相剋のドゥエット

うてな

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09 動き出す天使

091 裁判が始まった。

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魔術科学園の門を通ると、門から入口までの道に柵が新たに建てられていた。
その柵の外には、罪人を見に来た人々の姿が。
柵いっぱいから人の視線を恐怖に感じるキリエル。
フューレンは言った。

「凄い観客だな…。」

「睨んでる人もいる…!怖い…!」

キリエルが言うと、ケリスは平気そうな顔で言う。

「大丈夫です、この人達はいつも罪人達を見に来てる人達みたいです。
罪人が嫌いなので、ケリス達が特別大嫌いって訳ではないですよ。」

「だとしても嬉しくないよぉ!」

キリエルはそう言うのだった。
モルビスは鼻で笑う。

「いつも罪人を見てるって?じゃあこの人達は全員暇人って事か?」

「わざわざ暇を作った、と言った方が正解ではないでしょうか。」

ケリスがそう言うと、モルビスは納得。
ワレリーは話に混ざる事もなく、堂々と道を歩いた。
同時にフューレンも歩き出す。

「ぼ、牧師様!フューレン!」

キリエルはそう言って、真っ先に追いかける。
他のみんなも、キリエルに続いて道を歩いた。

道を歩くと、柵の外から罵倒やら何やら聞こえてくる。
キリエルは怖がりながらも、フューレンの背中にくっつく。
フューレンは眉を潜めた。

「おい、熱苦しい。」

「だって…!」

フェオドラは柵の外の人々に向かって、舌を出して挑発。
罵倒されて、怒っている様子だった。

「べ~!っだ!」

モルビスも柵の外の人達に、余裕で挑発的な笑みを見せる。
それを見ていたスピムは呆れていた。

「二人してやめなさいよ…」

入口前に着くと、ワレリーは扉を開く。
扉の先には、やはり小さな柵があった。
裁判を行う部屋へ一直線に柵が道を描いているのだ。
その上学園の電気はついておらず、廊下は窓から差し込む明かりでどうにか見えていた。

魔術科学園はとっても広い学園であるが、その柵があるだけでとても狭く感じてしまった。
フューレンは静かな学園を見て思う。

(誰もいない…。
なんだか落ち着かないな、いつも人で賑わってた学園が。)

「あらあら、案内人の一人や二人、置いてくれてもいいくらいなんですがね。」

ワレリーが言うと、フレノアは言った。

「柵には結界があるし、絶対に出られないように施されてる…。
案内人がいなくても着けるようにって、随分と親切設計ねぇ。」

するとケリスは、そこらを飛び回っていたフェオドラの手を掴む。

「ここからは歩きましょうフェオドラ。
一気にここから結界の力が強くなります。当たったらおおけがしてしまいますよ。」

「はぁい。」

フェオドラは大人しく飛ぶのをやめると、ケリスと手を繋いだ。
そして一同は、長い長い階段を上り始めた。
登っている間、みんなは一言も会話を交わさない。
それもそのはず、一番先頭を歩くワレリーがそういう雰囲気ではなかったからだ。
いつもにこやかにいるワレリーも、今だけは真摯な表情で歩いている。

遂に階段を上り終え、目的の部屋の前へたどり着いた。

「入りますよ。」

『はい。』

悪魔達は返事をした。
フューレンも黙って頷くと、ワレリーは扉を開いた。

暗い廊下に対し、部屋は明るくて一同は目を細めてしまう。
部屋が明るすぎる訳ではないが、先程まで暗い道を歩いていた一同にとっては眩しすぎた。

天使が立ち並び、天使が裁判長を務めるこの裁判の部屋。

入った瞬間、一同は先頭から両腕を魔法で拘束される。
拘束をするのは、魔術科学園の教師の仕事。
キリエルはキョロキョロと広い部屋を見回していた。
するとキリエルは目的のものを見つけたのか、目を丸くした。

キリエルの見る先には、ノルスがいた。
ノルスは裁判長の近くで立っていた。
そして、鳥の召喚獣であるレグルを腕に乗せてこちらを眺めている。

「お父さん…」

キリエルが呟くと、キリエルは他の教師に背中を押されて席に連れて行かれた。

ノルスは険しい表情でキリエルを見守っていた。
ノルスの隣にはムニーバもいて、ムニーバは眉を困らせていた。

「ああ、キリエルくんが…。可哀想に。」

しかし、ノルスは何も答えない。
そんなノルスを見て、ムニーバは眉を困らせたまま。

「せめてうちの生徒だけは免れて欲しい…」

そう呟いた。

横一列に長く伸びる机、そこに並ぶ椅子。
一同はその椅子にそれぞれ座らされ、正面の裁判長がよく見えた。
どうやら一斉に裁判が進行される様だ。

キリエルは落ち着かず、
モルビスは天井の高級そうなシャンデリアに興味を示し、
フェオドラは足をバタバタさせて暇そうにし、
フレノアは机に肘をついて退屈そうにし、
スピムは無愛想な顔で裁判長を睨んでいた。
ワレリーは真摯な様子であり、
ケリスはそんな一同をキョロキョロと見ていた。

そしてフューレンは、堂々とした様子ながらも考えていた。

(ワレリーは一体何を考えているのか、とうとう聞けなかったな。
本当にこの裁判、俺達は生還する事ができるのか…?)

すると、天使の裁判長はガベルを叩いた。
ガベルの音が鳴り響くと、一同は顔を上げた。

「これから、天使の裁判を始める。」

透明だが、よく通る声。
その声と共に、裁判は始まった。





ここはフロルの家。
フロルの家にて、オリガは何かを作っていた。
大きな旗だ。

そこに、ジェミヤンが家に帰ってきた。

「大変だオリガ姉様!今、ワレリー兄様の裁判が始まっているそうなのです!」

「え…!?」

オリガは驚いた様子で目を剥いた。
オリガは旗を作っていたが、中断して旗を抱えた。

「じゃあ行くわよジェミヤン!」

「え?それは?」

ジェミヤンが言うと、オリガは言った。

「お兄様を助けるのよ!決まっているでしょ!?」

「助けたら俺達が処刑の対象になる!せっかく裁判を免れた身なのに…!」

「邪魔をするんじゃないわ、刑を軽くするのよ!」

オリガの訴えに、ジェミヤンは首を傾げた。

「刑を軽く…?どうやって?」

「ワレリーお兄様は確かに人殺しをしてきたわ。
でも、それって本当に自分の欲の為だけかしら?それとも快楽の為かしら?」

「さあ、俺には…」

ジェミヤンが言うと、オリガは言った。

「ワレリーお兄様は賞金首を殺しつつも、囚われていた弱き人々を救っていたのよ!
きっと裁判官は、そんな情報知らない。だから私達が伝えるのよ!」

「な、なるほど!じゃあ俺も手伝います!」

ジェミヤンが真剣な顔で返事をすると、オリガは同じ顔で頷いた。

「ありがとう。」

そこに、ヤーナも現れた。

「ヤーナ、手伝う!」

更にボリスも。

「じゃあ僕も~」

「ヤーナ、ボリス…」

オリガが言うと、台所からお茶を持ってくるキーラとアンゲリーナ。

「あら、お茶をしている暇はないみたい。
お兄様を助けに行かないと。ね、アンゲリーナ。」

「うん、キーラお姉さま。」

「キーラ姉様にアンゲリーナ、ありがとう。」

とお礼を言うジェミヤン。
アンゲリーナは笑顔で頷いた。
キーラは優しく微笑むだけ。

「んで、フロル兄様は?」

ボリスが聞くと、オリガは眉を潜める。

「さあ?」

「買い物では?俺達は急いでワレリー兄様の元へ行きましょう。」

とジェミヤン。
ジェミヤンの提案に、他の兄弟は頷くのであった。
そして向かう準備を整え、ワレリーの兄弟は魔術科学園へと出発した。





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