相剋のドゥエット

うてな

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09 動き出す天使

092 死刑判決。

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裁判が始まり、天使によってフューレン達の罪をそれぞれ読み上げる。

言わずもがな、フューレンの罪は殆どない。
キリエルもそうだが、他の者がかなり多いのだ。
ケリスも人殺しをしない悪魔ではあるが、それでも大昔に犯した罪を問われている様子。

思った通り、キリエルとフューレン以外は皆極刑だった。
そんな事、わかりきっていた事である。
極刑を言い渡された者達は俯いていたが、そこでノルスが発言をした。

「一つよろしいですか。」

その声に真っ先に反応したのは、勿論息子のキリエル。
キリエルは驚いた顔で見ていると、ノルスは続けた。

「極刑を言い渡された彼等は悪魔使いに付き従う悪魔達。
どんなに人殺しをする気でなくとも、悪魔使いがそれを望めば、本人が望まずともそうしてしまう。
悪魔にはそういった本能があるはずです。
報告にある通り、彼等の行動はいつも悪魔使いが指示しているとの事です。
なので一概に全員『極刑』というのは、あまり公平な判断ではないかと。」

それを聞いたフューレンは反応。
フレノアやキリエルも意味を理解したのか反応を示した。

(これじゃ悪魔使い…ワレリーに全部罪が向かう。
ワレリーだけが極刑って可能性も…!)

「ふむ、わかった。」

と言ったのは天使。
どうやら考慮する様子。
フューレンは冷や汗を浮かべて考える。

(そう言えば雇用で人殺しをしたワレリー兄弟も、罪には問われないって話だったな。
これを考えたら、悪魔使いに従う悪魔も同じ事が言えるんじゃないか…?)

フレノアも気づいているのか、思わずワレリーの方を見て言った。

「ちょっと牧師様!まさかこれを知ってて…!」

しかし、ワレリーは淡々とした様子で言う。

「裁判中はお静かになさい。」

「できないわ。」

フレノアはそう言うと、ワレリーは溜息。

それを遠目で見ていたノルスは、ワレリーを見つめていた。
そしてノルスは思う。

(…これで本当に良かったのだな…?牧師よ…。
言われた事は全て言った。目論見通り、天使は他の刑を覆すだろう。
そうなればお前だけが…)

キリエルも煮え切らない反応をしている。
ちなみにフェオドラは話を理解できておらず、首を傾げていた。
ケリスも気づいたのか唖然。
スピムは薄々気づいてはいるものの、結果が聞こえるまで構えている様子だった。
ちなみにモルビスは気づいていない様子、フェオドラと同じく目を丸くしていた。

そして遂に、天使が口を開いた。

「ワレリー・ポポフ以外は極刑を取り下げる。」

それには教会の悪魔達は強く反応する。
フレノアは真っ先に机を叩いて言った。

「待って!牧師様が極刑ならアタシも同じがいいわ!そうしてちょうだい!」

「必要以上の刑は課さない。」

天使はそう言って何も言わなくなる。
フレノアは悔しいのか拳を握り、次にノルスを睨みつけた。
「余計な事を言ったな」そう言った顔だ。
ノルスは目を閉じて、毅然とした態度でいた。
フレノアは続ける。

「アタシ、悪魔になる前から賞金首を狩っていたわ!」

「口で言えど、悪魔でなかった証拠がない。」

天使の言葉に、フレノアは爪を噛んで悔しがった。
そこでスピムはワレリーに聞く。

「牧師様はこれでいいの…?反論しましょうよ。」

それに対し、ワレリーは言う。

「反論?これ以上何に弁論ができると言うのですか。」

スピムは黙り込んでしまうと、ケリスは言った。

「これ以上、ケリス達で出来る事はないです。
この判決を、ケリス達だけで覆す事はできないと思います。」

「どうしてよ…!」

と言ったのはフレノア。
いつも落ち着いているフレノアでも、流石にワレリーが死ぬとなれば落ち着いていられなかった。
フレノアは机に伏せて言う。

「どうして牧師様だけ…!」

すると話を理解していないフェオドラが、やっと口を開いた。

「パーパ、死んじゃうの?」

しかし、ワレリーは黙ったまま。
誰も視界に入れないのだ。
フェオドラは頬を膨らませると、ワレリーに言う。

「聞いてパーパ!」

そこに、学園の先生の一人が言う。

「静粛に!」

それでも張り合おうとするフェオドラだったが、隣に座っていたフューレンが肩を叩く。

「何フューレン!」

フェオドラは若干怒りに任せて言ったが、フューレンは落ち着いた様子で言った。

「大人しくしていろフェオドラ。
ここで俺達が騒いだ所で、ワレリーの刑が軽くなる訳じゃない。」

「でも…!」

フェオドラは泣きそうな顔で言うと、便乗したケリスはフェオドラに言う。

「大人しくしておきましょう…!」

フェオドラはそれでもワレリーを見つめる。
ワレリーは毅然とした様子でいて、みんなを見ていない。
フューレンもワレリーを横目で見て思う。

(ワレリーは最初からそのつもりで裁判に望んだって感じだな…。
むしろ、これ以外の方法で裁判の犠牲を減らすなんて難しい事だが…。)

その時だ。
外から銃声が聞こえる。
かなり大きな音なので、一人の教師が窓を確認した。

するとその先には、ワレリーの兄弟達が魔術科学園の柵の中の道に立っていた。
オリガは作りかけの旗を掲げて言った。

「『襲撃の悪魔』に、減刑を求めます!」

旗には『革命派の恩人を救え!』と書いてあった。

それを見た教師は言う。

「なんだあれは…」

その様子に、一同はその教師の方を見た。
座っている教会の一同は見えなかったが、そこでフェオドラが羽を広げて見に行く。
オリガ達を見ると、フェオドラはワレリーに言った。

「パーパの家族だ!」

それを聞いて驚いたのはワレリー。
裁判官の天使達も、やがて騒ぎ始める。

「襲撃の悪魔とは一体…」

それを聞いたムニーバは、笑顔を見せて言った。

「襲撃の悪魔とは!賞金首達が誘拐した、罪なき弱き人々を救った正義の味方の事です!
一人の悪魔使いを中心に六人の悪魔が、奴隷にされるはずだった多くの人々を救ったのです!
とは言え、その悪魔達も賞金首を狩ってしまうという話ですがね。」

「その悪魔達ってまさか…」

一人の教師が言うと、一同はワレリー達を見た。
ワレリー達は目を丸くしてその視線に呆然としていると、ノルスが言った。

「そのまさかでしょうね。」

すると外が騒がしくなる。
再び教師達が窓の外を確認すると、オリガがいた場所は多くの人で埋め尽くされていた。
人々はどうやら、革命派である様だ。
革命派の皆は口々に言う。

「襲撃の悪魔を解放しよう!」

「善人を殺すなんて裁判じゃねぇだろ!」

「見逃してあげてー!」

その声に驚いたのは天使達だった。

教会の一同は外の様子が見えずとも、その声に落ち着きを取り戻していた。
モルビスは涙ぐみながら言った。

「俺達の努力が実ったんだな…!」

「って、モルビスは全然襲撃してないじゃない!新人なんだから!」

とスピム。
キリエルは思わず笑ってしまう。

「凄い、みんな僕達の為に!」

するとフェオドラは席を離れ、窓から顔を出す。
革命派の一同は驚くと、フェオドラは大声で言った。

「みんなー!みんなでパーパの死刑をなくしてー!!」

その声に、革命派の皆は一斉に声を上げた。
それに圧倒される、学園内の教師達。
天使は驚いた様子だったが、圧倒されるほどではなかったようだ。

すると、裁判長である天使が言う。

「静粛に。」

その言葉に外の騒ぎは収まらずとも、中の者達は沈黙した。
天使は少し黙ると言った。

「人々を救った善行により、悪魔達の刑罰は無効とする。」

その言葉にキリエルは笑顔を見せる。
天使は続けた。

「しかし、悪魔使いワレリーの死刑は揺るがないものとする。」

予想外の判決に、一同は再び目を向いて黙り込んだ。
ワレリーも少し反応したが、腹を括っていたのか目を閉じて頷くのであった。





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