植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

173 白状します

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廃工業地帯にて。
誠治は工業地帯の、焼却炉のある工場前まで来ていた。
サウザと別れ、研究所を出て行ったすぐ後の事である。


――「セイジ!俺正直、この研究から逃げたいってちょっと思ってた。でもセイジのお陰で改める事ができた。
…セイジも頑張ってるんだって思ったら、俺も勇気が出てきたよ!」――


これはサウザの言葉だ。

(変なポジティブ思考に…ちょっぴり臆病で…他人のために我が身尽くせて…)

誠治は俯きながら扉の前に立つ。

(彼は誰にでも分け隔てなく優しい…。
でも私は、人間のためだけに…。本当なら、みんなが共存できる未来を…)

すると、誠治は思い出す。


――「悪は滅する、それだけだ。」――

――「人間なんかに…助けられるなんて…。」――


誠治はクロマとミンスの発言を思い出す。
すると頭を抱えて思うのだ。

(違う!彼等が共存を拒んでいるんだ!そう、だからこそ王子も苦しんでしまうんだ…!
…でも、そうしないと彼等も大事なものを守れない…。
私達人間も同じだ…やらないとこっちがやられる…)

誠治は首を横に振って考える事を一度やめ、建物の中に入る。

(王子が本当にクロマを退治できるとは思えない。)

誠治はそう思いつつも、ある部屋の前に立って扉を開く。

その部屋の先ではなんと、綺瑠が拘束されていた。
綺瑠は真後ろにある鋼鉄の壁を見ていた。
その壁にある小さなガラス越しに焼却炉の炎、綺瑠はそれを見て冷汗を流していた。

「誠治!これは一体どういう事だよ…!」

「目が覚めたんですね、奈江島さん。」

冷たく言う誠治。
綺瑠は説得をやめて、隣の部屋に耳を澄ます。

「隣から奇妙な声が聞こえるんだけど。まさかここ、Cレベルの避難所とか言わない?」

綺瑠が苦笑していると、誠治は言った。

「Dレベル(デッドゾーン)です。」

すると綺瑠は顔を引きつって言う。

「更に別の区分があったんだね!?
なんでいきなり!」

「隣の一室がDレベルなだけでここは至って安全ですよ。至って。
ここでは手遅れになった植物人間の始末が行われています。」

「だ、だからデッドなの」

「そうです。」

誠治が淡々と返事をするので、綺瑠は落ち着いてから眉を潜める。

「質問の答えを聞いていい?」

誠治は頷くと言った。

「あなた、なぜ生きているんですか?」

「ん…?何を言いたいの?」

「秋田さんが殺された日。
あの時私は、あなたはもう死んでしまったものかと思いました。
いえ、息があると聞いて安心はしましたが、少し違和感を覚えました。」

綺瑠が首を傾げると、誠治は呆れた表情で言った。

「あれほどのプラズマを喰らって人の形を保っていられるなんて…化物しかいませんよ。」

その言葉を聞いて、綺瑠は息を詰まらす。
誠治は続ける。

「その上Dレベルのここにいても植物人間になる兆候さえ見られない…。
普通ならすぐにでもに植物人間になってもおかしくはないです。」

綺瑠は黙っているので、誠治は言った。

「そして最近、砂漠の国へ行った時…。
サウザ王子を飛ばしたあの力は、植物人間の力ではないのですか…?
あなたは既に植物人間になっていて、そのせいであの避難所の方々が植物人間になってしまった。」

その問いに、綺瑠は鼻で笑う。
誠治がその反応に眉を潜めると、綺瑠は言った。

「避難所の人が植物人間になったのは僕のせいじゃないと思うけど、王様を飛ばしちゃったあの力は植物人間のものだよ。」

それを聞いた誠治は綺瑠の方を見ると、綺瑠は続けた。

「…うん、誠治には隠さず言うよ。
僕さ、石の巫女とミンスの力を貰っちゃったみたいなんだ。」

「貰った…?」

誠治は首を傾げる。
綺瑠は説明を続けた。

「僕も突然知らされて、信じられず動揺している所だよ。
僕にある力は、ミンスを殺す事のできるプラズマの力なんだって。
でもその力を抑える為に、ミンスがまた別の力を僕にかけたんだって。」

誠治は驚いた顔で話を聞いていた。

「つ、つまり…奈江島さんなら、ミンスを倒せる…!?」

誠治は明らかに声色が明るくなっていた。
更に言った。

「やったじゃないですか…!これで、地球が救える…!」

その言葉に、綺瑠は眉を困らせる。

「僕は人間だよ。そんな超常的な力を扱えるとは思えないな。
ミンスを殺すほどの力なんて…人間の僕が持ったら……いや、もしかしたら既に僕の体は……」

綺瑠はそう言ってブツブツ。

「でしたら。」

誠治はそう言って、綺瑠に向かって手を伸ばす。
すると誠治から漆黒の植物が生えてきた。
綺瑠はその悍ましい植物に目を剥いた。

「私が使ってみますよ。」
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