相剋のドゥエット

うてな

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06 忍び寄る悪魔

063 人殺しにはなりきれない。

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フロルとワレリーは対面する。
フロルは唖然とした表情をした後に呟いた。

「ワレリーお兄様…!生きてらっしゃいましたか…!」

ワレリーは微笑んで頷くと、両腕を広げた。

「お久しぶりですね、フロル。」

フロルはワレリーに近寄り、ワレリーの両肩を掴む。

「今までどこにいらしたのですか…!みんな心配していたんですよ!」

それを聞くと、ワレリーは眉を困らせながらもフロルの手を優しくも下ろさせた。
ワレリーの反応に、フロルは眉を潜める。

「本当は、家族に会わぬよう生涯をここで暮らすつもりでした。」

「なぜですか…?帰りましょうよ!我等の星に!」

「いいえ、私は帰りません。帰れない理由があります。」

「それは一体…」

フロルが聞くと、ワレリーは魔導書を見せた。
それを見たフロルは目を剥いた。
ワレリーは続ける。

「この世界で六年暮らしてきたあなたになら、これの意味がわかるでしょうか?」

フロルは呆然とした様子で言った。

「悪魔の魔導書…ですよね?ワレリーお兄様、まさか…!」

「ええ。…仲間を救いに来たのですよ。」

その言葉に更にフロルは驚いた様子を見せた。
フロルは言う。

「まさか、キリエル君の事ですか?」

「おや、よくお分かりですね。やはりあなたはタイミの下で働いているのですね。」

それを聞くと、フロルは急に真剣な表情になる。
フロルはワレリーを見て言った。

「それで、お兄様はなぜ悪魔と契約をしたのですか?」

「理由を話す義理はありません。」

ワレリーは突き放した言葉を言うと、フロルは眉を潜めた。

「悪魔は…人に迷惑をかけ、時には人を殺める生物です。お兄様がそんな生物の肩を持っているのですか?」

「ええ。」

「共に…人を殺す事もあるのですか…?」

フロルの力強い視線。
ワレリーは答えた。

「勿論です。私は、悪魔に魂を売ったのですから。」

「ガリーナさんは!?」

「ああ、生贄にしてやりましたよ?」

ワレリーの呆気なく答える様子に、フロルは歯を食い縛る。
ただ悔しそうに、ワレリーを睨みつけるのだ。

「生贄にって…!あんなに想っていた人なのに!?信じられません!」

「何を熱くなっているのですかフロル。昔は昔、今は今でしょう?」

フロルは絶望した様な顔をすると、拳を強く握り締めた。
それからゆっくりと話し始める。

「ワレリーお兄様は…俺達の様な傭兵一家の慣わしに従う事なく、人を愛し導く牧師となりました。
人を殺す事を拒み、剣を鞘に収めたはずのお兄様が…人を殺めるだなんて…!」

「決意とは、儚いものですね。」

ワレリーは嘲笑して言うと、フロルは言い放つ。

「あなたはガリーナさんと決めていたでしょう!『愛を知らない人に、愛を与えられない人に、愛を与えていきたい』と。
それを簡単に破り、その上愛する人を手にかけるだなんて…!」

ワレリーはフロルの後ろに歩いていくので、フロルはワレリーの方を見る。
ワレリーは投げたダガーを回収すると、フロルに向けた。

「私は目的の為ならば何だってするのですよ。さあ、お喋りはここまで。
私の大事な道具を一人、返してもらいましょうか。」

ワレリーはダガーを構えると、フロルは鼻で笑う。

「『返してもらいましょうか』って…もう数人仲間を連れてきているんでしょう?」

「おや、よくわかりましたね。」

「傭兵を舐めないでくださいよ。」

するとワレリーはフロルに襲いかかるので、フロルはナイフを出して戦いに応じた。
ダガーを受け止めると、フロルは言う。

「悪人面してますね…お兄様?」

フロルは笑っていた。
ワレリーは微笑みながらも言う。

「解せませんね、私よりも人を殺めている傭兵にそう言われるなど。」

「それもそうです。」

フロルはそう言って、ダガーを弾き返した。
ワレリーは弾かれてもフラつく事なく、次の攻撃に入る。
再びフロルと刃を交えた。

「最後に戦った日と違って、弾かれてもフラつきませんね。少しは鍛えたんですか?」

「ええ、お陰様で。」

互いに刃を向け、刃を避け続ける。
その途中で、ワレリーは言った。

「人殺しをしている私に、失望しましたか?」

その問いに対し、フロルは鼻で笑った。

「ええ、とっても。
俺達家族がどんなに傭兵に誘っても殺人をしなかったお兄様が、悪魔相手だとコロッと殺人をする辺りに。
とは言え、失望というより悔しいに近いです。」

「おやおや、余裕ですねぇ。」

「そりゃそうですよ。」

フロルは余裕そうに答えると、次の瞬間ワレリーを鋭い視線で見た。

「ワレリーお兄様の目は、人殺しの目をしていませんからね。…殺しを恐れている、とも思えます。」

その言葉に、ワレリーは反応を見せた。
ワレリーは一度フロルから距離を置くと、フロルは微笑む。

「良かったです。ワレリーお兄様、やっぱり人を殺すのを怖がってますね。
…それとも、相手が家族だからですか?」

ワレリーは黙り込んでしまうと、フロルは続けた。

「本当に何が目的で悪魔に命なんて売ったんですか?何か深い訳があるってなら、解決するのに俺も一役買いますよ?」

「あなたに言って解決する様な事なら、今頃私一人で解決していますよ?」

「どうしても言わないつもりなら仕方がありません。」

フロルはそう言って、先程とは違う雰囲気を纏う。
ワレリーはその様子に警戒し始めた。

「無理矢理吐かせてあげますよ、ワレリーお兄様。」



フューレンとケリスは、裏口を発見してそこから侵入していた。
裏口は屋敷内と言うより、地下に向かう道しかない。

「本館には行けないか。」

フューレンが言うと、ケリスは言う。

「アイナさんの匂いがこの先からします!」

「んじゃ、先にアイナを助けるか。」

「はい!」

そして二人は地下道を進んでいると、フューレンは妙な違和感を感じる。

「タイミの屋敷なのに、見張り一人もいないって変だな。」

「確かに、悪魔使いの屋敷なら結界か見張り、どちらか置くのが普通かもしれません。」

二人は妙な胸騒ぎを感じながらも奥へ足を進めていると、牢屋のある部屋まで呆気なく着いた。
フューレンは一つ一つ牢屋を見ていると、ケリスは言った。

「あそこにいます!」

フューレンは明かりをつけてその場所に向かうと、そこには結界が貼られた牢屋に閉じ込められたアイナが。
アイナはフューレンに気づいて驚いた顔。

「フューレン!」

「アイナ、今助ける。」

フューレンは結界を見て考え込む。

(これは高度な結界。魔力でできた結界だから、読むのに時間がかかりそうだ。)

しかし、ケリスは目を丸くして言った。

「あ、これならケリス解けます!」

フューレンはそれを見て感心の目。

(そっか、強大な魔力を持ったケリスなら、こんな結界を破るのは朝飯前か。)

ケリスは結界に手を当てて呆気なく結界を壊してしまうと、アイナは牢屋を自らの怪力でこじ開けた。
ケリスはその怪力に驚き、フューレンは冷や汗。
アイナは笑顔で言った。

「ありがとうフューレン!それに…ワンちゃんも。」

「き…狐です…」

ケリスは涙目で言ったが、アイナの耳には聞こえなかった様だ。
そしてアイナは気合の入った表情で言った。

「で、フューレン達がここに来たって事は、キュースも来たって事よね?」

「来たというか、二人を助けに来たんだよ。」

アイナはそれを聞くと、真摯な表情に。
それから頷いた。

「よし!キュースを助けに行こう!三人で!」

「おう。」

「わかりました…!」

アイナが先頭を切り、アイナは牢屋室から出ようと扉に手をかける。

が、

「あれ、開かない。」

アイナは目を丸くして言った。

「え?」

フューレンが言う。
続いてケリスはその鉄の扉を見つめて涙目に。

「えええ…ケリス達閉じ込められちゃったんですか…!?
この扉、とっても頑丈で有名な鉄で出来てますよ?
ケリスの技でこじ開けるにしても、この部屋が丸ごと吹っ飛ぶくらいの力がないと…!」

その言葉にフューレンは微妙な反応。
そしてフューレンは考えた。

(どうすればいい…このままじゃ、キリエルを助けに行けない…)





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