相剋のドゥエット

うてな

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08 天使がやってくる

085 家族か悪魔か。

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ワレリーはフューレン達と別れた後、森の中を歩いていた。
そしてワレリーをヒッソリと追いかける、モルビスとフェオドラの姿。
二人は一つの木からこっそり顔を覗かせており、同じような顔をしていた。
体格の大きいモルビスと小さいフェオドラでは、同じポーズをしてもお互いが邪魔になる事はない。
これがフューレンとキリエルだったら、今頃別々の木へ移動して覗いている所だろう。

「パーパ、どこに行くんだろう。」

フェオドラが小声で言うと、モルビスは顎に手を当てて推理を始める。

「これは名推理屋、モルビス探偵の出番だな…」

なぜかかっこつけ始めたモルビス。
フェオドラは目を丸くしたまま答えた。

「名探偵じゃなくて?」

「いいや、名推理屋だ…」

モルビスは若干冷や汗を浮かべていた。
これはきっと、名探偵という単語を思い浮かばなかった恥ずかしさからだろう。
フェオドラは単純なのか、それを聞いて目を輝かせた。
モルビスは一度咳払いをすると、推理を始めた。

「これはどこかに向かっている。」

その言葉に、フェオドラは若干頬を膨らませる。

「見たらわかるよ!」

モルビスは怯まずに続けた。

「しかも一人ひっそりと出ている辺り、人には知られたくない事だろう…」

その推理を聞くと、フェオドラは目を輝かせる。

「確かに!」

「俺の名推理屋としての経験によれば…これはかなりの確率で愛人との密会となる。」

すると、フェオドラは目を輝かせたまま言った。

「モルビスってめいすいりやしてたの!?沢山!」

「いや、今回が初めてだけど…」

モルビスがそう言うと、フェオドラは不貞腐れた顔。

「じゃあ経験も当てにならない!」

「そう…」

モルビスは遂に弱ってしまう。
フェオドラは膨れたまま、ワレリーの様子を見て言った。

「パーパは大体、隠れて出かける時はみんなにサプライズしたい時なの。」

「サプライズ?」

「うん。それでこの道は…いつもパーパが役場に行く時に通る道!
つまり…役場の方に用があるのかも!」

フェオドラの推理に、今度はモルビスが目を輝かせ始めた。

「流石フェオドラ名探偵…!」

そう言われると、フェオドラは得意気に胸を張った。

「そうです!名探偵です!」

「流石六年、牧師様の背中で過ごしていただけある!」

そう。
フェオドラは赤子の姿だった為、ワレリーと行動は大抵共にしていた。
だからワレリーの行動は大抵は把握済みである。

するとフェオドラの予想通り、役場の前まで来たワレリー。
しかし、ワレリーと二人は異変に気づく。

役場の前には、革命派と思わしき人々が大勢立っていた。
拘束具や若干の武器を持ち、役場に来る者を見張っている。
ワレリーが役場前まで来ると、革命派の一人が道を塞ぐ。

「何用だ。まさか、賞金の受け取りに来たとかではないだろうな。」

「違いますよ。確かに私には賞金の受取をした過去はありますが…」

すると革命派に囲まれるワレリー。
フェオドラはワレリーの方へ向かおうとしたが、それを冷静にもモルビスが止める。

「待て、牧師様が何の策もなしに飛び込む人には思えない。」

「うぅ…」

フェオドラは渋々見ていると、ワレリーは続けた。

「天使の裁判が始まっている事は、皆さんご存知でしょう?
役場にはそんな罪人達の罪が沢山詰まっています。」

「まさか証拠隠滅か?馬鹿馬鹿しい、世界中の役場にお前の罪が記されているのだぞ。」

「証拠隠滅ではありませんよ。
…ただ、その罪の証を受け取りに来ただけです。」

一同は驚いた顔。
モルビスも驚いていた。
フェオドラは首を傾げる。

「どういう事?」

するとモルビスは言った。

「今まで賞金首を狩ってきた、その状況や日付やら…なんでも記されている個人書類を、牧師様は受け取ろうとしているんだ。
何に使うのかは知らないが…。大抵の人は、自分の行動や狩った賞金首を自慢する為に使っているが…
天使の裁判となれば、それが罪の証拠になっちまうからなぁ…。」

フェオドラはそれでも目を丸くしていると、革命派の一人がワレリーに言った。

「そんなものを所持してどうする気だ!」

「自らの罪…私の仲間が犯した罪を、振り返ろうと思いまして…。」

「は?」

革命派の人が眉を潜めてしまうと、ワレリーは言う。

「罪を犯した者には極刑を。
ならば最期くらい、過去を懐かしんでもよろしいではないですか。」

革命派の人々がそれを聞いて大人しくなると、ワレリーは頷いた。
しかし、別の方向からこんな声が聞こえてきた。

「騙されちゃ駄目よ。この人は悪魔に魂を売っているのだから。」

その言葉に目を向けると、そこにはなんとワレリーの妹であるオリガが。
オリガはワレリーを睨んでいた。

「お兄様、何を考えているの?」

「おや、今言った通りです。」

するとオリガは悔しそうな顔をする。

「自分が処刑されるって知っても尚…家族より悪魔を選ぶお兄様の神経がわからないわッ!
悪魔に惑わされないでお兄様!」

「おやおや、これだから兄離れができない妹は困りますね。」

「うるさい!」

するとオリガはナイフを取り出し、ワレリーに襲いかかった。
ワレリーは直ぐ様ダガーを取り出し、それを受け止めた。

「不意打ちですか。」

「そんなに悪魔が大事なの!?
どうしちゃったのよお兄様!お兄様は心優しくて素敵な方だったじゃない…!」

「そうは思いませんが。」

ワレリーはそう言うと、オリガが持つナイフを弾く。
オリガは少し距離を置くと、再び襲いかかってきた。
ワレリーは勿論それを受け止める。

「お兄様もう一度だけ言うわ!!悪魔を捨ててこっちに戻ってきなさい!」

オリガの言葉に、ワレリーは眉を困らて溜息。
オリガはその溜息にワレリーを睨みつけると、ワレリーは言った。

「なぜですか?私は貴方達を家族だと思った事、一度もないのですが。」

その言葉が頭に来たのか、オリガは雄叫びを上げながらワレリーのダガーを弾いた。
その威力に、若干感心しているワレリー。
オリガは息を切らせてワレリーを睨むと、ナイフをその場に捨てた。

「許さない…!」

オリガはそう言うと、背負っていたバズーカをワレリーに向けた。
それを見た革命派の人々は焦る。

「オリガさん落ち着いて!革命派は出来る限りの武力は使わないとの約束でしょう!?」

しかしオリガはワレリーを睨んでいた。

「一発入れて目を覚まさせてあげる!お兄様ッ!」

そしてオリガは発砲するので、モルビスは慌ててワレリーを庇いに走った。

「ガグド!」

モルビスはそう唱え、ワレリーの前に岩が出現。
バズーカの威力は大きいのか、岩は楽に粉砕。
ワレリーは衝撃波で飛ばされてしまった。

「牧師様!!」

「パーパ!」

モルビスとフェオドラはワレリーの方へ向かうと、ワレリーは二人を見て驚いた顔。

「モルビスにフェオドラ、なぜここに…!」

「怪しすぎてついてきちゃったんですよ!」

モルビスの言葉に、ワレリーは頭を軽く抱えて溜息。
オリガはフェオドラを見ると、眉を潜めて一歩後退。

「クッ…」

オリガはそう言って葛藤した。

「ガリーナさんに似ているだけの悪魔…!今すぐお兄様を開放しないと、殺すわよ!!」

するとフェオドラは真摯な表情をして、オリガに向かって言う。

「マーマの子供だもん!似てるのは当たり前だもん!」

「うるさい悪魔ッ!」

オリガはそう言い放つと、ワレリーはフェオドラを庇う。
それからワレリーはモルビスにフェオドラを預けた。

「逃げなさい。オリガの相手は私がします。」

「ですが…!」

モルビスが言うと、ワレリーは凄い剣幕で言った。

「これは命令です!」

その言葉にモルビスは発言をやめ、静かに頷いた。
そしてフェオドラを抱えて走り出そうとした。

「モルビスやめて!パーパを助ける!」

「でも…!」

モルビスが言うと、革命派の中からこんな声が聞こえてくる。

「この悪魔、以前私達を賞金首の一味から救ってくださった方だわ!」

その言葉に、革命派の人々がざわざわし始めた。
オリガも驚いた様子で、モルビスを見る。
モルビスは目を丸くすると、思い出した顔で言った。

「あ、そう言えば革命派って、牧師様達が救った人々から結成されたって話だもんな!」

革命派の人々は、ワレリーを見て言う。

「牧師様…?つまり、あの【襲撃の悪魔】を連れている悪魔使いってのは…!」

モルビスは目を輝かせて言った。

「そう!牧師様なんだ!」

それを聞くと革命派の人々が、オリガも含め驚いた。

『エエエッ!?』





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