相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
48 / 94
05 魔導書の秘密

048 フェオドラとしたい事。

しおりを挟む
数日後の事、ヘグリスメオン教会の皆はアシュターの墓を教会の裏に建てていた。
墓の位置を整える等の力仕事は男達の仕事で、女性陣は花束を墓に飾っている。

ふと、キリエルはフェオドラの横顔を見た。
フェオドラは悲しそうな顔をしていたが、呑気なキリエルはフェオドラを見て少し頬をピンクにしていた。

(猫みたいで可愛い。)

キリエルに気づいたフレノアは、キリエルの背筋を爪で突っついた。
キリエルはフレノアの方を見ると、フレノアはキリエルの顔を見て溜息をついた。

「なに見惚れてるのよ。全く呑気さんね、今は何をしてると思ってるの?」

キリエルはそれを聞いて苦笑い、それからアシュターの墓を見つめてから呟く。

「確かにアシュターの事は悲しいけどさ…」

キリエルはそう言うと笑顔をフレノアに見せた。

「ずっとしょんぼりしてたら損だよ!
フェオドラも落ち込んで外出たがらないしさ、きっとアシュターはそんな事望んでないよ!」

フェオドラはそれを聞いてキリエルの方を見る。
キリエルは顎に手を当てると考える仕草、それから続けた。

「アシュターが命を懸けてまでフェオドラに命を与えた理由は…そう!
赤ちゃんの姿じゃできない事沢山あるじゃん!きっと、フェオドラに次の一歩を踏み出して欲しいんだよ!」

「新しい一歩…?」

フェオドラが呟くと、キリエルは大きく頷いた。
それを黙って聞いていたワレリーも、やがてフェオドラに優しく微笑む。

「そうですね。フェオドラが以前みたいに家にこもっていたら、確かにアシュターは落ち込みますね。」

フェオドラはアシュターの墓を見つめた。
それからフェオドラは一瞬目に涙を潤ませたが、すぐに涙を拭いて墓の前にやってきた。
フェオドラは真摯な表情を見せる。

「アシュター!私、毎日ここに来るね!そして、今日あった事、たっくさんアシュターに話す!」

そう言ってからフェオドラは優しく微笑み、そっと両手を胸に当てた。

「アシュター…きっと退屈するでしょ。面白い話、沢山お話するね。」

一同はフェオドラの様子を見て、元気を取り戻した様子。
薄暗い表情をしていた教会のみんなは微笑み、それから口々にフェオドラに言った。
キリエルは笑顔で言う。

「じゃあフェオドラ!魔術科学園においでよ!今までにない場所だから、きっと楽しいよ~!」

それに便乗したのか、ケリスも言った。

「フェオドラが大きくなったので、一緒に食べ歩きができますね。今度しましょう。」

フェオドラは二人の方を見て、目を輝かせる。
フェオドラの笑顔を見て、他のメンバーも口々に言った。
スピムは言う。

「じゃあフェオドラに家事のお手伝いしてもらおうかしら。」

フェオドラは好奇心旺盛な目で二度頷くと、続いてフレノアが言った。

「あら、まずはお洋服買わないと。ずっと家にこもって買い物にも来てくれなかったじゃない。」

「欲しい!」

フェオドラは言うので、一同は笑った。
モルビスは何を言うか迷った末に言う。

「じゃあ……一緒に狩り行く?」

それに対し、女性陣は微妙な反応を見せた。
フューレンは微妙な反応を見せ、キリエルは苦笑。

「行く!」

しかしフェオドラはそれでも元気いっぱい。
フューレンは思わず冷や汗。

(そうだな、今まで人を殺してきた悪魔だもんな。そりゃ平気だな。)

ワレリーは微笑ましいのか言った。

「良かったですねフェオドラ。皆さんフェオドラとやりたい事が沢山あるようです。」

「うん!全部やりたい!できなかった事沢山やるの!」

フェオドラはそう言ってから、ワレリーの方に来る。
ワレリーは首を傾げると、フェオドラは目をキラキラさせて言った。

「パーパは私と何をしたい?」

ワレリーはそれを聞くと、少し間を空けてからフェオドラの視線までしゃがむ。
フェオドラと目が合うと、ワレリーはフェオドラの頭を撫でて言った。

「おや、いっぺんに全てをしてはフェオドラの体が持ちませんよ。私はまた後で。」

「今聞くの!アシュターも聴いてるもん!」

フェオドラが言うので、ワレリーは墓の方を見た。
それからフェオドラを見て言う。

「私は…フェオドラを遠くで見ているだけで十分なのです。教会の皆と仲良くしているフェオドラが見たいのですよ。」

フェオドラはそれを聞くと、不貞腐れる。
しかしすぐにフューレンの所に来て、目を輝かせた。

「フューレンは私と何したい!?」

「ねぇよ。」

「酷い!パーパと同じくらい酷い!」

フェオドラはフューレンのお腹をポカポカ殴り始めるので、フューレンは溜息。

「俺とあの腹黒牧師を一緒にしないでくれ。」

「おや、誰が腹黒なのですか?」

ワレリーが言葉に反応すると、フューレンとワレリーの目が合う。
フューレンは動じず言った。

「わかってるくせに。」

すると、ワレリーはクスクス笑った。
そのワレリーの上品な笑いに、フューレンはどうも調子が出ない。
キリエルは閃いたのか言う。

「フューレンも魔術科学園に来て欲しいんだよきっと!被っちゃうから言わないんだよ!」

「そうなの!?私気にしないのに!」

フェオドラが言うと、フューレンは眉を潜めた。

「はぁ!?誰もそんな事…」

と言ったが、もう遅かった。
フェオドラは跳ねて喜ぶ。

「じゃあフェオドラも、魔術科学園行くー!」

キリエルも同じように跳ねて喜んだ。
フューレンは呆れて溜息をつくが、それを見ていたフレノアは言う。

「あら、その前にお洋服買わないと。」

フェオドラはフレノアの所まで歩くと、手を挙げて返事をした。

「はーい!」

フレノアはフェオドラを見ると、可愛いと思ったのか頬をピンク色に。
しかしフレノアは可愛がるのをグッとこらえている様子だった。

ワレリーはこっそりフューレンの真後ろまで来る。

「フューレン。」

「おおっ」

フューレンは反応が薄くも驚くと、ワレリーは言った。

「最近バイトを探しに街に出ていましたが、何かいい仕事は見つかりましたか?」

「え、いや全然…」

フューレンが言うと、ワレリーは微笑む。

「実は先日、街でヴァレリカと対決したのを見た街の人の中で、あなたを雇いたいと願う人が現れたのです。」

「マジか!?」

フューレンは即座に食いつくと、ワレリーは頷いた。
それからワレリーはフューレンの隣に並んで言う。

「狩りという残虐なお仕事ではないようです。一度お話を聞きに行ってはどうですか?」

「行く!と言うか人殺し以外の仕事ならなんだってやる!」

その食いつきっぷりにワレリーはクスリと笑った。

「わかりました。後で住所をお渡ししますね。」

「今行く!そして面接を!」

「ふふ、仕方ありませんね。」

そう言ってワレリーは教会に戻るので、フューレンもついていく。
それを尻目で見ていたフェオドラは、二人が帰るところを見て膨れた。

それを見たスピムは言う。

「牧師様も少しは構ってあげればいいのに、フェオドラが可哀想。」

「そうねぇ…牧師様はフェオドラから距離を置き気味よねぇ…」

フレノアも言うと、フェオドラは頬を膨らませたまま二人を追いかけた。
一同はそんなフェオドラの後ろ姿を見ると、顔を見合わせて微笑んだ。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...