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05 魔導書の秘密
047 悪魔の契約の意味。
しおりを挟むヴァレリカの槍で貫かれたアシュター。
槍からは神力が流れ、アシュターはその力に圧倒されているのか弱ってきていた。
「あしゅたぁ!!!」
フェオドラは涙を溜めて叫ぶと、アシュターは手をフェオドラに伸ばした。
「な…泣くな…フェオドラちゃん…」
アシュターは笑う。
ヴァレリカは十分に神力を流した所で、その槍を引き抜いた。
アシュターは膝をつくと、フューレンはアシュターに向かって走る。
ヴァレリカは次にフューレンへ狙いを定めると、フューレンは陣で精霊を召喚する。
「ゴーレム!」
ゴーレムは陣から登場すると、ヴァレリカの攻撃を受け止めた。
フューレンはすぐにアシュターに駆け寄ると、怪我の具合を見る。
「これは…!」
フェオドラなアシュターの元まで飛んできて、フューレンに聞いた。
「あしゅたーたすかる…?」
「わからない。神力に弱い悪魔じゃ助かるかどうか…」
フェオドラは遂に溜めた涙を流し始めると、アシュターは言った。
「フェオドラちゃん…泣くな…泣いちゃ…ダメだ…」
「なんでぇ!」
フェオドラが言うと、アシュターは続ける。
「俺はもう助からない…。俺にはわかる、ヴァレリカは…ああやっていつも悪魔を殺してきた…」
ヴァレリカはゴーレムとの接戦の末、ゴーレムに槍で一刺しして打ち勝つ。
ヴァレリカはフューレンに狙いを定めた。
しかし、そこに一陣の風が吹く。
ヴァレリカはその風に視線を向けると、そこにはヴァレリカを睨みつけるケリス。
ケリスの腕は、獣の腕のように鋭い爪のある腕になっていた。
すぐさまヴァレリカとケリスの戦闘が始まる。
二人は互角。
お互いの神力や魔力を打ち消し、槍と爪を交えながら戦った。
フューレンはケリスの登場に視線を向けていたが、アシュターが話し始めるのでアシュターの方を見る。
アシュターは目を既に閉じていた。
「星の数ほど悪魔を同じように殺して来たんだろうが…俺は今までの悪魔とはかなり違うんだぜ…?」
アシュターの寝顔の様な表情は、なんだか満足気だった。
フェオドラは涙を流したままアシュターを見つめる。
フューレンは思わず言った。
「なに演技でもない事言ってんだよ!」
しかしアシュターはフューレンの言葉に返答する事なく言った。
「俺は…フェオドラちゃんの礎となる…。死んでやっと、フェオドラちゃんの力になる事が出来る…最高の死に方じゃないか…」
「しんでわたしのちからにって…どういうこと…」
フェオドラが呟く。
フューレンはワレリーの話を思い出した。
――「フェオドラは契約した者の命を奪い、成長する悪魔です。
フェオドラはガリーナの命を犠牲に、産まれる前の子供から今の姿へと成長したのです。」――
フェオドラはアシュターの手を両手で握った。
アシュターの手は今まで以上に白く、青くも見えなくもない。
フェオドラは温かい涙をアシュターの手に落としながら言った。
「どういうこと…?おしえて、あしゅたー」
アシュターはフェオドラの手を、今の力の限り握る。
弱すぎる力に、フェオドラはアシュターの終わりを悟った。
「大好き…フェオドラちゃん…」
アシュターはそう呟くと、フェオドラは大粒の涙を何度も落とした。
その瞬間、フューレンは驚いた。
フェオドラの姿が、赤ちゃんほどだったのに六歳ほどの子供へと成長しているのだ。
フェオドラは黒い布を赤ちゃんの時は巻いており、今では胴の正面を隠せるほどしかない。
「起きて…起きてアシュター!」
フェオドラの声も変わっており、言葉もハッキリ聞こえるようになっていた。
ケリスもその変化に気づき、驚いた顔。
ヴァレリカはその隙を狙ってケリスに攻撃を放った。
ケリスは直撃し、地面に落下する。
ヴァレリカもフェオドラを見て舌打ちをした。
「クッ…まさか契約した悪魔が死ぬと成長する悪魔だったとはな。」
そこに遅くもワレリーも到着。
ワレリーはフェオドラを見ると目を剥いた。
「フェオドラ…?」
次にアシュターを見ると、全てを察する。
ワレリーは目を閉じ、眉を潜めて黙り込んだ。
フェオドラは泣きながらも、その場で立ち上がる。
フェオドラの胴を隠していた布もはらりと落ち、フェオドラの胴を隠すものはフェオドラの長い髪しかなくなった。
「許さない…」
フェオドラに黒いオーラが立ち込める。
その強大な魔力に、フューレンの背筋はゾッとした。
(なっ…なんだこの強大な魔力は…!)
ヴァレリカも感じているのか、眉を潜める。
フェオドラはヴァレリカを睨んで言い放った。
「あなたを許さない!ヴァレリカ!!」
その時、フェオドラから魔力が解放される。
魔力の風でフューレンは飛ばされそうになっていた。
ワレリーはふと魔導書を出すと、魔導書も強大な魔力を放ちながら怪しく輝いていた。
ワレリーは黙ってページを開くと、ダガーを出してニヤリと笑う。
「復讐をするのですねフェオドラ…いいでしょう。血を…与えましょう。」
ダガーを自身の腕に刺そうとするワレリーに、ケリスが止めに飛びかかった。
「いけません牧師様!以前のモルビスの事と言い、これ以上悪魔の力に触れてはいけません!」
「離しなさいケリス。そうでもしないと、フェオドラは戦いに敗れて死んでしまいます。」
「ケリスにお任せ下さい…!」
ケリスは涙ながらにワレリーを止めている。
フューレンはそれを見て、フェオドラに言った。
「やめろフェオドラ!お前が血を求めるとワレリーが…お前の父さんが怪我するぞ!」
フェオドラはその言葉に正気を取り戻し、ワレリーの方を見た。
ダガーを腕に刺そうとするワレリーを見て、フェオドラはワレリーに駆ける。
「パーパ!」
しかしヴァレリカはそれを許さない。
ヴァレリカはフェオドラに向かって襲撃を始める。
そこに、聴き慣れた少女の声が聞こえた。
「【ヴィディカ】!!」
その声と共に空から落ちてきたのは雷。
雷はヴァレリカに一直線で落ちてきており、ヴァレリカはそれを槍で防いだ。
その声の主はスピムで、フレノアとキリエルとモルビスと一緒に援護に来ていた。
ヴァレリカは魔力の混じった雷に打たれ、少し痺れている様子。
スピムは胸を張って鼻で笑った。
「どうよ!」
「あらあらオチビちゃん、これだけじゃ終わらないわよ。」
フレノアは冷静に言うと、スピムはフレノアを睨む。
キリエルは空を飛び、ヴァレリカの前にやってきた。
「ほらほらこっちこっち~」
キリエルはヴァレリカを挑発すると、ヴァレリカは電流を飛ばしてくる。
キリエルは驚いて避けると、そのまま飛び去るのでヴァレリカはキリエルを追いかけた。
続いてモルビスは言う。
「よし、俺もキリエルの援護だ!」
モルビスはキリエルの方に向かうと唱える。
「【ガグド】!」
広範囲に渡っての岩が地面から顔を出し、低空飛行を続けるヴァレリカとキリエルを上空へと逃がす。
キリエルはそのまま大空に飛び、ヴァレリカも大空に向かった。
ある程度の上空まで行くと、キリエルはヴァレリカの方を向いてニヤリ。
「僕のとっておき見せちゃうよ?」
ヴァレリカは構える。
周囲に冷気が漂い、大きな渦となって二人を囲んだ。
「【ベナギルクァート】…」
その瞬間に空気が氷漬けにされ、キリエルを綺麗に避けた周囲一面が氷の塊となった。
ヴァレリカも氷漬けにされ、キリエルの魔力が効いているのか身動きがとれない。
美しい形をしたその広範囲に渡る氷は、まるでアート。
それからキリエルは指をパチンと鳴らした。
音と共に、氷は粉々に壊れて粉雪となる。
ただ一つ、ヴァレリカを凍らせた氷だけは残っていた。
そこにモルビスがやってきて、モルビスはその氷を思いきり遠くへ殴り飛ばした。
「うおおお!!戻ってくんなッ!!」
遠くへ飛ぶヴァレリカ。
キリエルは感心した声を出し、モルビスは腕を組んで喜んでいた。
戻ってフューレンの所では、スピムとフレノアはワレリーの元に来ていた。
フレノアは微笑みながら、自身の腕を切ろうとしているワレリーの耳元で言う。
「あら牧師様?血がなくなったらキリエルの魔力はどうやって供給するのかしら?私達だって魔力が足りなくなって困っちゃうわよ?
牧師様は私達を纏め、そして私達の礎となる人間なんだからしっかりして欲しいものだわ。」
ワレリーはその言葉を聞いてダガーを握る手を緩めると、やっとケリスの顔を見た。
ケリスは涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
スピムはケリスに言う。
「もう!ケリスは小さな事で泣きすぎよ!!」
「牧師様の命に関わる事です!小さくはありません!」
ケリスはそう言い、スピムは困った顔。
ワレリーはダガーを収めると、次にフェオドラを見た。
フェオドラはワレリーを見てから俯くと、小声で言った。
「パーパ、ごめんね。」
ワレリーはフェオドラを見て口を紡いでしまったが、やがていつもの微笑みを見せる。
「いいえ。フェオドラも、よく我慢しましたね。」
ワレリーはフェオドラの頭を優しく撫でた。
フェオドラは黙って涙を流す。
そして、ワレリーの胸に顔を埋めて静かに泣いた。
それと同時に、空から粉雪が降ってくる。
スピムは空を見上げて思わず言った。
「あれ、まだ雪の時期じゃないのに。」
フューレンはアシュターを抱いてワレリー達の元へ来る。
フューレン達もその粉雪を見上げながら、フェオドラの気が済むまで黙って待った。
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