相剋のドゥエット

うてな

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08 天使がやってくる

086 小さな傲慢。

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襲撃の悪魔、それは賞金首制度の推進派に捕まった無力な人々を救った悪魔の集団。
そしてその集団のトップがワレリーと知った、廃止派の者達。
オリガは驚いた様子で言う。

「う、うそ…お兄様が…!?」

ワレリーは黙ったまま何も答えない。
するとオリガは言う。

「こ、答えて!」

ワレリーは急に微笑む。

「そうだと言ったら、そこを通してくれますか?」

オリガは躊躇った顔を見せたが、やがて言った。

「本当だったらね!」

「事実ですよ。悪魔全員を呼びましょうか?」

ワレリーの言葉に、オリガは呆然。
それからオリガは首を横に振った。

「いいわよ、そこまでしなくて。
でも、なんでそんな事を…?」

オリガの問いに、ワレリーは溜息。

「丁度そこに人がいただけです。」

「嘘よ!いつも奴隷や子供を捕獲して売り飛ばしてるアジトばかり狙っているって聞いているわ!
偶然にしてはおかしい!」

「本当に偶然ですよ。」

ワレリーはそう言い、役場の方へ再び歩く。
役場前を占拠していた賞金首制度廃止派の一同は、ワレリーを呆然と見つめながらも道を開けてくれる。
ワレリーはその間を通り、役場の前へと来た。

「ちょっと待って!」

とオリガは言ったが、ワレリーは言う。

「事実でしたら、通してくれるという約束でしょう。」

オリガは言葉を詰まらせると、ワレリーはそのまま役場へ向かった。
廃止派は、思わず残っていたモルビスの方へ視線を向ける。
モルビスは愛想笑いをし、それからフェオドラを盾にする。
言わずもがな、フェオドラはモルビスより遥かに小さいのでモルビスは隠れきれていない。
フェオドラは言った。

「隠れてないよ」

「わかってるよ…。でもこんな大人数に見られるって、なんか恥ずかしいだろ。」

「別に悪いことしたわけじゃないじゃん!」

「そうじゃなくても恥ずかしいもんは恥ずかしいんだ。」

そんな緩い会話に、廃止派の人は警戒を解いたのかモルビス達の方へ寄ってくる。
モルビスは驚くと、一人の男性がやってくる。
男性はモルビスに微笑みながら、頭を下げた。

「えっと…実は悪魔さん達のお陰で、妻と娘が助かったんです。
ずっと、ずっとお礼が言いたくて…!」

モルビスは目を丸くすると、両手を振って言う。

「いえいえ、俺なんか殆ど襲撃経験ないんです。多分俺以外の誰かが…」

「それでも!悪魔さん達に助けられた人は大勢いるはずです!!」

モルビスは頭を下げる男性に慌てていると、フェオドラはモルビスの服を引っ張る。
モルビスがフェオドラに気づくと、フェオドラは膨れた様子で言った。

「なんでフェオドラはお礼言われないの?」

「え?…子供だから?」

「子供じゃないもん!」

フェオドラはそう言うと、男性に向かって言う。

「フェオドラも悪い人と戦ったもん!」

すると一同は目を丸くした。
男性は言う。

「お嬢ちゃんが?」

「うん!」

フェオドラは胸を張っていた。
すると思わず男性はクスリと笑ってしまう。
それに反応するフェオドラ。
男性は言った。

「そうか。ありがとう。」

半分信じていない様子。
だがフェオドラがまだ子供な為か、そういう芝居をしてくれているようだ。
フェオドラはその芝居を信じているのか、笑顔で言う。

「うん!感謝たくさんしてね!」

それを見たモルビスは呆れ顔。

「おいおい…なんかそれは違うだろ。」

それを聞いた男性はお淑やかに笑っていた。
周囲で見ていた廃止派の人々も、子供のフェオドラの傲慢だと思うと微笑ましいものなのだ。
ちなみにオリガは俯いて迷った顔。
オリガは考えていた。

(お兄様は確かに悪魔に魂を売った…。でも、その力を人助けに使っているって事…?
お兄様は悪魔に魂を飲まれていないって事?
でも飲まれていなかったらなぜ、私達から離れようとするのかしら…)

オリガは考えてもわからない為、思わず頭を抱えてしまった。
そこに、ワレリーが役場から帰ってくる。
オリガはワレリーを見ると言った。

「お兄様教えて!
なぜお兄様は善行をしているのにも関わらず、悪魔に魂を飲まれていないのに、私達を避けるの!?」

ワレリーはそう言われると、首を傾げて言った。

「私のしている事は、本当に善行ですか?」

「は…?」

オリガが言うと、ワレリーは続ける。

「例え罪を犯した人間を殺したとしても、私達も人間を殺した罪人になる事は変わり無いでしょう。」

オリガは言葉を詰まらせると、モルビスは目を丸くして言った。

「そう言えば牧師様の兄弟は殺し屋みたいな人達なんですよね?
天使の裁判に引っ張られないんですか?」

その質問にワレリーは答える。

「自分の意思で人を殺している者と、誰かに命令を受けて人を殺す者では罪の重さが違うのはご存知ですか?
彼等は雇われて人を殺しているので、罪には問われないのです。
例え、非情に人を殺してきたとしても。」

それを聞いたモルビスは納得。

「でもそれじゃ、本当に非情になって殺している悪い人間を裁けないですよね?」

「そうなりますね。仕方のない事です。
魔術が発達したこの世界では、催眠術も容易にかけられてしまいます。
そういった人の為の抜け道です。」

「そんな抜け道必要ですかね?」

「必要です。
彼等が見たいのは罪の擦り付け合い。人間としての度量をそれで見るのですよ。
裁判を円滑に進める為の、手っ取り早い策です。」

「うわ…作った奴も性格悪いですね。」

それを聞いたワレリーはクスリと笑った。
それからワレリーはモルビスとフェオドラに言う。

「さ、帰りましょう。」

「うん!」

とフェオドラ。
モルビスは周囲の視線を気にしながら言う。

「はい。」

すると廃止派の一同が言う。

「あの、我々の親族を助けくれたお礼を是非…」

しかしワレリーは言った。

「必要ありません。私達も忙しいのです。」

そう言われると、廃止派の人々は潔く諦めた。

「わかりました…」

そしてワレリーは何も言わずに帰る。
オリガはワレリーの後ろ姿を黙って眺めていた。

オリガはやがて、廃止派の人々に言った。

「ねえ、聞いて欲しい事があるの。」



一方、ワレリーの方では。
ワレリーとモルビスとフェオドラは、教会に向かって森を歩いている。
モルビスは言う。

「忙しいって、何かするんですか?」

「いいえ。そうでも言わないと諦めないでしょう?」

「確かにそうですけど…」

モルビスの表情からは、お礼が欲しそうな心が伝わる。
しかしモルビスはそれを耐え、ワレリーの手にある証拠資料を見て言う。

「そんなもの、何に使うんですか?
今までしてきた罪を振り返るって、まさか本当にするんじゃないですよね?」

「本当にしますよ。」

ワレリーの言葉に、モルビスは驚いた顔をする。
するとワレリーは笑った。

「ただし、私一人でです。」

それを聞いたモルビスは安心。

「そ、そうですか…。」

するとフェオドラはワレリーの傍まで来て言う。

「じゃあフェオドラも一緒に反省する!」

ワレリーは思わず微笑んだ。

「おや、では一緒に見ますか?」

「うん!」

フェオドラは笑顔で答えた。
モルビスは微妙な反応をしつつ言う。

「どうせすぐ飽きてどっか行くって…」

小声で言ったので、二人には聞こえなかったとさ。





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