相剋のドゥエット

うてな

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09 動き出す天使

093 ワレリーの願い。

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ワレリーの死刑判決が覆らない。
それを知って、裁判会場は静まりを取り戻していた。

これほど皆が訴えても、覆らないのだ。
一同は異議を唱える事もできなくなる。
その一番の理由と言えば、覆らない死刑判決を聞いても尚、本人は堂々と黙っているから。

「異議のある者はいるか。」

裁判長の言葉に、一同は何も答えない。
しかし、そこでフレノアは言った。

「死刑は…いつなの?」

「牢屋に空きなどない。今すぐだ。」

天使の冷酷な言葉に、フレノアは歯を食いしばった。
フレノアは睨むようにしてワレリーを見つめるが、ワレリーはフレノアを見て言う。

「怒り狂ってはなりません。静かに見届けなさい…」

それがまた悔しいフレノア。
他のみんなも同じ気持ちだった。
だが、半分諦めかけた表情である。
天使は言った。

「罪人は処刑台へ。」

部屋の真ん中には、処刑台と思しき広い台がある。
ワレリーは席を立つと、歩いてそこへ向かうのだ。
フェオドラは言う。

「パーパ…!」

ワレリーはフェオドラを見ると、優しく微笑んだ。

「皆さんの事を頼みますよ、フェオドラ。」

そう言って、自分がいつも持ち歩いている魔導書をフェオドラに渡す。
フェオドラは涙を溜めてワレリーを見つめていた。
ワレリーは渡す物を渡すと、せっせと処刑台へと向かった。

「パーパ!」

やっぱりワレリーを止めようとするフェオドラ。
それをケリスが止めた。

「フェオドラ、諦めてください。きっと牧師様の決意は固いです。」

「意味わかんない!自分が死ぬのに決意なんて意味わかんない!」

フェオドラはそう言い放った。

「フェオドラはわかっておりません…!」

ケリスは俯いて言う。
ただならぬ思いを感じたフェオドラは、その言葉に反応した。
ケリスは続いて言った。

「牧師様はみんなに沢山生きて欲しいのです…!
それだけじゃないです、フェオドラにも沢山幸せになって欲しいのです…!」

しかしフェオドラは言う。

「だったらパーパが必要!フェオドラが幸せになるにはパーパも必要!!」

「フェオドラは今何歳ですか?」

ケリスの唐突の質問に、フェオドラは首を傾げた。

「関係ない話しないで!」

「あります。」

ケリスは顔を上げて真摯な表情をフェオドラに見せる。
フェオドラは少し黙ってから言った。

「六歳。」

「そうです、もうすぐで七歳です。フェオドラはきっとこの先が長いです。」

「それが何!」

「フェオドラは、ずっと六歳のまま生きたいですか?」

その言葉の真意は理解できずとも、フェオドラは眉を潜めた。

「六歳だったら…」

フェオドラは、最近キリエルとフューレンとで商店街に行った事を思い出す。
今まで赤子だったからできなかった事、食べられなかったものを沢山楽しんだ事を思い出していた。

「大きくなったら、また別の楽しい事ある…ずっと六歳は嫌かも…」

フェオドラがそう言うと、ケリスは頷いた。

「フェオドラは自分の魔導書で契約した相手の魂がないと、体は成長しません。
その意味がわかりますか?」

フェオドラはその言葉に反応する。
フェオドラはケリスを見て言った。

「パーパが死んだら…フェオドラまた大きくなるの?」

ケリスは頷く。
ケリスは続けた。

「牧師様が悪魔使いを続けていたのは他でもない…フェオドラの為なんです。
いつか捧げる命の為に悪魔を作り、自分が死ぬべき時を待っていたのです…!ずっとずっと!
だからいくらみんなが止めても、牧師様はきっと揺るぎません…!」

その言葉に、フェオドラだけではなく教会の全員が反応を示した。
するとワレリーは言う。

「もうおやめなさい。」

ワレリーはそのまま処刑台へ立った。
天使は処刑の準備が完了しているのか、あとは刃をワレリーに下ろすだけの状態になっていた。





約一時間前の出来事。
滝のある森の奥。
そこではアイナが退屈そうに川を眺めていた。

(退屈。
そう言えば、あのヘグリスメオン教会の連中の裁判っていつなんだろう。見に行きたいな。)

そして脳裏に、フューレンとキリエルが過る。
アイナは二人を思い出すと空を見上げた。

(あの二人は免れるわね。きっと生き残るのもあの二人くらい…。
もし二人が生き残ったら…)

アイナはそう思いつつ、少し機嫌が良さそうに鼻で笑った。

(また遊びに誘ってやろうかしら。)

すると、森の奥から声がする。

「笑ってどうしたんだ?」

その声に驚いてアイナは振り向くと、そこにはなんとフロルが。
フロルは銃を背負いながらもやってきていた。
アイナは驚いていたが、やがて落ち着いて言う。

「こんな森に何しに来たの?」

フロルはアイナを見て言った。

「魔術科学園の内装に詳しい人を探し回ってたんだが、今発見したんだ。」

それを聞いて、アイナは苦笑。

「私の事?」

それに対し、フロルは静かに頷いた。
アイナは思わず溜息をつくと、フロルは言う。

「ワレリーお兄様の裁判がもうすぐ始まるらしい。止めたくてね。」

「革命派の癖して、革命派の敵である賞金狩りを救おうなんて考えてるんだ。」

アイナの言葉に、フロルは思わず鼻で笑った。
アイナは眉を潜めると、フロルは続ける。

「俺が革命派にいるのは賞金狩り制度を廃止する為であって、賞金狩りを全員処刑する為じゃないからね。」

「ふーん。
裁判なんて止めたら、あなたもどうなるかわからないわよ?」

その問いに、フロルは言った。

「本当だったら俺も死刑は免れない。兄弟が誘拐された時にギルドを襲っているからね。」

「は!?そんな事したの!?」

「まあね。ただあのギルドは既に土の下だから証拠も残らず、俺達は刑罰を免れた。」

アイナは呆れた様子でフロルの話を聞いていた。
フロルは続ける。

「むしろこの世界で裁判を行う事自体がおかしいと思う。
考えてみてくれ。
人殺しを許された世界で、急に人殺しを罪と問いただし処刑を始めるのは如何なものか。
人殺し以外でも罪なんてものはいくらでもある。それだけを処罰するのはあまり公平とは言えないだろう?」

「だから何なの?」

「だからこんな不公平な裁判で人が新たに死んで行くのはおかしいと思う。
自分の家族が死ぬと思えば尚更。止めたいと思うね。」

それを聞いて、アイナは目を丸くした。
アイナは上の空で考え事。

(まあフューレンやキリエルが死んじゃうワケじゃないけど、暇だし協力してやろうかな。
情報提供くらいなら後々この男が罪に問われても、私は罪に問われないでしょ。)

「いいわよ、魔術科学園の事なら詳しいんだから。」

「本当かい?助かる。」

フロルは相変わらず表情が硬かったがそう言った。
それを聞いてアイナは微笑む。

「ええ。
楽しみましょう、裁判壊し。」





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