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第4章 侵食―エローション―
149 全く変わっていない
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部屋にサウザは帰ると、机に飾ってある家族写真を見た。
小学生くらいのサウザと、幼稚園児くらいのクロマとミンス。
三人を抱きしめるテオドールと、近くで優しく微笑む石の巫女が写っている写真だった。
サウザは写真の前で涙を零す。
「やっと…家族に会えたのに…。」
(母上はいないけど…、やっと三人に会えたんだもん…ミンスと、クロマと、父上に…。)
――「ミンスはきっと、これから多くの人間を犠牲にするはずだ。それを止める為には…クロマを諦める以外方法はない。」――
と言うテオドールを思い出す。
――「貴方達は!この国の者はッ!父上の言いなりになってクロマを殺そうとした!わたくしは今でも許しておりません!永遠に…!この国を恨みます…。」――
と言うミンスを思い出す。
――「私は勝ち目の無い勝負に出るほど愚かではない。ここは潔く、死ぬ事を選ぼう。」――
と言うクロマを思い出す。
(なんでみんな…!昔のように…戻ろうと思わないの…)
サウザはベッドに座り込んで思い悩んでしまう。
(こんなの恐ろしいだけなのに…!
悪い事しか…起きないのに…)
秋田宇宙生物研究所の庭。
そこには社員の休憩スペースが用意されている。
今は植物人間の事もあって閉鎖しているが、一人の研究員と一人の男性の姿があった。
その研究員は上郷で、もう一人は秋田の秘書の三森。
二人はその休憩スペースにて茶を飲んでいた。
上郷は言う。
「喜一郎、甥っ子の見舞いに行かなくていいのか?
先生ももういないし、自分が叔父だって明かしてもいいんじゃないか?」
三森、もとい喜一郎はそう言われると、クールな様子のまま言う。
「今頃明かしてどうするの?俺じゃ秋田の代わりになれないさ。」
「早い内に『あれは虐待だ』って、教えてやれば良かったろう。
あの親子に。」
上郷の言葉に、喜一郎は鼻で笑った。
「綺瑠は手遅れだった。もし教えたら、子供の綺瑠にとっては酷だったろう。
秋田もダメ。俺の言い分を聞くどころか脅してきたさ。」
それを聞いた上郷は溜息。
「そう言う割に、いつも綺瑠の事を気にかけてるよな。」
「どんなに狂ってても、可愛い甥っ子なのには変わりないよ。」
「そうかよ。」
するとそこに、一陣の風が吹く。
そして風の中から、男性の声が聞こえる。
「善光!」
その声に、上郷は目を剥いた。
「この声…!」
喜一郎も驚いた様子をしていた。
すると上郷の目の前にテオドールが現れる。
上郷は目を剥いたまま呆然としていると、テオドールは目を輝かせた。
「善光ぅ!老けた老けた!あ、喜一郎もいるじゃん!」
「ろ…『ロディオン』…!?生きてたのか…!?」
上郷はそう言った。
テオドールは笑顔のまま頷く。
「ああ!てか、善光はこの研究所にいたんだ!」
すると上郷は眉を潜めた。
「秋田先生が相変わらず瑠璃を追っていたからな。…ずっと見張ってたんだよ。」
「善光って瑠璃の事好きだもんね。」
テオドールが言うと、上郷は視線を逸らしてクールに言う。
「悪いか?」
すると喜一郎は言った。
「石の巫女は死んだんだろう?」
喜一郎の言葉に、テオドールは眉を困らせる。
それから虚しそうな表情を上郷に見せた。
「ああ。…守りきれなくてごめん。」
「謝るな、空気が湿気る。」
鬱陶しそうに上郷は言った。
それでもテオドールは黙っていると、上郷はテオドールを見る。
「にしても、お前は二十年前と全く変わらないな。歳とってないのか?」
それを聞くと、テオドールは眉を困らせて言った。
「瑠璃の力を貰っちゃったから…死ぬまで一生この姿かもな。」
上郷は驚いた顔をすると、それから俯く。
「お前はもう、植物人間側って事か。」
すると二人の間に沈黙が。
クールな喜一郎は黙ってそれを眺めていた。
「…善光。」
テオドールに言われるので、上郷はテオドールの目を見た。
テオドールは微笑む。
「秋田先生に掛け合って、陽の下院にいたミンスとクロマに手を出さないように言ってたろ。
…ありがとう、お礼を言いたくて。」
「は?…なんでそれをお前が。」
上郷は目を丸くして言った。
テオドールは笑った。
「俺の情報網なめんなって!」
そう言うと、テオドールは上郷の名札に下がっている風見鶏のキーホルダーを見て笑った。
「持っててくれてたんだな!俺達の友情の証!」
「…捨てる方がおかしい。」
上郷が言うので、テオドールは照れくさそうに笑った。
「ありがとう。」
テオドールはそう言うと、上郷に背を向けた。
すると周囲から強風が吹き荒れる。
上郷は風に驚くと、テオドールは言った。
「善光の為にも、この地球を救わないとな。
…じゃあね、善光。
それと喜一郎は綺瑠の方にちょっとくらい顔を出してあげましょうね!」
「それは無理、綺瑠は俺の事嫌いだもん。」
喜一郎はクールに言うと、テオドールは鼻で笑った。
そして、そのまま風となって消えてしまう。
それを呆然と上郷と喜一郎は見ていた。
風が収まり、少しの沈黙が続くと上郷も鼻で笑った。
(…地球を救うって…。
お前は姿だけじゃなく、性格まで昔と変わってないな。)
小学生くらいのサウザと、幼稚園児くらいのクロマとミンス。
三人を抱きしめるテオドールと、近くで優しく微笑む石の巫女が写っている写真だった。
サウザは写真の前で涙を零す。
「やっと…家族に会えたのに…。」
(母上はいないけど…、やっと三人に会えたんだもん…ミンスと、クロマと、父上に…。)
――「ミンスはきっと、これから多くの人間を犠牲にするはずだ。それを止める為には…クロマを諦める以外方法はない。」――
と言うテオドールを思い出す。
――「貴方達は!この国の者はッ!父上の言いなりになってクロマを殺そうとした!わたくしは今でも許しておりません!永遠に…!この国を恨みます…。」――
と言うミンスを思い出す。
――「私は勝ち目の無い勝負に出るほど愚かではない。ここは潔く、死ぬ事を選ぼう。」――
と言うクロマを思い出す。
(なんでみんな…!昔のように…戻ろうと思わないの…)
サウザはベッドに座り込んで思い悩んでしまう。
(こんなの恐ろしいだけなのに…!
悪い事しか…起きないのに…)
秋田宇宙生物研究所の庭。
そこには社員の休憩スペースが用意されている。
今は植物人間の事もあって閉鎖しているが、一人の研究員と一人の男性の姿があった。
その研究員は上郷で、もう一人は秋田の秘書の三森。
二人はその休憩スペースにて茶を飲んでいた。
上郷は言う。
「喜一郎、甥っ子の見舞いに行かなくていいのか?
先生ももういないし、自分が叔父だって明かしてもいいんじゃないか?」
三森、もとい喜一郎はそう言われると、クールな様子のまま言う。
「今頃明かしてどうするの?俺じゃ秋田の代わりになれないさ。」
「早い内に『あれは虐待だ』って、教えてやれば良かったろう。
あの親子に。」
上郷の言葉に、喜一郎は鼻で笑った。
「綺瑠は手遅れだった。もし教えたら、子供の綺瑠にとっては酷だったろう。
秋田もダメ。俺の言い分を聞くどころか脅してきたさ。」
それを聞いた上郷は溜息。
「そう言う割に、いつも綺瑠の事を気にかけてるよな。」
「どんなに狂ってても、可愛い甥っ子なのには変わりないよ。」
「そうかよ。」
するとそこに、一陣の風が吹く。
そして風の中から、男性の声が聞こえる。
「善光!」
その声に、上郷は目を剥いた。
「この声…!」
喜一郎も驚いた様子をしていた。
すると上郷の目の前にテオドールが現れる。
上郷は目を剥いたまま呆然としていると、テオドールは目を輝かせた。
「善光ぅ!老けた老けた!あ、喜一郎もいるじゃん!」
「ろ…『ロディオン』…!?生きてたのか…!?」
上郷はそう言った。
テオドールは笑顔のまま頷く。
「ああ!てか、善光はこの研究所にいたんだ!」
すると上郷は眉を潜めた。
「秋田先生が相変わらず瑠璃を追っていたからな。…ずっと見張ってたんだよ。」
「善光って瑠璃の事好きだもんね。」
テオドールが言うと、上郷は視線を逸らしてクールに言う。
「悪いか?」
すると喜一郎は言った。
「石の巫女は死んだんだろう?」
喜一郎の言葉に、テオドールは眉を困らせる。
それから虚しそうな表情を上郷に見せた。
「ああ。…守りきれなくてごめん。」
「謝るな、空気が湿気る。」
鬱陶しそうに上郷は言った。
それでもテオドールは黙っていると、上郷はテオドールを見る。
「にしても、お前は二十年前と全く変わらないな。歳とってないのか?」
それを聞くと、テオドールは眉を困らせて言った。
「瑠璃の力を貰っちゃったから…死ぬまで一生この姿かもな。」
上郷は驚いた顔をすると、それから俯く。
「お前はもう、植物人間側って事か。」
すると二人の間に沈黙が。
クールな喜一郎は黙ってそれを眺めていた。
「…善光。」
テオドールに言われるので、上郷はテオドールの目を見た。
テオドールは微笑む。
「秋田先生に掛け合って、陽の下院にいたミンスとクロマに手を出さないように言ってたろ。
…ありがとう、お礼を言いたくて。」
「は?…なんでそれをお前が。」
上郷は目を丸くして言った。
テオドールは笑った。
「俺の情報網なめんなって!」
そう言うと、テオドールは上郷の名札に下がっている風見鶏のキーホルダーを見て笑った。
「持っててくれてたんだな!俺達の友情の証!」
「…捨てる方がおかしい。」
上郷が言うので、テオドールは照れくさそうに笑った。
「ありがとう。」
テオドールはそう言うと、上郷に背を向けた。
すると周囲から強風が吹き荒れる。
上郷は風に驚くと、テオドールは言った。
「善光の為にも、この地球を救わないとな。
…じゃあね、善光。
それと喜一郎は綺瑠の方にちょっとくらい顔を出してあげましょうね!」
「それは無理、綺瑠は俺の事嫌いだもん。」
喜一郎はクールに言うと、テオドールは鼻で笑った。
そして、そのまま風となって消えてしまう。
それを呆然と上郷と喜一郎は見ていた。
風が収まり、少しの沈黙が続くと上郷も鼻で笑った。
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お前は姿だけじゃなく、性格まで昔と変わってないな。)
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