植物人間の子

うてな

文字の大きさ
199 / 222
第4章 侵食―エローション―

番外編 セオーネ・バーリン 1

しおりを挟む
私の名前は『セオーネ・バーリン』。
ロシアにある小さな小さな村にある、小さな小さな教会の牧師をしています。
その教会は親亡き孤児の面倒を見る施設と繋がっていて、私はいつも子供達と過ごしています。

雀の鳴く声が聞こえます。
もうそろそろ、子供達を起こさねば。
施設の方へ足を運ぶと、陽気な男の子の声が聞こえます。

「起きろー!お前ら!牧師様が起こしに来るぞー!
ヘヘっ!ほらほら今日も遊ぶぞー!」

この声の主は、施設内で一番元気な『グレネ・アヴェリン』です。
彼は施設内の誰よりも早起き、そしてまだまだ眠い子供達を起こす元気っ子です。
そしてもう一人…。

「お前等も起きろ。今日の賭けを忘れてはいないだろうな。」

この声は最近施設に来たばかりの五歳前後の男の子、『クロマ・オーファン』です。
彼は来たばかりなのにも関わらず、すぐ施設の子供達に溶け込みました。
特に、クロマはグレネととっても仲良し。
二人で子供達を起こしてくれます。

「クロマ!こうなったら牧師様が来る前に全員起こしてやろうぜ!」

「ああ、いい考えだ。」

二人は楽しそう。
私は部屋の扉から二人を覗きながら思っていました。
二人がみんなを起こすまで、待っていましょうか。

すると、私の背中を叩く子供が一人。

「またグレネとクロマは叩き起してるんだ。」

「おはようエミーリヤ。生き生きとしてるから、止めづらいです。」

私が言うと、エミーリヤは笑う。

「いんじゃない!この部屋にいる奴みんな、寝てばっかだし!いい薬でしょ!」

それもそうですが。
すると、部屋に居た二人は廊下へ出てきた。
二人は私を見ると挨拶をします。

「おはよ牧師様!俺達またみんなを起こしたぜ!?」

「おはようございます、牧師様。」

「ありがとうございます、二人とも。」

私はお礼を言うと、クロマは言いました。

「うむ。『ミンス』は起きていますか?」

ミンスとは、クロマの兄弟である『ミンス・オーファン』の事です。
年齢はクロマと近いらしいですが、不明です。
施設内の子供達と馴染めず、いつも部屋の隅にいたりクロマにくっついて歩いている人見知りの子です。

「ミンスは早起きですから、起きていると思いますよ。」

私が言うと、クロマは頷きました。

「では行ってくる。」

「んじゃ俺も!」

グレネはクロマが大好きな様で、二人はいつも仲良く歩いています。
子供達がゾロゾロと起き出す中、クロマとグレネの声がとある部屋から聞こえました。

「起きろミンス!いつまで寝ている!」

「どうしたミンス?いつもは早起きなのに。」

ミンスが寝ているだなんて、珍しい他ありません。
私も気になって見に行きました。

ミンスは布団に潜り込み、クロマとグレネを不貞腐れた顔で睨んでいました。
これは寝ているというか…布団から出るのを嫌がっています。
クロマはそれを叱り、グレネは不思議そうに見ているのです。
ミンスは言いました。

「わたくし、今日は起きません。」

「はぁ!?教会の掟に逆らう気か!」

掟…というほど堅苦しくはありませんが。
確かに起きないでずっと部屋にいるのは良くないかもしれません。
私は部屋に入り、ミンスに言います。

「ミンス、おはようございます。まだ眠いのですか?」

できるだけ優しく…。
ミンスを怖がらせてはいけないわ。
ミンスはきっと、来たばかりで皆を警戒しているだけ…。

しかしミンスは、私を睨みつけて言います。

「眠くなどありません。わたしく、クロマと同じ部屋が良かったです。」

クロマとミンスは別室。
本当は同室だったのですが、クロマが別室を希望したのです。
ミンスはクロマを睨みながら言いました。

「クロマなんて、グレネさんと一緒に遊んでおけばいいんです!」

そう言って布団に潜ってしまいました。

…ミンスの気持ちはわからなくもありません。
二人は最近、この教会へやってきた孤児。
急に見知らぬ子供達と、大人と生活するのにはまだまだ心の整理も必要でしょう。
普通の子供なら家族とずっと一緒にいたいに違いありません。
ミンスもきっと同じで、クロマと一緒にいたいはずです。
クロマは教会に来る以前の記憶をショックで失っているそうで、お陰で驚くくらい教会に馴染んでいますが。

クロマは呆れた顔をしていました。

「ミンスはいつまでも…。少しは他の者と関わったらどうなのだ?
部屋を別にした意味がなくなる…。」

そうです。
クロマはミンスに少しでも他の子と遊んで欲しくて、別室を希望したのです。
ですが、どうやらミンスには逆効果だったようです…。

するとグレネは言いました。

「クロマー、もう朝飯食って遊ぼうぜ~。」

クロマはそれを聞くと、ミンスを見て溜息。
それからグレネと共に部屋を出ました。
ミンスは出て行くクロマを見ていました。
と言うより、グレネを睨んでいるように見えました。
きっとミンスは、グレネに嫉妬しているのでしょう…。
どうにかして仲良くして欲しいですが…今のところは難しいようです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

後の祭り 

ねこまんまときみどりのことり
ライト文芸
 母親を馬車の事故で亡くしたナズナは、馬車に乗っていた貴族の男性に、義理の娘として引き取られた。引き取られた先の子爵邸では、義母や義妹に傷付けられて泣いて過ごすこともあったが、懸命に生きていく。引き取られた裏には、別の理由もあったようで。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

処理中です...