相剋のドゥエット

うてな

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04 大家族

034 ギルドの裏を暴く為に。

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衝撃の話を聞いたフューレンは、先程フロルが言った兄の情報とワレリーを照り合わせていた。

(フロルの兄は人を傷つけない優しい人間なんだろ…?でもワレリーはむしろ人を傷つけて喜ぶ人間だし…人違いで合ってる…よな?)

その時、小屋の扉をノックする音が聞こえてくる。
更に男性の声も聞こえてきた。

「フロル~お父さんだよ~」

(父親?)

フューレンは反応すると、フロルはさっさと扉の前に行く。

「どうぞお父様。」

フロルは扉を開けると、そこにはフロルと同じくらい身長の高い男性が居た。
真っ黒な髪に真っ白な肌、目は青い。
フロルと言い父親と言い、ワレリーにはちっとも似ていない。

(やっぱ人違いだよな。)

フロルの父はフューレンを見ると目を丸くして喜んだ。

「あ…まさかフロルの嫁か!?」

あまりにも可笑しな回答だった為、フューレンは初対面なのにも関わらず思い切りツッコミを入れる。

「俺のどこが女なんだよッ!てかどう考えたらそうなるんだ!」

すると、布団に潜っているボリスは言った。

「お父様、初対面の人には大体そう言ってるから安心してよ。」

「失礼な親だな!」

フューレンのツッコミを傍に、フロルは背負っていたライフルの整備を始めていた。
フロルの父は馴れ馴れしくフューレンの肩にもたれかかると言う。

「それとも、一緒に戦争に来てくれるのかい?」

「戦争…?」

フューレンの言葉を聞くと、フロルの父は目を丸くしてフロルに言った。

「なーんだまだ言ってなかったのか?」

「と言われましても。ヤーナが勝手に連れてきただけですので。」

「戦争ってどういう事だよ。」

フューレンが聞くと、フロルの父はフューレンを見つめる。
それから背中に担いでいたマシンガンを肩に担ぎ、フューレンの腕を引っ張った。
そのまま窓の前まで連れて行き、フロルの父は窓から見えるモルビスのギルドを指差す。

「アレに襲撃すんのさ、俺達だけでな。」

「なんで?あんな大きなギルド、絶対勝ち目ないだろ。」

「全滅は無理でも半壊にはできるぞ~?俺達はそのくらい強いんだぞ~」

そこで、ライフルの整備を終えたフロルが言った。

「妹達が誘拐されたんだ。
中で捕まっているのは既にヤーナが確認済み、俺達は相手と戦う事になっても妹達を救出するつもりだ。」

「誘拐!?それって本当か!?」

「ああ。あのアジトは表向きこそは依頼をこなしたり身寄りのいない子供達を貰ったりはしているが、裏じゃなんでも好き勝手やってるみたいだ。
そんな所に妹を置きっ放しにしてたら、いつか殺されてしまうかもしれない。」

それを聞いて、フューレンは真っ先に以前行ったアジトの事を思い出す。
赤子が無造作に積まれ、とある一室には骨ごと捨ててあったり、思い出すだけで身の毛がよだつ光景を。

(ここでもなのかよ…!本当に治安の悪い世界だな!)

思い出すだけで居た堪れなくなるフューレン。

(正直俺は無関係だから、知らんふりしてもいい…だけど…)

同時に、あの時自分が一人の人間の死ぬきっかけを作ってしまった事を思い出す。
地面に落っこちて無残に潰れた男性の死体を思い出すフューレン。
すると、あの時のワレリーの声が聞こえてきた。

――「あなたは赤子を救う為に、彼を殺せば良かったのですよ。」

「しかしこれで、これから誘拐されるはずだった多くの人間が救われたはずです。
そうではありませんか?」――

その言葉を思い出すと、無性に悔しくなるフューレン。

(ただでさえこんな事を一回経験してんのに、また同じような事が起こってるってなら…
黙って見過ごせる方がおかしい。)

フューレンはフロルの父親に言う。

「攻め入るかは別として、俺もついてっていいか?俺は召喚術師なんだ。
こんな事、黙って見過ごせる方がおかしいぜ。」

それを聞いてフロルの父は嬉しそうに両手を組んだ。

「あら嬉し~!うちの家族全員魔術も魔法もさっぱりだから嬉しいかも~」

フロルは黙って頷き、ヤーナも嬉しそうにしていた。
ボリスは布団に潜っている為表情は見えないが、唯一ジェミヤンだけ声を上げた。

「無関係のヤツを連れて行く?やめてくださいお父様もお兄様も!
自分達の事は自分達で解決しましょうよ!」

それを聞いたフロルは、フューレンに聞く。

「誰か助けたい人がいるのか?」

フューレンは首を横に振った。

「特定の人間を助けたいとかじゃない。ただ、この世界はあまりにも酷すぎる。
日夜赤子や子供、女達がさらわれてぞんざいに扱われ続けている。黙ってスルーできるかよ。」

それを聞いたフロルは目を丸くする。
ジェミヤンは深く溜息をついた。

「別に特別助けたい人間がいるわけじゃないって事だな。
赤の他人を助けて何の得になる。お前に赤の他人は必要ないだろ。」

「得がなくとも、助けたいんだろう?」

と言ったのはフロル。
随分と声色明るく言ったので、みんなの視線が一気にフロルに集まった。
フロルは未だに無表情だったが、ジェミヤンに言う。

「必要な人間を切り捨てる人間が居れば、必要でもない人間を助ける人間もいる。
彼は後者の人間だ。きっと彼はそれほどまでにつき動かされる何かを経験したんだろう。」

そう言われた途端、再びフューレンの脳裏に赤子の骨が浮かんだ。
フューレンの暗い表情を見ると、ジェミヤンは反論をしなくなる。
フューレンは言った。

「赤子や女をさらう人間のアジトに乗り込んだ時、赤子が無残な骨になってるところを見たんだよ。お前らは何も思わないのか?」

それに対し、ヤーナな首を横に強く振った。
ジェミヤンは相変わらず黙ったままだったが、そこでフロルが鼻で笑う。
フューレンはフロルの顔を見ると、なんとフロルは表情を若干綻ばせて笑っていた。
フロルはフューレンの前にやってきて言う。

「ごめん、お兄様を思い出してしまって。お兄様も君と似たような発言をした事があってだね。
俺達はそういう人間を沢山見てきたからもうなんとも思わないけど、お兄様だけは強く心を痛めていたらしいよ。」

フューレンは黙って聞いていると、フロルは続けた。

「俺達の妹は俺達が救いに行けるけれど、
身寄りもいないような、誰にも救われない人々を救うのは君達のような人間なんだろうね。」

フロルはそう言うと、やはり可笑しいのか二度鼻で笑うのだった。
しかしその笑いに嫌な感じはしない。
するとフロルの父は笑顔を見せて言った。

「んじゃ行きますぞ~!君もおいで~!」

「父様!」

ジェミヤンはフロルの父に言うが、フロルの父は笑顔のまま言う。

「彼にだって理由がある。「来るな」なんて言えないだろ。」

ジェミヤンは言葉を詰まらせてしまった。
それからフューレンを軽く睨むが、フューレンは心に決めていた。
そんなフューレンを横目で見ながら、フロルは再び微笑んでいた。

「では行こう。」

フロル父の言葉に合わせて、一同は家を発つのであった。





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