相剋のドゥエット

うてな

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01 賞金狩り

008 ヘグリスメオンの悪魔達。

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短剣を向けられたフェオドラ、フェオドラは眠っていて気づいていなかった。
ワレリーはやっと追いつき、その光景に驚く。
フューレンは言った。

「すまん、人質に取られちまった…」

しかしフューレンの言葉はワレリーには聞こえておらず、ワレリーはブツブツと言っていた。

「私の爪牙(道具)を…!壊すわけにはならない…!」

怒りか憎しみのこもったその表情に、フューレンは呆れてしまう。

「おいワレリー!お前は自分の娘をなんだと思ってんだよ!」

「道具です。」

ワレリーは淡々と答え、本を取り出した。

「かくなる上は…魔導書の力でフェオドラの力を解放し、この下劣な人間共を殺すしか…」

「殺すって…!そこまでする事はないだろ。それに、アイツ等の手にはまだ他の赤子が…」

(って、言っても無駄か…)

フューレンは思うと、ワレリーは黙って本をしまう。

「…流石に罪のない赤子を殺すのは、私の信条に沿いませんね。」

「えっ…」

フューレンは思わず驚くと、ワレリーはフューレンを見た。

「なんですかその顔は。私は無駄な殺生はしない主義です。」

「あっそう。」

フューレンは意外だと思っていると、ワレリーは本をその場に捨てる。
一同は驚いていると、ワレリーは両手を組んで祈り始めた。

「ああ、なぜこんな事に…運命とは実に残酷です。
私達はこの世に生を与えられ、自身が気づかぬほど多くの人に愛され、ここまで生きてきました。
あなたが死ねば、大勢の人間が悲しむ事でしょう。
そして、この赤子達も死んでしまえば大勢の人間が悲しみます。」

ワレリーの言葉に、男性は平気そうな顔をして言う。

「それがどうした。なんだ?同情を誘おうってかー?」

男達は大笑いすると、ワレリーは続けた。

「悲しみを生み出した者には罪を、罰を、これはこの世の条理。
あなたはその大きな罪を背負い、これからを生きるのですか?」

「はぁ?何言ってんだコイツ。
俺達もう何十人も殺したり子供を売り飛ばしたりしてんのに罰なんて受けてねぇけど?
ハハハ!神様信じてんの?おにーさん!」

男達は再び大笑いするので、ワレリーは悲しみの表情からニヤリと笑う。

「安心しました。あなた達が、清い心を持っていない事に。」

「はぁ?」

するとワレリーは、フューレンの陣を描いた紙を千切ってしまう。
ゴーレムが消えると、男達は感嘆。

「おいワレリー!逃がすのかよ!」

フューレンが言うと、男達が背を向けたところでワレリーは言った。

「相手を一度逃がすのがいいでしょう。相手のアジトを探すのです。」

「はぁ?そんな面倒な事しなくても…」

フューレンは言ったが、ワレリーは目を開いてニヤリと笑う。

「まとめて潰してやるのですよ…!一匹残らず。」

ワレリーの悪魔のような笑顔。
全滅させる気満々のワレリーに冷や汗を浮かべつつも、フューレンは相手を追いかけようとする。
すると、ワレリーがフューレンの上着を掴んだ。

「あ、私は一度教会で羊達を呼んできます。荷物も片付けなくてはなりませんからね。
それで…上着を貸してくれますか?」

「なんで上着?」

「匂いであなたを追いかける為ですよ。」

それを聞くと、フューレンは上着をすんなり渡す。

「犬でも飼ってんのか?大事な上着なんだから破ったりするなよ。」

「ええ、ではまた後で落ち合いましょう。」

そう言ってワレリーは走って立ち去ると、フューレンはファルケを召喚して上空からこっそり追う事にした。





ワレリーは教会に到着すると、すぐに地下の扉を開けた。

「皆さん!緊急事態です!急いで教会に集まってください!」

すると地下にいる悪魔達は、三分ほどで全員教会に集まる。
ワレリーは両手を胸に当てながら言った。

「先程、フェオドラが誘拐されました。
これからフェオドラを連れ去った者達のアジトへ向かおうと思っています。」

今朝食事を持ってきていた悪魔のスピムは、前に出るとワレリーに言う。

「あ、アジトはわかるんですか!?」

「先日来たばかりのフューレンに追ってもらっています。
まだ顔を知らない者もいるでしょうが…彼はなかなか能力のある召喚術師です。」

「信じらんないわ!」

スピムが言うと、ワレリーは目を開いて一同に指示を出す。

「フェオドラを救うのです!皆、五分で出発の支度をしなさい。」

『はい!』

悪魔達は返事をすると、地下に戻って着替えを始める。
悪魔初心者のモルビスは慌てて立ち止まってしまうと、ワレリーは微笑んだ。

「モルビス、あなたも日除けの為にしっかりを帽子を被っておきなさい。
悪魔の力を解放する方法は、昨夜やりましたからわかりますよね?」

「は、はい!」

モルビスは帽子を被ると、悪魔の力を解放して翼を生やす。
他の悪魔達も翼や角のある状態で教会に戻ってくると、一人の女性悪魔は聞いた。

「ん~、牧師様はお留守番~?」

甘い声で話すこの悪魔は、露出度の高い服を着て妖美な容姿をしている。

「いえ、今日は私も向かいます。」

「あらぁ~、じゃあアタシが牧師様を抱っこして運んであげるわ~」

女性がそう言うと、スピムは怒った様子で言った。

「【フレノア】!牧師様は私が運ぶのよっ!」

「あらお子さんが運べるかしら。」

フレノアはそう言うと、ワレリーは教会の扉を開けて言う。

「ではフレノア、お願いしますね。
スピム、あなたは初めて飛行をするモルビスの指導をお願いします。」

「はい…」

スピムは残念そうに返事をすると、フレノアは万歳して喜んでいた。
ワレリーは更に、犬耳の生えた悪魔にフューレンの上着をパスする。
その悪魔は髪で片目を隠し、犬耳と尻尾を生やした大人しい悪魔だった。

「大事に扱ってくださいね。これが新しく入ってきたフューレンの上着です。
【ケリス】、彼の匂いを追いなさい。」

「はっ。」

ケリスは返事をして先頭に立って飛び立つと、他の悪魔も一斉に翼を広げて飛び立った。
教会の扉から一斉に出てくる悪魔達。
全員が出て行くと、まるで空気を読んだかのように教会の扉は重く閉じられた。

昼の空に黒尽くめの悪魔達が一点を目指して飛行する。
遠くの街からそれを見れば、カラスだと思うだろう。

飛行途中、初めて空を飛ぶモルビスはぎこちないながらもしっかり飛んでいた。

「あ!上手じゃない新人!」

スピムが褒めると、モルビスは高いところを飛んでいる事に緊張しつつも返事する。

「お、おう!ありがとよ!」

フレノアはだるそうな顔を見せて言った。

「今日は日差しが強いわねぇ~まさか朝から動く事になるとは思わなかったわ~」

フレノアの腕にぶら下がっていたワレリーは眉を困らせて言う。

「そうですね。もう少し注意すべきでした。」

「いいのよ牧師様ぁ~。それよりも背泳ぎならぬ背飛びで飛行したいわ。
牧師様に沢山イタズラできるように。」

フレノアがそう言うと、ワレリーは微笑んだまま言った。

「それは【キリエル】にしておきなさい。」

すると、キリエルと思わしき悪魔が反応した。

「ま、待ってよ牧師様ッ!僕とこのサキュバスをくっつけようとしないで!」

彼は眼鏡をかけ、水色の少し長い髪をひとつにまとめている。

「ヴァンパイアが何言ってんだかー。ヴァンパイアなら女の一人や二人くらい口説きなさいよねー。」

フレノアがそう言うと、キリエルは顔を真っ赤にしている。
ワレリーがクスクスと笑っていると、ケリスは聞く。

「牧師様、アジトに着いたら我等はどうすればよいでしょうか。」

それを聞いたワレリーは笑うのをやめた。

「まずはフェオドラを確保、罪のない捕まった人々を解放しなさい。
それが終わったら……アジトの者を全員殺しなさい、わかりましたね?」

『はい!』

みんなは返事するが、モルビスは微妙な表情。

「牧師様…意外な指示だな…」

モルビスの言葉にスピムは笑った。

「ま、すぐに慣れるって!」

こうして、悪魔達はアジトへ向かうのであった。





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