相剋のドゥエット

うてな

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06 忍び寄る悪魔

062 キリエルの葛藤。

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タイミの屋敷の地下牢にて、アイナは一人拘束されていた。
真っ暗で静かで冷たい地下牢。
アイナは溜息をついた。

「もう。どのくらい時間が経ったのかもわからないし、お風呂にも入れない。最悪よ。」

アイナは牢屋の柵を見つめる。

(魔法で結界を貼ってある…。厳重にしてるわね、こんな魔力のない悪魔一人に…
仮にキュースが来たところで、私はここから出られるのかしら。)

アイナは考える度に溜息が出てくる。
それから壁にもたれ掛かり、目を閉じた。

(…変な事は考えないでおきましょ。私は脱出のチャンスを伺うしかないわ。)



キリエルはタイミの屋敷に着いた。
つい数百メートル前では陽の光が暖かく当たっていたのにも関わらず、タイミの屋敷の周りには綺麗にも黒雲が空にかかっていた。
キリエルは屋敷を見上げて息を呑む。

(ヤバイ…魔の巣窟に来たって感じだ…)

屋敷の柵を越え、キリエルは屋敷の扉前へとやってきた。

(結界もなし。なんだろう…警備がなってないっていうか…そういう所が逆に怪しいっていうか…)

扉の前に立つと、インターホンを鳴らすか迷う。
キリエルはインターホンに手を伸ばしたり、手を下ろしたり。

(ぐぐぐ…!奇襲をかけたら余計ダメか…ここは正面から行くべし!)

キリエルは息を大きく吸ってから言った。

「たのもーー!」

声は屋敷の壁にぶつかって響く。
再び静まり返る屋敷。

その時、屋敷の扉は開いた。
中から小柄のメイドが出てくる。
キリエルは一見普通そうなメイドが視界に入ったので、目を丸くした。

「あ、こんにちは。」

キリエルはそう言って挨拶すると、メイドは淡々と言う。

「キュース様ですね。タイミ様がお待ちです。」

そう言って通してくれるので、キリエルは屋敷に入った。
中は至って裕福な家庭の家。
悪魔使いの家だからといって、お化け屋敷のようなおどろおどろしい家ではないようだ。

暫くメイドの案内で屋敷を歩いていると、とある一室に到着。
メイドはキリエルに体を向けて言った。

「こちらがタイミ様のお部屋となります。どうぞ。」

「あ、ありがとう…」

キリエルはそう言って扉に手をかけると、一度手を離してからノックをした。

「どうぞー」

中からタイミの声がした。
キリエルはその声を聞くと、再び扉に手をかけてドアを開いた。

「お邪魔します。」

キリエルはそう言って入ると、タイミは書斎のような部屋にいた。
タイミは読んでいた本を閉じると、キリエルに微笑んだ。

「やあ、キュース君。君に会いたかったよ。」

キリエルは気を引き締めると聞く。

「アイナは無事なんですか?」

「ああ勿論。君が僕の言う通りにしたら、開放してあげるよ。」

「本当!?」

キリエルは前のめりになって言うと、タイミは笑顔で頷いた。
タイミは続ける。

「それでね、君を僕の悪魔にしたいんだけど…承諾してくれるかな?」

それを聞いたキリエルは驚いて息を詰まらせた。

「え…それって…」

「君の力に可能性を見出したんだよ僕は。どうだい?なってくれるよね。」

キリエルは再び真摯な表情に戻る。

「交換条件って、これの事ですね?」

「ああ。」

キリエルは眉を潜め、やがて頭を抱えてしまう。
キリエルは迷っていた。

「アイナは助けたい。でも、ここで僕が引き受けたら…
僕はこの先、沢山の人を傷つけて…殺して…生きてかなきゃなんない…!」

それを聞いていたタイミは笑う。

「どういう事?ああ、まさか魔力の補給にって事?」

「うん…。それに、人を傷つける仕事とか沢山…あるでしょ…」

「そうだね。」

タイミが言うので、キリエルは拳を握った。
そして歯を食いしばって悔しがるのだ。

(情けない…!アイナを助ければいいのに、先の事が不安で決断できないなんて…!)

「怖がらなくていいのに。」

タイミが言うと、キリエルは首を横に振る。
タイミは笑ってしまい、続いて言った。

「君はいつも人を傷つけているじゃないか。」

キリエルは驚いたような顔をする。
それからタイミを見ると、タイミは微笑んだまま言う。

「あの牧師を傷つけて、君は生き存えているんだろう?」

キリエルは黙り込んだ。
タイミはキリエルの反応が面白いのか、また笑う。
キリエルは苦しそうに言った。

「そうだよ…。牧師様をいつも苦しめているのは…僕達悪魔だよ…それで生き存えているのも僕達さ。
悪魔である限り…僕は誰かを傷つけなければいけない…!」

すると、タイミは言う。

「ねえ、僕は君がこっちに来るか来ないか聴いてるんだけど。」

キリエルは驚き、タイミの顔を見た。
タイミはまだ穏やかな笑みを浮かべており、その様子を楽しんでいる様子。
キリエルは一度落ち着くと、目を閉じる。

(…アイナを助けなきゃ…。その後の事は、後で考える。)

キリエルはそう思うと頷いた。

「その条件飲むよ。」



タイミの屋敷から少し離れた場所。
そこの深い深い茂みに、ワレリーとケリスとフューレンがいた。

「本当にキリエルは屋敷に入ったのか?」

フューレンが聞くと、ケリスは頷く。

「屋敷の方からキリエルの匂いがします。」

ワレリーは考える仕草をしている。

「アイナさんを優先に救出しましょう。キリエルは人質を見ないと安心しませんでしょうから。」

「そうだな。」

フューレンも頷くと、ケリスは鼻を利かせる。

「地下の方にいるみたいです。」

「では案内をお願いしますねケリス。」

「はい。」

ケリスは三人を案内し、三人はケリスを追う。
すると道中、ケリスは足を止めた。

「人の匂いです。」

「人?」

フューレンは首を傾げる。
ケリスは焦った様子で続けた。

「人間にしては素早い動きです。こっちに追いつかれます。」

「隠れなさい。」

ワレリーの冷静な指示で、一同は茂みに隠れる。
静かに身を潜めていると、そこに見知った人がやってきた。

フロルだ。

フューレンは思わず目を剥いた。
フロルは周囲に警戒しながらも言う。

「出てこい。そこにいるのはわかっている。」

フロルはそう言って次の瞬間、ワレリー達が忍ぶ茂みの方を向いた。
ワレリーは眉を潜めると、ケリスと顔を合わせる。
ケリスとワレリーはアイコンタクトを取ると、ケリスは頷いた。

ケリスはフューレンの服を引っ張って言う。

「こちらへ。牧師様が彼の相手をするそうです。」

フューレンは驚いた様子だったが状況が状況な為、声は出さなかった。

ワレリーは懐からダガーを取り出すと、フロルに向けて投げた。
フロルはダガーを避けると、ナイフを構えて茂みを睨んだ。
それから飛んだダガーの方に一瞬だけ目を向けるフロル。
しかし茂みに注意を送ろうとしたその瞬間、再びフロルはダガーの方を見るのだ。

赤いダガー。

フロルはそれを見ると茂みを見た。

「このダガーは…!」

その言葉と同時に、ワレリーは茂みから出てきた。
フロルは驚きの表情で立ち尽くす。
ワレリーはそんなフロルの表情を見るとニッコリ。

「お久しぶりです、フロル。」





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