植物人間の子

うてな

文字の大きさ
174 / 222
第4章 侵食―エローション―

156 悪い人ではないみたい

しおりを挟む
そして研究所地下にて。
研究所の地下は長い長い廊下に、一つ一つ番号が振られた部屋がいくつも並んでいた。
綺瑠はそこへ秋菜とハジメを案内する。
ちなみに誠治と守は別れたのか、一緒に来ていなかった。

「ここが植物人間を監禁する場所。」

秋菜とハジメは不安そうに部屋番号を見ていた。
綺瑠はどの部屋番号の近くにもある、点灯ライトを見ている。
どれも赤い色のライトで、たまに緑のライトがある。

「植物人間が全くいない…。誠治はしてないって言ってたけど、まさか本当に殺処分してないよね?」

それに対し二人は怯えた様子を見せると、綺瑠は二人に向かって苦笑。

「安心して、殺処分はしないからさ。」

「…本当?」

ハジメが聞くと、綺瑠は笑顔で頷いた。

「胡散臭いですわね…」

秋菜がぼそっと呟くと、綺瑠は再び苦笑。
それから困った顔をした。

「まあ信じてくれなくてもいいけど、中では大人しくして欲しいな。
あ、同室がいい?」

「同じ部屋でいいの?」

ハジメの問いに、綺瑠は頷く。
それから一つの空き部屋の扉を開いた。
中は何もない、真っ白な部屋。
綺瑠は中を確認してから言った。

「掃除はしっかりやってくれてるみたいだね。
うん、家から持ってきたい物とかあったら言うといいよ。」

「あ、ありがとう…」

秋菜が言うと、綺瑠は部屋を見ながらブツブツ。

「あ、でも二人の食事時間は、トイレは、ん~お風呂も必要じゃないか。
今までは自我のない植物人間だけを入れてたから、自我のある植物人間の待遇を考え直さないといけないな。
…それに窓がないのは可哀想だな。植物人間とは言えど、自我を持った人間。
外にも出られないんじゃ心が病んじゃうよね、何か策を講じないと…。」

綺瑠の独り言を聞いて、ハジメは思わず微笑んだ。
秋菜はハジメの方を見ると、ハジメは聞こえないような声で言う。

「ミンスに酷い仕打ちをした秋田の息子だから、ロクな奴じゃないのかなって思ったけど…悪そうには見えないね。」

ハジメの笑みに、秋菜も一緒に微笑んだ。

「そうですわね。
…あの優しい誠治さんのご友人ですもの、今の誠治さんはちょっぴり切羽詰まってますけど。」

「そうだね。」

すると、綺瑠は二人の方を見て言う。

「うん。暫くはこのままで我慢してくれるかな?
それに連絡機器がないね、支給するよう言っておくよ。
トイレはねー…ここを出て真っ直ぐ行くとあるんだ。お風呂は申し訳ないけど数日我慢して。」

そして更に綺瑠は頭を抱えた。

「えっとね…トイレ使えないのは不便だから、この廊下だけは暫く開放しておこう。
ただ、研究員が連絡機器寄越すまでは部屋から出ないで。
あと、ここにやってきた研究員には絶対に接触しない事。これは絶対条件。」

「わかりましたわ。…でも、そんなに急がれなくても結構ですわよ。
病院から退院したばかりで、お疲れになられても困りますわ。」

秋菜は納得した様子を見せつつも、綺瑠の体調を気にした。
しかし綺瑠は笑みで答える。

「ご心配ありがとう。だけどゆっくりしちゃいられない。
沢山課題があるから、じゃあね。」

綺瑠はそう言ってそそくさと立ち去ってしまった。
綺瑠が立ち去ると同時に、部屋の扉は閉まる。
二人は部屋の中で取り残されてしまった。

ハジメと秋菜は、部屋の隅で座り込む。
ハジメは言った。

「父さんと母さんに、連絡しない方がいいよね。」

「…そうね、心配かけたくないですもの。」

その言葉に、ハジメは頷いた。
秋菜は天井を見上げると呟く。

「空が見えないのはやっぱり嫌ね。」

それに対し、ハジメは眉を困らせた。

「どうせ外へ行っても、塞がれた空しか見えないけどね。」



綺瑠は研究員に粗方ハジメ達の事を話した後、先程ハジメ達が検査をしていた部屋にやってきた。
そこには守と誠治がおり、二人は検査を受けている様子だった。
ベッドの上に寝かされ、機械にかけられている最中だ。
綺瑠は検査をしている研究員の肩を叩いた。

「おや、代表。」

「やあ、そこ代わってくれるかい?」

「え?」

研究員は席を代わると、綺瑠は席についてマイクを手に取る。
すると二人に向かって話した。

『やあ誠治。今から人間ドックにかけていい?』

窓越しで検査を受けている誠治は困った顔。

「に、人間ドックですか…?」

『うん。ちょっと調べたい事があって。』

「調べたい事…とは?」

『誠治がハジメちゃんの植物人間なのに、花粉を発しない理由だよ。
ちょっぴり心当たりがあってさ。』

「へ…?」

誠治は目を丸くすると、綺瑠はペロリと舌舐り。
綺瑠は手元に有る報告資料を眺めながらも言った。

『準備はいい?』

「え、というか人間ドックは一体どこにあるんですか…!?」

誠治はそう言うが、守は言う。

「いや待てし、僕関係ないじゃん…!」

『あるんだよ守君…』

綺瑠の珍しく冷えた声、二人はその言葉にギョッとする。
すると急に綺瑠は、ニコニコ笑顔で言った。

『発進!』

その掛け声と共に、部屋中に大きな物音がする。
二人はパニックになるが、体を固定されていて逃げられない。
天井、壁、床から謎の機械が出てくるので、更に二人は混乱。

「ギャアアアアアアッッ!!」

守は恐ろしくて叫び、誠治は騒音が苦手なのか顔を真っ青にして倒れた。

「騒音は苦手で…」

その間、綺瑠は二人の様子に気づかず、笑顔で検診を続けていたという。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

処理中です...