもんね…!なんの心配も要らないよ…!)

リートは周囲を確認すると、やはり妄想する道を歩むのだった。

最近はラムがアールを背負っていたり、ルカとツウの絡み、テノが帰ってきて立派に成長していたので彼女の妄想は広がり放題。

「お~いリート!」

と、遠くからテノの声がする。
リートは咄嗟に振り返ると、テノは手を振って歩いてきていた。

「テノ!」

さっきの妄想の出演者が来たもので、リートは驚きを隠せない。

「なーんだ化物でも出たような反応は。」

テノはそう言ってリートの隣に座ると、笑顔になって言った。

「久々にリートの歌声聞きたくて来たんだ!聞かせてくれよ!」

リートはそれを聞いて微笑む。

(大きくなっても、テノはテノだなぁ…。)



ルネアとラムとシナは同室になり、更にはアールを探るメンバーとして共に行動していた。
しかしルネアとシナはくたびれている様子。

(ラム…片付けにうるさいな…。)

ルネアはそう思いつつ、三人で外に出かけているとラムが言った。

「アールっていつも図書館にいるんだよなぁ…」

「図書館行きましょう!」

ルネアは疲れを忘れて急に目を輝かせる。
ルネアは王国暮らしの時は、外に出られなかった為いつも本を読んでいた。
だからこそ図書館に夢を抱くのだ。

「図書館が広すぎて見つからねぇよ。」

ラムはそう答えると、ルネアはしょんぼり。

(図書館に行きたかった…。)

その時、近くから優しい歌声が聞こえる。

「この声…!」

ルネアは呟くと、シナは坂を指差して言った。

「リートだわ!あっち!」

と走って向かってしまう。
ルネアとラムも後から追いかけると、テノがリートの近くにいる事に気づいた。
しかし今は、一同はリートの歌に耳を傾ける。

透き通るような美しさと優しさのある歌声。
聞けば自然と心が穏やかになり、心を満たしてくれる。
目の前が優しく包まれた感覚になり、自然とリートに見入ってしまうのだ。
彼女はまるで歌姫、誰もが思った。

「リートの歌声は世界一~」

シナはそう言い、気性が荒そうなラムやテノも穏やかに聞いていた。
そんな二人に、違和感を覚えてしまうルネア。

そして思い出す。

――「リートの声は【愛】をくれる。人々を包み込み、愛を分け与え愛を貰う。」――

まめきちが言った、パートリーダーの特徴だ。

(確かに…これは正しく愛のある歌…!人々が安らげる居場所…!)

ルネアはそう思っていると歌は終わり、一同は大きな拍手を送る。
いつの間にか観客が増えいていて、驚いてしまうリート。
テノも気づくと三人を睨んだ。

「なんでお前らいんだよッ」

「な~っ!私のリートを独り占めしないでくれる~?」

テノとシナの口論が始まりそうになると、ラムは苦笑して言う。

「シナにとってリートは妹みたいなものだからな。」

ルネアは微笑ましくて笑ってしまうと、そこに見知らぬ男性がやってくる。

黒髪でエプロンに、腰にジャラジャラと鍵をつけている男性。
ジャラジャラしている割に、彼は落ち着いた顔つきをしている。

「グランさん。」

リートはその男性に言った。
どうやら知り合いのようだ。
グランという男性は、リートの手を持つ。

「美しい歌声だったよ。君の歌声を聞いていると心が満たされる!
またいつか聞かせてくれ。」

そう言って立ち去ろうとすると、テノが怒りに満ちた顔をして言った。

「テメェ…ッ!俺のリートに触れやがってなんのつもりだ…!」

するとグランはテノの方を見て言う。

「僕は彼女の未来の夫…さ。」

「まぁ!」

とリートは驚き、グランはかっこつけたまま立ち去った。
するとテノは怒りが爆発したのか、彼に襲い掛かりそうになる。
テノは怒ると同時に、テノの額からは一本の長い角が生えてきた。
ルネアはそれに驚いていると、ラムはテノを慌てて拘束する。

「テノ、怒りが爆発すると角が生えてくんだよ…!」

ルネアはその事実に呆然としていると、テノはグランに言った。

「アルにゃんの次はテメェかグラサン…ッ!」

「グラサンじゃなくてグランさんな。」

ラムが落ち着いて訂正するが、テノは暴れる。

「ラムちー離せ!」

テノはそう言ったが、ラムは困った顔をして離す事はしなかった。
それを見たシナはヘラヘラ笑ってしまう。

「テノったらリートの事好きでね、昔はアールもリートの事好きって勘違いしていつも喧嘩吹っかけてさ。
元々仲が悪いのもあるんだけど、二人はいつものように喧嘩してたわね。
今思えば、アールが虐めっ子撃退できたのもテノと喧嘩し続けたお陰なのかも…。」

シナは途中から苦笑してしまうと、テノはそれに反応する。

「アイツ虐められてたのか!?だらしねー!」

四人とも、「今頃知ったのか」と言いたげな顔だった。

「てか!リートがグラサンと結婚するって本当か!?」

テノはリートに聞くと、リートは真面目な顔をして言う。

「私は恋愛しません。絶対に、絶対です!」

そう言ってリートは立ち去った。
その答えにルネアは笑顔を見せる。

「おお!これは結婚しないで済みそうですね!」

「良くねぇ…」

とテノはがっかり。
そこでルネアは思い立つ。

「あ、僕リートさんのところ行ってきます!」

「あぁん!?」

テノは怒るが、ラムに抑えられていて動けない。
ルネアはそのまま立ち去ると、ラムとシナは顔を見合わせて言った。

「テノを連行するか。」

「そうね。」



ルネアはリートの後を追うと、リートが児童園の子達に囲まれているのを発見。
リートは子供達にちやほやされている様子で、ルネアは微笑ましく思う。

(みんなの人気者なんだなぁ~)

そう思っていると、アールを発見。
アールはリートが人に囲まれているところを見ていた。
いつもより表情が険しいと思ったルネアは、颯爽とアールの前にやってくる。

「ルネア…どうした?」

アールがルネアに気づいて言うと、リートはアールがいる事に気づいた。
ルネアは満面の笑みで言う。

「囲うなら今です!」

それを聴いたアールは静かに首を傾げると、ルネアも一緒になって首を傾げた。
リートは同じ行動をした二人についクスッと笑ってしまう。
その瞬間、アールはリートの方をジッと見る。
リートは睨まれたように思えて恐縮してしまうと、リートは背後から誰かに話しかけられた。

「リートちゃん。」

そう、それはまめきちであった。

「練習の具合はどうかな?」

まめきちはそう言ってリートの頭を撫でると、リートは笑顔で答えた。

「順調です。」

ルネアはその様子を眺めていると、アールは表情が暗くなっていく。

「どうかしました?」

ルネアはアールの変化に気づいて言うと、アールは呟いた。

「…別に。」

ルネアは目を丸くすると、まめきちはアールに気づく。

「ん?アールはどうしたのかな?」

しかしアールは黙ってしまうので、リートも心配になってしまう。

「アール?」

それでもアールは反応をしないので、まめきちは困った顔を見せた。

「彼は話すのが苦手なだけだよ、気にしないでリートちゃん。」

リートはそれでも表情が優れなかったが、ルネアはそれを見かねてアールに言う。

「アールさん、戸惑ってるんですか?
僕にはわからないですけど、ここは勇気を持って!相手に嘗められちゃいますよ!」

それを聴いたアールは目を丸くした。
それからルネアを見つめるので、ルネアもアールを見つめ返した。
アールはルネアに近づいて、肩にポンと手を乗せてからまめきちを見る。

「私は…あなたが嫌いなだけです。」

アールは無表情且つストレートに言うので、ルネアは苦笑。
アールは立ち去るので、まめきちは困った顔をしてしまう。

「アールとは仲良くなれない気がしてしまうね。」



その後、ルネアはリートと共にいた。
一人でボーッと木の影で座っている所を話しかけたのだ。

「リートさん、さっきは人に囲まれて凄かったですね!まるでノノさんみたいだった!友達多そうで羨まし~。」

リートはそれに笑ってしまうと言う。

「そんな事ないわ。ただ少し歌が上手いって言われるだけで、特別誰かと仲良いわけじゃないのよ。」

ルネアは意外な顔をしてしまう。
リートは呟いた。

「お人良しとか、みんなに優しいって、人には愛されるけど
それって相手を甘やかしてるって意味になるのかな…」

ルネアは首を傾げてしまうと、リートは困った顔をする。

「アールによく言われてしまうの、『お前は他人を甘やかしすぎだ。』って。」

「アールさんは逆に愛想がなさすぎですけどね!」

ルネアはフォローする様に言うと、リートは少しだけ微笑んだ。

「でもアールにはいるわ、ラムみたいな大事な友達が。私には…そういう友達がいないから羨ましい…」

そう言ってリートは空を見上げるので、ルネアも一緒になって見上げた。
青く広い空、たまに雲が浮かんでいる空。

「私は広い空を愛していても、アールはね…地上にある一本の木だけを愛しているのよ。
きっと、私とアールが仲良くなれない…決定的な違いなんだと思う…」

リートはそう言って自分が寄りかかっていた一本の木を見つめた。
ルネアはそういう抽象的な話題にはついていけないのか首を傾げると、ルネアは言う。

「じゃ!僕はリートさんの友達になれるように頑張りますよ!」

それを聴いたリートは目を丸くし、それから笑ってしまうと言った。

「ありがとう、よろしくね。」



テノとテナーとラムとシナ、この四人はとある一室で集会を行っていた。
テノはテナーの通訳をして言う。

「ルネちんに警戒は?…俺はしねぇけど。」

テノの意見にテナーは難しい顔をすると、ラムは言った。

「ノノもこの前言ってたじゃん、アイツは本当に未来から来て何かしに来たんだって。
それだけでいいじゃん、疑う必要ねぇだろテナー。」

更にシナも言う。

「テナー、あなたはね…児童園の為に必死になるのはわかるけど、もう少し肩の荷を降ろした方がいいわよ。
あなたらしくない。」

テナーは難しい顔をしたまま黙る。

「はいはい解散~!」

とテノは適当に言って解散をすると、テナーはテノを止めようとするが聞かず。
シナとラムはテナーを心配したように見つめながらも、部屋から立ち去った。

テナーは静まった部屋の中、思い返していた。
ノノがルカに襲われ、この児童園に危機が迫っていると感じたあの日を。

テナーの表情が緩む事はなかった。



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