植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

155 処分はしないけど

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次の日。
守は綺瑠のいる病院を訪ねていた。
綺瑠は守が一人でやってきて驚いている様子だった。

「守君。」

守は無愛想な顔で言った。

「先日検査するって約束したから。…あの、研究所どこ。」

「誠治と来なかったの?」

「だって、誠治さん…忙しいし。」

守がブツブツと言うので、綺瑠は思わず微笑んだ。

「じゃあ僕と行こっか!」

「え…?」

守が顔を上げると、綺瑠はウインク。

「今日は退院する日なんだ!今朝から喋り相手がいなくて困ってたんだ~
嫌?」

あまりにキラキラしている綺瑠に、守は圧倒されている。
守は眩しく思いながらも言った。

「べ、別に!その代わり車で送れよ!」

「勿論!」

綺瑠は大歓迎らしく、笑顔で言った。
そんな綺瑠を見て、思わず守はしかめっ面。

(…コイツ、明るすぎて苦手かも。)



そして秋田宇宙生物研究所内。
研究所のとある一室に誠治がいた。
その一室には用途の知れない大きな機器が多数存在している。
誠治はハジメと秋菜と一緒にその部屋に来ており、他の研究員と共に二人の検査をしていた。

ハジメと秋菜は謎の機械に寝かされ、全身をスキャンされる。
研究員はスキャン結果を見て言った。

「この植物人間は、どうやら花粉を発しているようです。
どうしますか九重秘書、殺処分いたしますか?」

それを聞いた誠治は目を剥いて呆然とした。
二人は窓越しの部屋にいて、話し声が聞こえないのか不安そうな顔で誠治を見ていた。
研究員を続ける。

「報告によれば、陽の下院に出家した人間の大半は既に植物人間になっています。
当初は石の子の仕業と考えられていましたが、彼女らが原因である可能性も否めませんね。」

誠治はハジメの方へ行こうとするが、足を止めた。
研究員は眉を潜める。

「にしても不思議だな。彼女の力を得ている九重秘書からは花粉は出てないのに。」

「確かに…」

誠治自身も不思議に思う。
研究員は誠治の顔色を伺って言った。

「それで、彼女達の処遇は…?
殺処分は我等だけの機密事項、本日は代表が退院ともあって控えた方が良さそうですが…。」

そう言われると、誠治は小さく頷いて隣の部屋へ向かった。
ハジメと秋菜は誠治を見ると言った。

「誠治、結果は…?」

誠治の冷たい表情を見ると、二人は嫌な予感がして黙り込んだ。

「アウトです。」

二人は目を剥いて驚くと、ハジメは呟いた。

「じゃあ…僕達は殺処分なのか…?」

「そんな…」

秋菜も呆然とすると、誠治は眉を潜める。
それを見た秋菜は、ハジメを抱きしめた。
ハジメは驚くと、秋菜は誠治に訴える。

「お願い、ハジメは見逃して…!
ハジメが死んだら、ハジメから力を受けた貴方も死ぬのよ…?」

それに対し、誠治は黙り込む。
ハジメは驚いた顔をした。

「何を言っているんだ秋菜!誠治が僕達を殺すだなんて…!」

しかし誠治は頭を抱えて言った。

「ハジメを逃がす…?つまり秋菜さんは、植物人間が増えてもいいと仰っているんですか?」

「そんなつもりは…!」

秋菜はそう言ったが、誠治は表情を暗くした。
誠治は顔を上げ、凄い剣幕で言い放つ。

「世界中で人々が苦しみ、家族を失い、家を離れているのに…
貴方達は、この世界の現状をまるでわかっていないッ!」

秋菜とハジメは驚いて萎縮してしまうと、誠治は拳を握って悔しそうな顔をした。

「植物人間を一人世に放つという事は、私達が植物人間を増やしているのと同じなのです!
今の貴方達は危険なんですよ…!それをしっかり理解していただきたい!」

ハジメは黙ったままで、秋菜は気を落とした様だった。
誠治は眉を潜めると続ける。

「…殺処分はしません。しかし、それ相応の場所に監禁しますのでそのつもりで。」

秋菜は顔を引きつってしまうと、誠治は冷たくも二人から視線を逸らした。
ハジメは半分諦めた顔をしている。

その時だ。

「誠治?」

そう言って誠治の肩を叩いたのは、なんと綺瑠。
誠治は綺瑠を見て驚くと、綺瑠は守と一緒に来ていた。
守は驚いた顔をしており、綺瑠は苦笑している。

「ねえ、『殺処分』って…何?」

誠治は綺瑠を見ると驚くと同時に、首を傾げた。

「ああ、殺処分されると二人が思っているだけですよ。」

咄嗟の嘘が上手な誠治。
綺瑠はそれを信じたのか、目を丸くして言った。

「あっそう。」
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