相剋のドゥエット

うてな

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06 忍び寄る悪魔

054 ワレリーが倒れた。

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ある日。
フューレンは教会の外に出ようと廊下を歩いていた。

(今日はバイト休みだし、気分転換に散歩でもするかな。)

フューレンはそう思いつつ教会の外に出る。
するとフューレンは、外で倒れているワレリーを発見。

「ワレリー!?」

フューレンはワレリーに駆け寄ると、ワレリーは気絶をしている様子。
顔色が悪く、手元に箒がある事から教会の庭の掃除をしている最中だと知る。

「気を失ってるのか?…早く中に運ばないと。」

フューレンはそう言って自分よりも背の高いワレリーを担ぐ。
ワレリーは軽く、フューレンは少しだけ驚いた。

(意外と軽いな…。あんまり飯食わないし、納得できるが。)

フューレンは教会に入り、すぐにスピムに見つかった。
スピムは丁度洗濯物を干そうとしていたところで、ワレリーを見るなり蒼白。

「牧師様!!」

「教会の前で倒れてたんだ。」

「早く部屋に!」

スピムはフューレンを案内するので、フューレンは黙ってついていく事に。
フューレンはワレリーの部屋の前に着く。

(そう言えばワレリーの部屋を把握してなかったな。いつも空き部屋の掃除してるからわかんなかった。)

スピムは扉を開き、フューレンはワレリーを部屋のベッドに寝かせた。
部屋は非常に質素で、机とベッドと鏡とタンス、これ以外に家具はない。
本一冊も置いていないその部屋に、フューレンはまた目を丸くした。

「この部屋、何もないんだな。本を持ってないのが以外だ。」

「本は共有スペースに置いてるから、自分の部屋には置かないのよ。」

「それにしても、趣味とか何かあるだろ?キリエルの部屋なんか物で溢れかえってるぞ?」

「キリエルと牧師様を比べないでよ。」

スピムは無愛想に言うと、ワレリーの顔色を見て眉を困らせた。
フューレンは言う。

「にしても、なんで倒れていたんだ?誰かに襲撃とかされてないよな?」

スピムは困った顔をしながら、間を空けてから言った。

「きっと…お疲れなんだと思う。」

「疲れ?いつも庭の掃除ばかりしてるイメージだけど。」

その言葉に、スピムは首を横に振った。

「私達に魔力を補給させる為に、牧師様が身を削っている事知ってるでしょ!
牧師様は…追い込まれているのよ…!!」

ワレリーの事を話しているのだが、スピムの方が追い込まれた表情であった。
フューレンは黙って聞いていると、スピムは続ける。

「悪魔は人間の大切な物を全部奪っていくのよ!悪魔である私達がそうなのよ。
キリエルは血を奪い、フレノアは活力を奪い、私は心を蝕んで精力を奪う。」

「心を蝕む?」

フューレンは首を傾げると、スピムはワレリーの顔を見た。
ワレリーの顔色は悪く、静かに眠っている。
そんなワレリーを見ると、スピムは安堵の溜息をついた。

「私、夢魔なの。」

「メドゥーサじゃなくて?」

フューレンの問いに、スピムはついカッとなって言い放つ。

「元々こういう髪をしているってだけで、ただの夢魔なの!!」

スピムだけでなく髪の蛇までもこちらを睨む。
スピムはフューレンから顔を逸らすと、スピムは再び落ち着いた様子に。
悲しそうにワレリーを見つめるのだ。

「毎夜毎夜、牧師様に悪夢を見せる。牧師様の苦しみで、私は魔力を得るの。
そうしないと、私は酷く衰弱してしまう。夢魔って儚い悪魔なの。
私は毎夜、牧師様の心を蝕んで、悲しんで、苦しんでいるところを見て……見てらんないのよ!」

フューレンは黙って聞いていたが、やがて溜息をついて言った。

「変だな。悪夢を見せなきゃ生きてけないってのに、悪夢を見せて苦しむ悪魔なんてよ。」

「勝手に言いなさい。」

スピムは強気に出るが、フューレンは続いて言う。

「なんでスピムは悪魔になったんだ?ワレリーに無理矢理悪魔にされたのか?」

「いいえ、牧師様についていく為よ。別に無理矢理悪魔にされたわけじゃないわ。」

「ワレリーを苦しめる事になって…悪魔になって後悔してるか?」

その問いに、スピムは目を剥いて黙り込む。
それから俯いて言った。

「別に。牧師様が望んだ事ですもの、私が後悔しても意味ないわ。」

「そうか。」

すると、二人の間に沈黙が流れる。
スピムはワレリーの様子を眺めたまま、フューレンは壁に寄りかかりながらも外の様子を眺めていた。
スピムは暫く黙っていたが、フューレンに言う。

「でも、おかしい。牧師様って本当に普通の人間なのかしら。」

「どういう事だ?」

「悪魔に身を捧げる人間って数多くいるけど、悪魔に身を捧げすぎた人間は悪魔になってしまうの。
牧師様なんて、とっくに悪魔になってるはずだわ。
…だけど、いつまで経っても人間のまま。不思議よね。」

「ワレリーが悪魔にならない理由か…魔力も無いし、普通の人間だとは思うんだけどな。」

フューレンが呟くと、スピムは続けた。

「そうよね…。人間じゃないと悪魔に身は捧げられないから、悪魔にならない様な事をしてたりするのかな?
何か危険な事していないか心配。」

「アシュターは別なのか?フェオドラに力を与えてたけど。」

「それはフェオドラが特殊なの。」

それを聞くとフューレンは納得。
フューレンはワレリーの顔色を見ると言った。

「真っ青だな。キリエルに血をたっぷり吸わせたんだろうか。」

その言葉に、スピムは眉を潜める。

「加減はしているはずよ。
あと、キリエルは勝手に魔力を使い過ぎないように魔力の補給は最近抑えているの。」

「じゃあなんでこんなに顔色悪いんだ?貧血で倒れたようにしか見えないんだが。」

フューレンの言葉に、スピムは何か心当たりがあるのか反応を見せた。
フューレンはスピムの様子に気づくと、スピムはワレリーの左腕に手を添えた。

「確かこっちに…」

その時だ、ワレリーの声が聞こえた。

「おや、眠っているからと言って好き勝手していいものではありませんよ。」

ワレリーは目を覚ましていて、スピムは驚く。

「牧師様!?さっきの話、どのくらい聞いていましたか!?」

「半分くらい聞きましたよ。」

その言葉にフューレンは微妙な反応を見せる。

(半分って…つまりは全部聞いてんじゃねぇか。)

スピムはその言葉の意味を理解していて、スピムは怒った様子で言った。

「もう!全部聴いてるじゃない!」

ワレリーはそれに対し、クスクスと笑った。
フューレンとスピムは溜息が出てくる。
ワレリーは起き上がると、スピムの頭を撫でた。

「ここまで運んでくれたのですね。スピムにフューレン、ありがとうございます。」

「ワレリーも気をつけろよ。倒れられたら教会の奴等がみんな心配するぞ。」

フューレンの言葉に、ワレリーは眉を困らせて微笑む。

「そうですね。」

「あと、ちゃんと飯を食え。」

それに対しワレリーは静かに頷くと、スピムは言った。

「あ、じゃあ何かお食事を…。
牧師様は何か食べたいものとかありますか?良ければ作って持ってきます。」

それを聞くと、ワレリーは少し考える。
それから呟くようにして言った。

「…レモンパイ。」

スピムはそれを聞いて驚いた。

「レモンパイ!?牧師様、甘いの苦手でしょ!?」

「それでも、今食べたいと思いました。」

ワレリーは笑顔で言うもので、スピムはすっかり勢いが消えてしまう。
スピムは落ち着いた様子で渋々言った。

「わかりました…。
ねぇフューレン、一緒に買い出し付き合って。」

「はぁ?」

フューレンが言うと、スピムは続ける。

「別に暇でしょ。牧師様の為に一肌脱ぎなさい。」

「無理。」

「いいから!」

フューレンはスピムに無理矢理買い物に付き合わされる。
フューレンは嫌々連行されていった。
そんな二人を見て、ワレリーは再び笑う。

しかし二人が部屋を出て行くと同時に、酷く咳き込むワレリー。
それからワレリーは部屋で一人、溜息をついた。





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