六音一揮

うてな

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4章 奇想組曲

第63音 有厚無厚

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【有厚無厚】ゆうこうむこう
道理に合わない言いくるめの議論。
誤魔化しの議論。詭弁の事。

============

レイは走ってアール達の方に向かう。
少女は道の途中で親に会って帰した。

すると、上空にアール。いや、青年が飛んでいた。
レイは思わず苦無を彼に投げつけた。

目の前に苦無が通りかかる。

「うわぁ!」

青年は下を見て、降りてきた。

「何~!せっかくいい感じで締めたのに~!」

「貴男、向こうにいたわね。何かあったの?」

「もう終わったさ。片割れ君の勝ち。
親戚のペルドは死んでしまったさー。」

レイは眉を潜めた。

「……まあいいわ。」

レイは立ち去ろうとすると、青年は呼び止めた。

「待って。」

「何?」

青年はレイを見て言う。

「ねえ、片割れ君に優しくしてあげてね。
…僕、君の事信じてるから…。
あの子を二度と不幸にしたくないんだ…。」

その言葉にレイは少し驚いたような顔をした。

「勿論よ。…貴男、本当に彼が好きなのね。」

そう聞くと、彼は笑顔で言った。

「ありがとね、君にもまた会える気がするよ。」

そう言うと青年は一回背を向けてから、レイに振り向いて「アデュー。」と言って飛んだ。
彼はそのまま姿を変える。
それを見たレイは驚いた。

彼はなんと、イーちゃんに変身したのだ。
そして、そのまま遠い遠い空の彼方へ飛んでいってしまった。

「あの子……だったのね…」

レイは呟いた。
それなら自分が手当てをしてくれた時に、動揺してた意味がわかる気がする。
イーちゃんは女が苦手と聞いたからだ。
レイはそれを見守ると、急いでアールの方に向かった。



みんなは暫くアールを黙って見つめている。
このまま襲われるのではないかとヒヤヒヤ。
しかし、アールは不安な表情をした。

「私は…やはりみんなに嫌われている…?」

更に首を傾げたので、いつものアールだと判定。
みんなは一気に駆け寄ってきた。

「アール!無事で良かった!」

ラムが笑顔で言ってくれた。
アールは少し頬を赤らめる。

「当たり前だ。」

「強がり言うなっ!バリカンのくせして!」

シナが言うと、ノノも言った。

「お主ならやってくれると思っておった!」

「怖かったけど可愛かったよ!」

と言ったリート。
それにアールはリートに向かって手を伸ばす。
本心、可愛いは恥ずかしいのでとにかく胸ぐらを掴んでみる。
リートはそれに怯えてしまう。
アールはそれを見て、手を離して黙り込んだ。
するとテノは言う。

「アルにゃん傷は?」

テナーはテノの通訳でいきなり本題に入る。
アールは喉元を触ったり、ルカに撃たれた肩を触ったりしてから言った。

「どうやら竜は傷の治りが早いのかもしれない。」

その言葉にラムは眉を潜めた。

「でもアールって傷の治り普通だった気が」

「元々封印が解かれつつあった。」

とアールが言うのでみんなは驚く。

「え!それってやばくない!?」

「大丈夫だ。
奴の血を奪ってやったところで封印し直した。」

それを聞いたリートは目を丸くした。

「そんな事できるの?」

「竜の力が解除されると、同時に魔法力も上がる。
上がった魔法力で再び封じた。
竜の力も、姿も、父の意識も、全て。」

みんなが関心していると、更にアールは言った。

「私が防御魔法を得意としている事は知っているだろう?
…私の母親がかけた封印。
息子である私がかけられないはずはないだろう?」

みんなは納得した。
それをずっと黙って聞いていたルネアはいきなり喋る。

「アールさんやばいです!すごいです!
怖くて怖くて夜も寝れない気もしたんですが怖いです!あれ?」

と、とんちんかんな事を言い始めたルネア。
アールはルネアを見つつ、眉を潜める。

「相当怖かったんだな。」

みんなはそれに大笑いする。
ルネアは恥ずかしくなった。

「だって本当に怖いんですもん~!
目の前でアールさんが血だらけに…あ、吐ぎそう…」

そう言うと、みんなは笑うのをやめて慌て始めた。
ラムはテノと共にルネアは支えながら言う。

「児童園!児童園までの距離は!?」

「遠いな。」

とアールは冷静に言う。
ノノは笑顔で言う。

「仕方ない…私が連れて行こう」

そう言って翼を広げると、ルネアを抱き抱えて連れて行った。

「待ってこれも吐きそ…」

とルネアの声が聞こえる。
みんなは苦笑いだった。
せめて上から落とさないでくれ。
これぞ、みんなの願い。

ノノは関係なしに飛んでいった。
テノはアールに聞いた。

「アルにゃん。竜の封印して良かったのか?
飛べないし、強くもなれないぜ?」

「力は求めていない。空も飛べなくてもいい。
みんなに再び被害が及ぶよりマシだ。」

「自制すりゃいいじゃん」

テノが呟くと、アールは無理矢理言う。

「人として生きたい。」

周りは微妙な反応をしていると、アールはふとレイの事を思い出す。

「レイのところに行ってくる。」

「場所知っとるのか?」

上空からノノが聞くと、アールは言った。

「契約……したからな。」

そう言って走り去ってしまった。
みんなは驚く。

「え、まさかアールさんレイさんに無理矢理…!?」

ルネアが言うと、ラムは苦笑していた。

「いや、今度は同意上だろ。」

更にはテノはツッコミを入れた。

「おい、これじゃ人として生きてねぇ」

それに対し、テナーは苦笑いをしていた。



アールは走ってレイの元に来た。

「あら、アールさん。よくわかったわね。
あ、そうね、契約のせいかしら」

アールは頷いてから、レイに手を伸ばした。

「さあ、帰ろう。」

レイは黙ってその手を見ている。
敬語を変えるだけで、こんなに親近感が湧くのかと思う。
一気に距離が詰められたと、嬉しく思うレイ。

「レイ?」

アールが呼ぶと、レイは嬉しくてアールに飛びついた。

「大好き!アールさん。」

アールは突然で驚いたが、暫く黙ってから言った。

「…私も、友達程度なら。」

それを聞いたレイは少しムッとした。

「あら契約したでしょ。私達は結婚したとも同然よ。
アールさん、結婚するなら子供が三人欲しいって言ってたじゃない。」

それを聞くと、アールはそっぽ向きながら言う。

「その理屈で行くと私は既にバツイチではないか。
それに子供は竜と人間じゃできない。」

「そんなの嘘よ、だったらアールさんなんて存在しないもの。」

「できないと言ったらできない。させない。」

「させる!」

レイが笑顔で言うと、アールはある事に気づいたのか蒼白した。

「わざと命令するのはやめてほしい。」

それに対し、レイは笑ってしまった。
二人は二人で仲が良さそうだ。



アールとレイは森を歩きながら会話をしている。

「ああ…あの男はイーだったのか…。」

とアールは呟いた。
レイが頷くと、アールは言った。

「私が物心ついた時には既にいて、出かける時はいつも遊びに来ていたな。
自分が竜だと知って以来、急に親近感が湧いて。
いつか目的を果たしたら、こんな魔物のいる場所ではなくて、
もっと他の生物と暮らせるところへ連れて行きたかった…。
恩を着せられたな…。」

その言葉に、少しレイはイーに嫉妬する。

「アールさんの用が全て済んだら、私の故郷に引っ越しましょう!」

レイは突然そんな事を言う。
アールは呆れた表情になるのであった。

(竜にも嫉妬するのか…)



ルネアはやっと児童園前に着く。

「待って…吐きそう…あれ?治った!治りましたぁ!」

ルネアは感嘆の声をあげる。
ノノは扉を開けた。
ルネアもルンルンで入ろうと思ったその時、背後から男性の声が。

「ギプスしてるわりゃ元気な足だなぁ」

聞いた事のある声。
その声を聞いた瞬間、ルネアは真っ青になった。

そう、ベスドマグだった。



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