相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
1 / 94
01 賞金狩り

001 天使フューレン、不審な男に攫われて。

しおりを挟む
ここは【天界(テンカイ)】という惑星。
天界には天使や神が住み、平和に暮らしているとの事。
一口で天界と言っても、人間界とあまり変わらない場所だ。
人間と違う所と言えば、神や天使は【神力(シンリョク)】という特殊な力を原動力に生きているところ。

この天界には将来有望な、一人の天使がいた。
緑の髪を持ち、古臭い洋服を着た青年。
古臭い洋服の上には、首元に毛のある青い上着を着ている。
彼は鋭い目を持ち、無愛想な表情が崩れない。

見るからに不良に見えてしまう彼は、将来有望な【召喚術師(ショウカンジュツシ)】である【フューレン】。
彼は朝から、出かけるところだった。

静かな平原、小鳥の鳴き声、辺は古く小さい一軒の家以外何も見当たらなかった。
すると、その古く小さい家の扉が開く。

「母さん、行ってきます。」

「行ってらっしゃい、フューレン。今日から数日、頑張ってね。」

「おう。」

優しい顔をしたフューレンの母親が見送り、フューレンは家を出る。
フューレンは家を出ると、人気のない森に入った。
ジメジメとした森に入ると、泣いている少年をフューレンは発見。
少年は足に怪我をしており、歩けない様子だった。

「動けないのか?」

フューレンは足を止めて少年に聞くと、少年は頷く。
それを聞くと、フューレンは腕時計を確認してから言った。

「ちょっと待ってろ。」

フューレンは腰の左にある小さな小さなバッグから白紙のメモ帳、更に右にあるペン入れからシャーペンを取り出す。
彼はメモ帳にシャーペンを滑らせると、縁を描き【陣(ジン)】を描く。

彼の描く陣は精霊や魔物、その他様々な生物を召喚する為のもの。
描く陣に自身の力を込め、自分の知っている生物を、その生物が住んでいる星から連れてくるのだ。

フューレンは陣を描いた紙を切り取ると呼ぶ。

「力を貸してくれ!【セイレーン】!」

すると陣は光輝き、魚の尻尾を持った人魚セイレーンが現れる。
少年は急に現れたセイレーンを見ると驚いた。

セイレーンは宙を泳ぎ、フューレンの周りを泳ぎつつも歌い始めた。
セイレーンの歌声には、活性と再生の力が宿っているという。

セイレーンの歌声で少年の傷が癒えると、少年は笑顔を見せる。

「珍しい…!召喚術師だ!」

セイレーンは歌を終えると、フューレンの近くで漂う。
フューレンはセイレーンの視線に気づくと、陣の力を解く。
フューレンは始終涼しい顔をしていた。

「気をつけるんだぞ。」

陣の力が解かれると、セイレーンは消えて自分の世界に帰ってしまった。
フューレンはまた走って森を駆けていくと、少年は慌ててお礼を言う。

「あ!ありがとねお兄さん!」

フューレンは森を駆けながらも、ポケットから綺麗に折りたたまれた一枚のビラを出した。
そのビラを見て、フューレンは思う。

(たまに話で聞く『賞金狩りツアー』!集合場所に着くまでまだ余裕はあるが、早い内に着いて色々確認しておかないとな。
…他惑星を巡りながら捕獲対象を誰よりも早く捕獲するこのツアー、そして優勝者には大金が送られる…。絶対に優勝するぞ!)

フューレンの目は燃えていた。
そう、フューレンは家が貧しい為か金に目がないのだ。
フューレンは集合場所に向かっていると、一人の天使に声をかけられた。

「あ、そのビラ!ここだよ少年!」

「え?」

フューレンは天使の方を見ると、その天使の他にも十数人天使がその場所に集っていた。
しかしそこは、森のど真ん中。
集合場所とは違うのだ。

「集合場所が明らかに違うだろう。ビラにはこの先の…」

とフューレンが言ったところで天使は言う。

「どうやら変わったんだと。もう出発みたいだから、間に合って良かったね。」

しかしフューレンは煮え切らない様子。

「は?集合時間ももう少し先だろ!」

「ビラ自体は一ヶ月以上前のものだし、予定変更しててもおかしくはない。」

そこに、一人の男性が割って入ってきた。
橙色の髪を持ったマントを羽織った男性。

「まあ落ち着いて。あ、私はガイドだよ。
みんなに簡単にツアーの内容を言ってからすぐご案内するね。」

フューレンは落ち着いて男性の話を聞く事にすると、男性は天使達に言う。

「これから他惑星に五泊六日で行くんだけど、その惑星にはヒトだけでなく悪魔が沢山住み着いているんだ。
その悪魔の巣窟から、天使の力を持つ悪魔『カオスリート』を探し出して欲しいんだ。」

「具体的な特徴はないのか?」

フューレンが言うと、男性は笑った。

「答えを教えてしまったら探す意味がないだろう?
さあ、説明は面倒だから後は現地でお勉強しよう。じゃあ行くよ~」

男性は適当に進めているので、フューレンは言う。

「おい、もっと詳しく…!」

と言ったところで、男性は唱えた。

「ちょちょいのちょい!」

その掛け声と共に、一瞬にしてフューレン達の姿は森から消えてしまった。





フューレンは気づくと、天界ではない場所に来ていた。

「ここは!?」

さっきの橙色の頭の男性は近くにいない上に、天使達もいなかった。

「騙された!?チッ、早く帰らねぇと!」

フューレンは暫くそこらを走るが、同じ木々が並んでいるだけで見知った場所に着く事はなかった。

「ホントにどこだよここ…!誰かに聞いてみるか…?」

フューレンは周囲を見渡し、人がないか探し回る。
すると近くの木の枝に寝転ぶ一人の男性を発見。
男性は漆黒の髪を持っていて、執事服を着ている。

「おい、ここらで橙色の髪をした男を見たか?おかしな魔法使う奴なんだ。」

すると男性はとある方向を見て言った。

「知らね。でもあっちの教会にいる若牧師なら…何か知ってるかもよ?物知りだからさ。」

それを聞いたフューレンは男性の見た方向を見る。
先には何も見えないが、何も知らないフューレンにとって今は彼の言葉だけが頼りだ。

「ありがと、行ってみる。」

男性は、立ち去るフューレンを横目で流して見ていた。

フューレンは歩いていると、屋根の高い建物を発見した。
走って建物に向かうと、そこは教会。
比較的新しい建物で、教会の周囲の草や木は綺麗に整備されていた。

フューレンは教会の前にいる、聖職服を着た男性に近づく。
暗緑色の髪を持つ男性は赤い聖職服を着て、背中にはおんぶ紐で背負った赤子。
右耳に付けた特徴的な赤いピアス。
手には箒を持っており、どうやら教会の前の掃除をしている様子だった。

「お前ここの牧師か?」

男性はフューレンに気づく。
男性は常に目を閉じていて、フューレンを前にしてもその目を開く事はない。
フューレンは続けた。

「聞きたい事あるんだけど、ここらで橙色の髪をした男見なかったか?
強力な魔法を使って…多分只者じゃない。」

その男性はクスッと笑うと言った。

「たまにこの教会にやってきますよ。
そういうあなたは?どこからいらしたんですか?」

「…天界。」

その言葉を聞くと、男性は口をぽかんと開ける。

「ああ…天使さんですね。
あの方は、度々天使をさらってはこの星に連れてきます。」

「…やっぱ違う星だったか…。ここはどこなんだ?ツアーに参加しようとしたらあの男に連れてかれて。」

それを聞いた男性は微笑む。

「賞金目的でしたか。可哀想に…ツアーは片道切符ですよ。」

「片道切符…?」

フューレンが言うと、男性はクスリと笑った。

「詳しい事は中で話しましょう。
私は牧師の【ワレリー・ポポフ】と申します、あなたは?」

「…フューレン。」

「ではどうぞ、フューレン。」

ワレリーの案内で、フューレンは教会の中に入るのであった。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...