六音一揮

うてな

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6章 行進変奏

第84音 天網恢恢

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【天網恢恢】てんもうかいかい
天が張り巡らした網は広く、
目は粗いようだが、
悪人、悪事は決して取り逃さない事。

================

アールは走って本拠地前に来ると、なんとベスドマグが歩いていた。
アールはベスドマグの方へと向かう。

「ベスドマグ隊長!」

ベスドマグはその声に少し驚いて振り向いてきた。

「おお!お前どこにいたんだ!?
逃げたと思って探してたんだぞ?」

「ただの散歩です…。」

「そうだそうだお前、これどう思う?すげぇと思わねぇか?
これなら相手軍も一発な気がするんだよ。」

アールは表情を険しくさせて言った。

「ラムの力を容易な考えで使われては困ります…!」

その言葉にベスドマグは少しそっぽを向く。

「大丈夫さぁ。西軍ぶっ飛ばしゃすぐ返すって」

「この地上の状況はどうしてくれるのですか!
ありもしないはずのマグマが存在し、
この深い歪は、自然に治る訳ありません!」

アールは強めに言うと、ベスドマグは参ったように言った。

「なんだ、アイツの魔法で直せねぇのか?」

その言葉にアールは心底驚き、更に呆れたような表情をすると言った。

「歪みを塞ぐ程度なら…。この焼かれ崩れた建物、
自然、人間、そういうものは一切再生不可能です。」

ベスドマグは普通の反応をして言った。

「まあ別に戦争で消えるかもしれなかったものだからな。
仕方ないって。
で、お前はアイツを助けに来たのか?」

アールは少し眉を潜める言う。

「…いいえ、私には彼を助けられない。
……しかしできる事はするまでです。
あなたに…頼みたい事があります。」

言いたい事は抑えた。
ベスドマグはクスッと笑うと「聞くだけ聞くぜ」と言った。
アールは少し黙ると答えた。

「私にある封印、解いて頂きたいのです。」

ベスドマグはそれに少し驚いた顔をして言った。

「お前、そんなの開放してどうすんだ?」

「できるかはわかりませんが。
…【極点守護】の魔法をサグズィにかけたいのです。」

アールはそう言った。

極点守護とは、防御魔法では最高クラスの魔法だ。
この地の崩れるのを抑えるために、
更に空気や気圧のためにかかった魔法を保とうと考えた。
それにベスドマグはフッと吹く。

「大丈夫、そこまで乱用はしねぇさ。
でも、解くのはお断り。お前も恐ろしいの持ってんだろ?
そんなの解いたら俺の責任だからなぁ。」

「あなたはこれが終わったらラムをどう止めるのですか!
この地上に流れっぱなしの力…。
只事では済まされない気がしますが。」

アールが言うと、ベスドマグは少し黙る。

「…でも今はその事態ではない。そんなに解いて欲しけりゃ俺に勝て!」

そう言うのだった。
アールは険しい表情をしつつも言う。

「起こってからでは遅いと言うのに…!」

しかし心を決めたのか言う。

「…わかりました。勝負をお願いします。」

その言葉にベスドマグはニヤっとする。

「いいぜいいぜ!若いモンの威勢はいいねぇ!!
防御オンリーなお前がどう戦う?見せてもらうぜ…」

「少しの攻撃魔法なら使えます…。」

するとベスドマグは、葉巻を強く噛み締める。
そして葉巻本体を手で掴んで引っ張ると、指示棒のように中から棒が伸びてきた。
伸ばしたところで噛むのをやめて離す。

「さあ始めるかっ!」

そう言って、その棒に電気を帯びさせ
アールに向かって魔法を放つのだが、アールは防御魔法で受け流す。
アールはその魔法の強力さに驚くが、ベスドマグは笑って言った。

「そうそう。そうやって防御してればいいさ。
戦争を知らないお前に教えてやる!戦場の戦いってヤツをっ!」

と言いつつ襲いかかるのだ。




一方テノ達は、とある魔法軍に襲われていた。
テノはバク転をしながらも魔法攻撃を避ける。
どうやらテノは敵軍に突っ込んでいる様子。

「なんだよクソッ!せっかく止めてんだからやめろよ!」

テノは攻撃してきた相手に言った。
西軍の女性はテノに言う。

「かーんけいないものー。
弱い者は消えてなくなればいい。邪魔しないで頂戴な」

その言葉に怒りを覚えるテノ。

「お前何様のつもりで言ってんだあぁん??
今すぐ蹴散らすからちょっとこっち来いやぁ…!」

角がしっかり生えてしまったテノ。
そこでノノは言う。

「テノ!あまり挑発に乗るな!
相手はどんな力の使い手かわからんぞ!」

テノはグッと抑えつつも相手を睨む。
相手は笑った。

「そうよー。私はこんな力の使い手でーす!」

何か魔法をかける。
しかし何も起こった気がしない。
テノは「は?」と少し笑ってしまっている。
しかし、ノノはある事に気づく。

「魔法が使えなくなっておるぞ!」

その言葉にテノは「あぁ?」と言いつつも使えない事を確認。
それでもテノは笑いながら言う。

「魔法が使えなきゃ素手で戦えばいいんだろ?」

相手は「は?できんの?」と言うと、テノはニヤリと笑う。

「素手の方が強いぜ俺は」

「げっ…」と相手が言うと、更にノノも言った。

「そうじゃな…、私も物を扱えばなんとかなりそうじゃ」

相手はそれに驚いて焦った。

「何よアンタら魔法に頼りきりじゃないの?」

それにテノとノノは笑う。

「お前なんじゃねぇのぉ?頼りきりなの」

「私はいつでも己を磨いているつもりじゃ!」

「なによ!…生意気な人!
まとめてかかってこい!相手してやるわ!!」

二人は相手にかかろうと一歩踏み出た。



一方シナとリート。
不思議な事に、目の前には多くの人々が並んでいた。
マグマのあるヒビ割れの前につっ立っている。

「何よこれ!」

シナは言ったが、自分達の前に誰かが現れた。
「シナ!」とリートが声をかけると、相手は振り子を持っていた。
相手は二人に催眠をかけた。

「貴方は歪の前で佇み死を考えなさい…」

そう言うと、リートがその振り子を見つめる。
そして自然と体が動き、歪の前に行く。
シナは「は?」と相手に言った。
相手も「はい?」とシナに言った。
シナはリートの服を引っ張りつつ言う。

「アンタ催眠術とかやってんの?
私、そういうの通じないの。」

相手は少し驚きつつも言う。

「何だって!?…僕の催眠が利かない…。
なんて事だ…!僕の唯一の魔法…」

それにシナは微妙な顔で言った。

「アンタそれが魔法だって言ってんの?仕方ないヤツね。」

「魔法だ!これが僕の魔法!
君だって今に僕の魔法にひれ伏すさ!」

そう言って振るが、シナには全く利かない。

「バカ。もうお止しなさい」

相手は悔しくなったのか、相手は言い放つ。

「シナをやっつけろ!」

すると周りの人、リートも含めてシナに振り返る。
シナは青ざめて「え…?マジ?」と言いつつ、一歩下がるが皆は走って来た。
シナは全力で走って逃げるしかないが、足には自信がない。

(待ってリートの魔法食らったら大変!)

と思いつつも逃げるのであった。



人の声でガヤガヤしている本拠地内。
ユネイとまめきちは相変わらず普通に待っている。
そこに、移動魔法で大魔導師と占い師が現れた。
ユネイはそれに驚くと、占い師が言う。

「大変な事になった!
私達はあまり干渉してはいけないけれど…サグズィの破壊だけは止めたい!」

更に大魔導師も言う。

「僕が助けてしまっては意味がないけれど、彼等ならできるとわかっている。
だから来た、僕もこの場所を失いたくない。」

まめきちはそんな二人を見ていた。
二人はここに思い入れがある。
ユネイは状況を理解せずに言った。

「貴方達は何者ですか?」

それにまめきちは言う。

「この宇宙で一番強ーい大魔導師と、その人と共に生まれた占い師さん。」

それに更にユネイは困惑する。
すると大魔導師は言った。

「ああ、あまりネタバレは良くないよ。
ちなみに旅先で自己紹介するけど、あまり信じてもらえない。」

「当たり前だろう。
宇宙で一番魔法力を持っているなど、誰も信じない。」

ユネイはそんな凄い方が今ここにいると思いつつ、質問をした。

「この場所を失いたくないと仰っていますが一体なぜ」

「ここは僕等を生み出した女神、ツィオーネが作り上げた場所。
…失くしたくないよ、彼女の最後の遺産…」

と占い師は言った。
更にまめきちは補足する。

「この二人はツィオーネの力の分身のようなもの。
サグズィを作った女神ツィオーネは、それはもう強い方だったんだ。」

それに大魔導師は言う。

「そんな話はいいんだ。ちなみにスロクル、一人称。」

すると占い師は焦って「私!!」と言った。
まめきちは「そんな事もどうでもいい」と言うと、大魔導師は気づいて言った。

「君の大好きな妖精の子供が大ピンチだよ。」

「それがどうした」

まめきちが言うと、占い師は言う。

「助けないの?」

「私は魔法に長けていない、助けにもならない。」

それに二人はクスッと笑って、占い師は言う。

「じゃあユネイ君、君の力を借りたい。」

「僕にできる事ならします」

まめきちは少し驚くと、それから落ち着いて言った。

「たかが人間相手だからね、ロボットが負けるわけないか。」

するとまめきちはユネイの方を見て言う。

「よろしく頼むよ?行こうか」

そう言って、移動魔法で向かってしまった。
それを見守っていた二人は顔を見合わせる。

「これでいい感じ!」

占い師は言うと、大魔導師は言う。

「後は見物しようかな?私は」

「楽で良いよね、君は。」

すると、大魔導師は少し寂しそうな表情をした。

「まあ…ね…、これで君と一緒に過ごすのも最後…かな?」

「なんだ、知っていたんだ。
…僕はもう決めたから。」

そう占い師スロクルは言うのであった。
二人の間に沈黙が走り、本拠地内の騒ぎの音だけが響いていた。



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