植物人間の子

うてな

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第3章 平穏―ピースフル―

118 業に報いよ

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博物館内のコレクション部屋では。
秋田はずっと泣いていて、綺瑠から離れない。
綺瑠は既に収まったのか、今度は苦笑して言う。

「と、父さんもういいだろう…?石っ子ちゃんもこっち見てるよ…?」

「うぅっ…」

気にせずに泣き続ける秋田。
綺瑠は仕方なく剥がそうとしたが、体格も力も上の秋田を剥がす事はできなかった。
綺瑠は困った顔。

(父さんはどうしてこんなに馬鹿力なの…)

ミンスは二人を見ていて、胸に手を当てていた。

(二人が仲を戻した瞬間、胸騒ぎが止んだ…。
……奈江島喜美子、かつてあの女が心を知る為に取り込んだ人間…。)

ミンスは綺瑠を見る。
綺瑠はミンスを見ると、苦笑する。

「逃げたいなら逃げてもいいよ。父さんの事はさ、僕に任せてよ。」

「…私を殺さなくていいのですか?」

その質問に、綺瑠は鼻で笑った。

「どうでも良くなっちゃった。
…僕の気が変わる前に逃げたらどう?」

それに対しミンスは静かに頷くと、立ち去ろうとする。
しかし、そこで綺瑠は呼び止めた。

「あ、待って。」

ミンスは黙って綺瑠の方を見ると、綺瑠は言いづらそうにして言う。

「さっきはごめんね。」

それを聞いたミンスは、首を横に振った。

「いいえ、わたくしの母上からの言葉を、信じていたのでしょう?」

綺瑠は図星なのか顔を上げた。
ミンスは言う。

「彼女の言葉が…ずっとあなたの首を絞めていたのでしょう。
心配しなくとも、わたくしは貴方の家族に手は出しません。」

そう言うとミンスは視線を逸らしたが、一言付け加えた。

「…さようなら綺瑠、貴方に幸あらん事を…」

そう言って、ミンスは外に出て行ってしまった。
綺瑠は呆然と、出て行ったミンスの方を見ていた。



博物館の外では。
誠治は博物館から少し離れたところにいた。

(赤い車、ロボット人形が乗ってる車は見つけた。
そして、あの人が出てくるのも見た。電話を掛けよう…)

電話をかけようとすると、そこに守が通りかかる。

「あ~!誠治さん!ミンスは見つかった~?」

「あ、守くん。実はさっき見てね。」

守は派手に仰天。

「え!どこよ!」

「近くの地層博物館だ、今秋田さんが来ていて…!」

「OK!とりあえずみんなに電話~」

守がそう言って携帯を取り出したその時だった。
誠治は見知った影が通り過ぎていくのが見えた。

緑色の髪、真っ黒な服。
紛れもなくクロマであり、今の話を聞いていたのだ。

「クロマ!」

誠治は声を出して後を追いかける。
クロマが向かう先は勿論博物館。
誠治は変な胸騒ぎがし、ついクロマを追いかけた。
守は「あ!え!?」と驚いていると、久坂が電話に出る。

「守、見つけたのか?」

守は慌てて言う。

「大変だよ!ミンスが地層博物館で見つかったのはいいんだけど!マリモがそれを知って向かっちゃったんだよ!」

「ハァー!?
テメ!クッソ今すぐ行くから他のヤツ等にも電話してろ!てめぇは遅いから!」

「イエ~ス」

と守が言うと切られる。


(速い…!)

誠治はクロマに追いつけず、どんどん距離を置かれていく。

クロマは一直線に博物館へ向かい、博物館に着くと高いジャンプをして博物館の一番上に着地する。
すると裏の方からミンスらしき人が出てきているのを見て、クロマは下に降りるのであった。

ミンスは両手を塞がれていたが、辛うじて外に出る事ができた。
すると中から秋田が出てきて、ミンスを捕まえる。

「待ちなさい…!君を逃がすわけにはならない…!」

秋田が言うので、ミンスは家の時の恐怖が蘇る。

「イヤっ…!離してください!」

ちなみに綺瑠は博物館内の炉の火を消している所で、少し目を離した隙に秋田が消えて微妙な顔。

「ちょっと父さん?もう、いい加減にしてよ。」

ちなみに秋田には聞こえてなかった様子。

「大人しくしないと…」

秋田が言い、ミンスは目を瞑って首輪を掴む。
そこに…

「ミンスッ!!」

と空からクロマが降ってきて、秋田とミンスの間に降りる。
秋田は呆然。

「クロマ…!」

ミンスは喜んで、クロマに飛びついた。
クロマはミンスを腕でガッチリと抱えるとミンスを叱る。

「勝手に出歩くなと昔から言っているだろう!それに貴様、そのヘンテコな服…」

そこでクロマはミンスの体を見た。
胸があって、髪の色が変わっていて、気のせいか声も可愛らしくなっている。

「ミンスお前…」

クロマは妙な違和感と好奇心半分で胸に手を伸ばそうとしたが、ミンスは自分の首を指さした。

「怖いです…」

「なんだこの変な首輪は。」

クロマはそう言って首輪に手を伸ばす。
クロマがその機械に触れると、誤作動で電気が流れた。

「いやぁっ!!」

ミンスの叫び声に、クロマは驚いてすぐに首輪を壊した。

「こんな首輪…!誰に付けられた。」

クロマが冷静にミンスに聞くと、ミンスは秋田を見つめた。
秋田はクロマを見ると、クロマに睨みつけられる。
クロマはミンスを抱いている片腕から、ミンスの震えを感じる。
それは紛れもなく秋田を恐れていて、ミンスはクロマの服をしっかりと掴んでいた。
クロマはミンスのこれほど恐怖する姿は初めて見た為か、反応を見せる。

「貴様がミンスを…!」

クロマが言うと、秋田は言う。

「ごめんね、ちょっと乱暴したよ…」

ミンスは震えながらも首を横に振り、クロマに抱きついた。

「この人…!わたくしを…!わたくしを…!」

そしてミンスが泣くので、クロマは今までに感じた事がないくらいの怒りを感じる。
クロマに睨まれる秋田は、視線を逸らしつつ言った。

「いや…本当に悪かった…」

クロマは人差し指を秋田の胸に向けた。

「もういい。」

すると、秋田は物凄い殺気を感じた。

そこに丁度、博物館の外に出てくる綺瑠。
綺瑠は目を細めながらも秋田に言った。

「父さん、もう石っ子ちゃんの事は放っておきな…」

「業に報いよ。」

と言うクロマの声と、共に真っ白な閃光が放たれて視界が白一色に。

閃光が消えると、秋田は真っ黒に焦げる。
そのまま倒れ、呆気なく死んでしまった。
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