相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
2 / 94
01 賞金狩り

002 ヘグリスメオン教会の若牧師。

しおりを挟む
教会の中は広く、一般的な式場の教会と殆ど似た作りになっている。
一番の違いと言えば、正面の奥にある机の後ろには大きな鏡がある事。
ワレリーはフューレンに振り返ると言った。

「ここは私が管理している【ヘグリスメオン教会】です。
さて、何から話しますか…」

ワレリーはそう言って教会の奥へと歩くと、高い高い天井を見上げて言った。

「この惑星には、人間と悪魔が暮らしています。
ここに来た天使は全員、この世界に住む悪魔に惨殺されてしまうのです。
生きて帰った天使を、私は知りません。天使にとってこの場所は、とても危険な場所なのです。」

フューレンは眉を潜める。

「でも五泊六日だから、六日目になったら帰れるんじゃないのか?」

「おや、どこに宿泊施設があるのですか?あなたがワープしてきた場所は森のど真ん中でしょう。
最初から帰す気などない、と考えるのが自然ではありませんか?」

フューレンはそれを聞いて一瞬悔しそうな顔を見せたが、すぐに冷静を取り戻した。

「帰る方法はないのか?」

「ありません。
ですがあなたを連れてきたあの方は、この星にある魔術科学園の理事長なので会いに行く事ならできると思います。」

「本当か!?」

「はい、魔術科学園に入学する必要がありますが。」

「入学…」

フューレンは黙り込んでしまうと、心に決めたのか言う。

「じゃあそうする。その魔術科学園ってどこだ?」

ワレリーは首を軽く傾げて微笑むと言った。

「ですが、魔術科学園に入るにはお金を管理する口座が必要なのです。
そしてその口座を作る為には…住所が必要です。」

フューレンはショックを受ける。

「確かに、今の俺は家がないどころか一文無し…」

フューレンは頭を抱えると、ワレリーは正面の鏡を見つめてから言う。

「フューレン、鏡の前に来ていただいてもいいですか?」

「え、いいけど。」

フューレンは鏡の前に立つと、とある事に気づく。
鏡にはフューレンが映っているが、フューレンの周りから白色のオーラが見えた。
ワレリーはそれを見て言う。

「なるほど…強い力の持ち主なのですね、フューレンは。」

「この白いのはなんだ?」

フューレンの問いにワレリーは答えた。

「この星では、魔術を扱う者には必ず階級が定められます。
その階級を示すのがこの鏡で、階級は全部で四つです。
フューレンの色は上から二番目の階級、強力な魔術を操れる階級。
学園に通っていない生徒にしては、かなり高い階級と言えるでしょう。」

「これを見たところでどうなるんだ?」

「口座を作るのでしょう、ついでに稼いだらどうですか?ツアーで賞金は貰えないのですから。
お金を稼ぐには、それ層の力が必要なのです。」

「でも、すぐに帰るつもりだしな。」

「やすやすと帰してもらえるとは思いませんがね。」

ワレリーはそう言って教会の部屋の隅まで行くと、角にあった引き出しの前に立った。
ワレリーは自身のポケットに手を入れるが、ポケットを探りながら首を傾げる。
それから引き出しを引くが、引き出しは開かない。
ワレリーはフューレンの方を見て笑う。

「この引き出しに用があるのですが、鍵を失くしてしまいました。」

「大事な物が入ってるのか?誰かに盗まれてたりしないか?」

するとワレリーはふと、引き出しの上に乗っている鍵を手に取った。

「おやおやこんなところに隠れていましたか。」

「それ隠れてねぇだろッ!」

フューレンは咄嗟にツッコミを入れると、ワレリーは鍵を開けて紙を取り出す。

「住む場所がないのでしたら、見つかるまでここで泊まるといいでしょう。
部屋は沢山空いています、よろしければ。」

「え、いいのか?」

フューレンは聞くと、ワレリーは取り出した紙をフューレンに渡した。

「はい。こちらに口座開設申込用紙と、学園入学の書類もありますので記載していただければ私もお手伝いしますよ。」

フューレンはそれを受け取ると聞く。

「なんでこんなものをワレリーが?」

「学園に入ろうと思っていた時期がありまして。」

「ふーん。」

フューレンは書類を読みながら記載を始めると、ワレリーは地図を出した。
書類の記載が一通り終わると、ワレリーはフューレンの口座の紙に教会の住所を記す。
フューレンはふと、ワレリーがおんぶ紐で背負っている赤子が目に付く。
白金の髪を持ち、褐色肌の赤子。
逆にワレリーは黒髪で黄色肌の為、親子といった印象は受けない。

「教会を出て真っ直ぐ歩くと、魔術科学園に着きます。
その受付で口座の用紙ごと渡してください、すぐに手続きが終わるはずです。」

フューレンは地図を見て納得すると、住所を書き終えたワレリーはフューレンに紙を返した。

「どうぞ。
入学はいつになるかはわかりませんが、必要な物があれば私に言ってください。」

ワレリーが言うと、フューレンは何か引っかかるのか聞く。

「なあ、なんでそこまでするんだ?」

それを聞いたワレリーはクスッと笑うと、教会を見上げて言った。

「あなたみたいな天使が数ヶ月に数人は来るのですよ。
この教会は、そういった天使を導く為の教会でもあるので…。
ですが皆、すぐに出て行ってしまうんですがね。」

「そっか。」

フューレンは納得したのかそう言うと、教会を出る。

「行ってくる。ありがとな。」

フューレンはそう言って走り出す。
ワレリーは穏やかな笑顔で、見えなくなるまでフューレンを見守っていた。



フューレンは木々の茂った道を進んでいた。

(結構長いな…て言うか道は本当に合ってんのか…?あ、そうだ。)

紙とペンを取り出したフューレンは陣を描く。

「いでよ【ファルケ】!」

陣から出てきたのは大きな鷹。
フューレンはファルケの足に捕まると、空を飛んだ。
生い茂った木々の上を飛び、遠くに街が見える。

「これならわかるな。…お?」

フューレンはその街の近くに、街と同等の大きさの施設を発見。
街はそこそこ広いのだが、その施設は広すぎるくらい。

「なんだあれ。と、その前に学園を見つけないと。」

街を見渡すフューレンだが、学園らしき建物は一切見つからない。
変に思ってあの広い施設を見ると、門にある文字が目に付いた。

「【魔術科学園】…!?嘘だろ、あんな金持ちの家みたいな建物が学校なのか…!?」

フューレンは衝撃を受けた顔で呆然。
ファルケはそこを目的地としたのか、一直線に学園へと飛んでいくのであった。


学園前でファルケから降りると、学園に登校してきた生徒達はフューレンやファルケを見て唖然。
フューレンは視線を気にしながらもファルケを返すと、学園内に入って受付を探した。

学園に入ると、入口傍で受付を発見。
フューレンは受付に紙を渡すと、手続きが終わるまで近くの座席についていた。
すると、フューレンの隣に座っていた男性が話しかけてくる。

「や、また会ったね。」

聞き覚えのある声にフューレンは振り向くと、そこには自分をさらった男性が。

「お前!俺を天界に帰せ!」

「確かに五泊六日は嘘だけど、ツアー内容は本当だから安心してー。
他の天使さんもそれぞれ『カオスリート』を探し始めてることだしね!
あ、勘違いしないでね、『カオスリート』は人名じゃないから。」

「嘘の内容をビラに書くな!俺は降りる、帰せ!」

フューレンはきっぱり言うが、相手は懲りずに言う。

「ツアーが終わったら君達を帰すからさぁ。
あ、それとー。学園に入ったら私と毎日会えちゃうよ。」

「お前耳悪いのか!?てかお前名前は…」

フューレンは聞いたが、男性は席を立ちスキップしながら立ち去った。

「ちょちょいーのーちょ~い ちょちょいーのーちょ~い」

と歌いながら。
フューレンは男性の後を追いかけようとすると、男性の行動を見て足を止めてしまう。
男性は近くの生徒に近づき、頭を両手で持って「しゃんしゃん!」と言いながら軽く揺さぶる。

意味のわからない光景だった。

(ふざけた野郎だなコイツ…!)

フューレンは呆れて声も出なかった。
生徒は嫌がってはいたが、それ以上は関わろうとしていない。
そこで受付に呼ばれる。

「フューレン・シュテルさん」

「あ、はい!」

フューレンは受付に呼ばれた為、惜しくもこの場を後にするのであった。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...