相剋のドゥエット

うてな

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08 天使がやってくる

087 祈りは神への信託ではない。

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一方、フューレンの方では。
力が戻ったキリエルは、フューレンに誘われて共鳴の練習に付き合わされた。
教会の裏での練習だった。
以前フェオドラとフューレンが力をぶつけた時に合体した事を思い出し、キリエルの魔力でもできるかと実践をしていたのだ。

互いの力がぶつかり合う。
神力と魔力は反発し合い、抗争を続ける。
その度にフューレンとキリエルの体に負荷がかかるが、それでも続けた。

少し経ち、合体する見込みがないと知ると二人は一度力の放出をやめる。
キリエルはその場で尻餅。

「あー疲れたー!やっぱりケリスの言う通り、僕の魔力じゃダメなんだね。」

「そうみたいだな。でもなんで…?」

フューレンの問いにキリエルは考えた顔。
しかし何もわからないのか溜息をついた。

「わからないよー。フェオドラのは特殊な魔力だかなんだか知らないけど、特殊な魔力って一体何って感じー。」

「それもそうだよな。キリエルを召喚はできるのに、共鳴ができないっていうのも不思議だよな。」

キリエルは休憩していたが、フューレンはそのまま教会へと向かう。
キリエルは言った。

「フェオドラに共鳴の練習付き合わせるのー?」

「一応本人も面白がってるみたいだしな。こっちもこっちでヴァレリカ対策にフェオドラを一役借りたいし。」

それを聞いて、キリエルは無愛想な顔。

「それって、フェオドラが危険にならない?」

「どういう意味だ?」

フューレンの質問に、キリエルは俯いて言う。

「だってヴァレリカ対策って事は、ヴァレリカと衝突するかもしれないって事じゃん。
よく思い出してみてよ、ヴァレリカの事をさ。」

フューレンはそう言われると、ヴァレリカの事を思い出す。

初めて出会った時はフレノアの保育園まで、ワレリーとフレノアに弁当を届けに行った日だった。
フレノアとキリエルが頑張って戦ってくれたが、歯が立たなかった。

次に会った時はアシュターとフェオドラを連れて、役場まで共鳴の力を持った者を検索した時。
あの時は偶然やってきたフロルが強いお陰で、その上不意を突いた為に撃退できたものだった。

そして次は…、アシュターが殺された日の事。

それを思い出すと、フューレンの表情は優れなくなる。

「そうだな…。アシュターの惨敗っぷりを見ると…」

「それだけじゃないよ。フェオドラだって辛いはず。
その上、仲間を殺した天使が目の前に現れたら…!」

「気が気でなくなるだろうな…」

それに対して、キリエルは深く頷いた。
そして真摯な表情を見せる。

「僕はアシュターとはあまり関わった事なかったから、あまり実感沸かないけどさ。
でもそうじゃない人は、沢山沢山悔しくて憎くて苦しい思いを押さえつけてるはずなんだ。
僕だってもしフューレンがヴァレリカなんかに殺されたら…!嫌だよ!ヴァレリカが憎くなっちゃう!」

あまりに真面目に答えるキリエルを見て、目を丸くしてしまうフューレン。
フューレンは首を傾げて言った。

「そうなったら、地上でベナギルクァートでもするのか?」

ベナギルクァート とは、キリエルの使う氷魔法で一番強いもの。
アシュターが亡くなった日も、人のいない空でこれを放ってヴァレリカを撃退した。
一方その魔法は冷気が強すぎる為か、周囲一帯に暫く雪が降り続いたという。

キリエルは少し黙ってから答える。

「するかもしんない。
…だって、周りとか考えるより先に……相手を倒したいって思っちゃうもん。」

フューレンはそれを聞いて、キリエルの伝えたい事がよくわかった。
キリエルはもし大事な人を殺されてしまったら、その仇を真っ先に倒す事を考えてしまう。
それはきっとフェオドラも同じと考えていて、そう考えたらフェオドラの力が暴走するのは確実。
暴走すれば相手を倒せるどころか、周囲の人々までも傷つけてしまうかもしれないのだ。
キリエルは自分の力で周囲を傷つけてしまったという過去を背負っているせいか、そういう話に人一倍敏感になっている様子。

フューレンはそういった事を汲み取ってから言う。

「そうか。じゃ、フェオドラにもしっかり話を聞かないとな。」

「話…?」

「そう。ヴァレリカの事をどう思っているだとかだ。」

するとキリエルは胸に手を当てたが、顔はまだ不穏。

「そう…だね。」



教会内では、ワレリーとフェオドラが今までの罪を見返していた。
フェオドラは『ヴァレリカと衝突』した旨の内容を見る度に不機嫌な顔を見せていた。

「おや、この日もヴァレリカと衝突があったのですね。命辛々逃げましたっけ…」

ワレリーの言葉に、フェオドラは無愛想な顔をして言う。

「ヴァレリカ嫌い。」

「急にどうしたのですか?」

ワレリーの問いに、フェオドラは怒った顔をして言った。

「だってアシュターを殺したんだもん!酷い天使だもん!」

それを聞いたワレリーは、一度書から目を離す。

「そうですね…。アシュターの事は残念でしたね。」

「私やっぱりアシュターの仇取る!共鳴して、カオスリートってのになる!」

フェオドラの言葉に、ワレリーは少し間を空けて言う。

「確かにヴァレリカは残忍な天使ですね。」

「うん!」

「…しかしフェオドラ、単なる恨みで仇討ちするのは良くありませんよ。」

「どうして!?」

「恨みだけで力を得ようものなら…これから先、幾度となく誰かを恨み、その度に憎しみを重ねる事になります。
憎しみを糧に生きてきた者が、幸福になっている所を私は見た事がありません。」

するとフェオドラは膨れる。

「不幸になる意味がわからない。恨んで仇を取った所で不幸にならないもん!」

「そうですか?
じゃあ質問しますが、恨みを抱く時、フェオドラはいい気分はしますか?」

「しない!」

「ですよね。
ではもう一つ質問です。フェオドラは以前魔術科学園の大会で優勝しましたよね。
皆さんに賞賛されて、どう感じましたか?」

それを聞くと、フェオドラは真っ先に目を輝かせた。

「楽しかった!!嬉しい!もっと褒めて欲しかった!!」

「ですよね。
皆さんと戦うのもきっと楽しかったでしょう。
何よりも大会で優勝すれば、皆さんに褒めてもらえる事をフェオドラは知っていますよね?」

「うん。それが何?」

フェオドラは首を傾げた。
ワレリーは続ける。

「恨みも同じです。
一度恨みを晴らしてしまえば、恨みはそういった方法で解消できると知ります。」

フェオドラはそれを黙って聞いていた。
ワレリーは言った。

「恨みを抱く度、最悪な気分に苛まれます。
それを解消できるなら…と、罪を重ね続ける可能性もあります。
私はそれを危惧しているのです。」

フェオドラは目を丸くして聞いていた。
ワレリーはフェオドラの頭を優しく撫でる。

「私は、フェオドラがそういう人になってしまったら悲しいです。」

フェオドラは呆然と聞いていたが、やがてワレリーから目を逸した。

「でも…もうすぐフェオドラ達は処刑されるもん。
将来なんて、ないもん。」

フェオドラの言葉に、ワレリーは驚いたのか目を丸くした。

「処刑…フェオドラ、意味はわかって使っているのですか?」

フェオドラは頷いた。

「死んじゃうんでしょ。知ってる…だって、フェオドラも沢山知らない人を殺してきたもん。
きっと殺されて当然…だもん。」

小さいながらに肝の据わったフェオドラを見て、ワレリーは驚いたまま。
しかしフェオドラは、膨れたまま微かに目を潤めていた。
ワレリーは眉を困らせたが、やがてフェオドラに言った。

「フェオドラは死にませんよ。」

「え…?」

フェオドラはワレリーの顔を見ると、ワレリーは微笑む。

「絶対に死なせませんから。」

フェオドラはボーッとワレリーを見ていた。

「パーパ…何か考えてる?」

「私はフェオドラや教会の皆さんが長生きする事だけを考えていますから…。」

ワレリーはそう言ったまま、何も答えない。
フェオドラは思わず無愛想な顔をワレリーに見せる。
するとワレリーは穏やかに目を閉じたまま、両手を組んだ。
まるで、願うように。
フェオドラは再び目を丸くしてしまう。

「私が教会を束ねる悪魔使いである事、改めて神に感謝せねばなりませんね…。」

「か…神にパーパが祈ってる…!自分の事を神だと思ってるパーパが…!」

フェオドラは驚いていた。
ワレリーはその様子にクスリと笑った。

「祈りはいつでもするものです。…神にではなく、実感を得る為に。」

それを聞いたフェオドラは驚いた様子のままだったが、やがて書に向かって言う。

「続き、見よ。」

「ええ。」

ワレリーはそう答え、フェオドラと一緒に罪の見返しを続けた。





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