94 / 94
09 動き出す天使
094 魔術科学園の罠をくぐり抜けて。
しおりを挟む魔術科学園の裁判の騒ぎに紛れて、フロルとアイナは学園の裏口まで来ていた。
フロルは言う。
「それで、どうやったら入学もしてない人間が入る事ができる?」
するとアイナは胸を張りながら言った。
「今は裁判中って事もあって裁判を受ける生徒じゃない人間も入れるわ。
入れるか入れないかのセンサーは、その人間が持つ力を測っているのよ。」
「つまり、今裁判している人の誰かと同じ力を持っていれば俺は入れると。」
「ええ。」
それに対し、フロルは眉を潜める。
「どうやって…?」
「フフーン!」
アイナはそう言うと、ポケットから小さなミニボトルを出した。
その透明な瓶の様なミニボトルには、血が入っていた。
アイナはそれをフロルに見せながら言う。
「これはキリエルの力が混ざった血。
本当は力なんてすぐ血から抜けちゃうもんだけど、私の力さえあればこうして保存もできちゃうのよ。」
「アイナの力?」
フロルが首を傾げると、アイナは頷く。
アイナは悪魔の翼を広げると言った。
「私はヴァンパイア。
ヴァンパイアは血だけじゃなく、相手の魔力も頂く生物なのよ?
だけど血に力が宿るっていうのは体内にある時だけで、そうでない時はすぐに外へ逃げちゃう。
だからヴァンパイアの牙には、それを血に閉じ込めていく為の力が宿ってるの!」
フロルはそれを聞いて目を丸くする。
アイナは血を掲げて言った。
「だから私の牙に噛まれて出てきた血は、力が抜ける事なんてないの!
これで騙せるわ。」
そう言ってフロルに渡すので、フロルは目を丸くしたまま貰った。
「ありがとう。でも、ヴァンパイアなんてそこらにいるだろう?
アイナと同じ事を考え出す輩も出てくるんじゃないのか?
学園側はその対策を行っていないのか?」
「力を持っている奴なら大問題だけど、あなたは魔力も持ってないでしょ。
魔術科学園は、魔力を持たない人間には無害な結界しか貼ってないから。」
「意外だな。そういう所はセキュリティは甘いんだな。」
「ええ。
だってそうでもしないと、外部から物を運び入れる等の作業が面倒になるからね。
運搬を担う人はみんな、魔力を持たない人間に任せていると聞いたわ。」
「へぇ。」
そう言ってフロルはミニボトルをポケットに入れると、銃を背負って入る準備をした。
「よし、行くか。」
アイナはそれに頷くと、フロルの先頭に立って言う。
「いい?魔術科学園は裏口付近は超安全でも裏口奥の廊下は超危険だわ。
罠だらけだから、ちゃんと私の後ろについてくる事。
そうでなければあなたが学園に捕まっちゃうわ。」
「なぁに、死ぬよりマシだね。」
フロルの余裕に、アイナは溜息。
だかアイナはすぐにニヤリと笑った。
「よし、行こう!
目指すは魔術科学園最奥部!ブレーカー落として錯乱大作戦よ!」
そのアイナの作戦に、フロルは鼻で笑いながらも言う。
「電気を落としただけで錯乱出来るとは思えないが。」
「できるわよ。」
アイナの自信に、また目を丸くするフロル。
二人は走って長い長い廊下を進みながらも、会話をしていた。
アイナは言う。
「魔術科学園の最奥部にあるブレーカーは、ただ電気を通わせているだけではないわ。
この学園にかかる魔術をも落とす事ができちゃうの。」
「へぇ、だから最奥部にあるんだな。」
「ええ。だからその道は危険でいっぱい。
でもここでブレーカーと警報装置と罠、これらを落としておかないと裁判を邪魔できないし、私達も見つからずに逃げる事は不可能ね。」
「なるほど。」
そうやって二人が進んでいくと、大きなシャッターのある扉に着く。
アイナはフロルの前に出ると、足に力を込めた。
「退けェェッ!!」
そう言ってアイナがシャッターを蹴り飛ばすと、シャッターは壊れて道が開かれる。
フロルは感心。
「怪力か。」
「これは時間が経てば再生するヘンテコなシャッターよ、気にせず行きましょう!」
アイナはそう言って走るので、フロルも追いかけた。
シャッターの先は、見慣れたような学園の壁紙のある廊下。
電気の通っていないその薄暗い道を走りながらも、アイナは言った。
「こっからが本番よ。」
「ああ。」
「あんまり罠を踏むと侵入者がいるってバレちゃうから、できるだけ踏まないようにね。」
「了解。」
ここからは走るのではなく、二人は慎重に歩いていく。
アイナは大体罠の位置を把握していたのか、いとも簡単に罠地帯を抜けていく。
フロルも勿論、アイナに続いて着々と罠地帯を抜けていくのだ。
「あら、初めて来てるにしては上出来じゃない。」
「アイナは何度か来た事があるのか?」
フロルの質問に、アイナは鼻で笑う。
アイナは足を止めた。
フロルも足を止めると、アイナはフロルに振り返って言った。
「学園の生徒じゃないお友達とここで遊ぶ為に、たまーに動力源いじりに行ってた。」
それにフロルは呆然。
それからフロルは言った。
「学園の生徒はみんなアイナみたいな事をしているのかい?」
「いいえ、私だけよきっと。なーん千年と生きてきましたが、私だけ。」
その言葉に更に驚いた様子のフロル。
「その顔で千年以上生きてる…!?」
「何よ!悪い!?そうよ、私は超がつくほど長生きしてるの!」
「悪魔の寿命ってどのくらいなんだ…?」
フロルが考えていると、アイナは言う。
「ないわよ、魔力と体が尽きない限りね。
私はそこらの悪魔と違って安心安全な暮らしを心がけていたから、長生きしてるの。
人間みたいに生活してれば、変な悪魔や悪魔使いに目をつけられる事もないし。」
「でもタイミとは一緒にいたろう?」
そう言われると、アイナは何かを思い出したのか怒り顔。
アイナは言った。
「ありゃヴァレリカのせいよ!ヴァレリカがいなければ私が悪魔だってバレなかった!
嫌味を握られたから、少しの間従ってただけ。」
「嫌味って?」
「悪魔である事よ。でも今はもういいの、森で隠居暮らししてるから。
タイミと生活してたら私の平穏が脅かされちゃうわ。」
「それもそうかもしれないな。」
フロルの言葉に、アイナは溜息。
「まあいいわ、先に進みましょう。」
「ああ。」
そう言って、二人は奥へと進むのであった。
魔術科学園の要である、最奥に向かって。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。

多分お気に入り登録しました
ありがとね!!!!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございます!
全てお気に入り登録しときますね♪
ありがとうございます!