植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

番外編 セオーネ・バーリン 2

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私はミンスの近くへ来ました。

「朝ご飯、みんなとは別の方がいいですか?」

「はい。」

ミンスは冷たくそう答えました。

あとは何て声をかければいいでしょうか…。
そっとしておくべきでしょうか…。

「食べたい時になったらいらっしゃい。いつでも用意しますから。」

私はそう言い、そのまま部屋を立ち去りました。
廊下に出ると、私は窓の外を見ます。
外には、目を疑うほどの巨大な植物が沢山ありました。
この植物は、クロマ達がここに来てから急に生えだした謎の植物です。

…ここだけの話、クロマとミンスは人間ではありません。
いいえ。正確的には半分人間で、半分そうではないでしょう。

私は二人の両親と、かつて親友でした。
なのでわかるのですが、二人の母親は人間ではないのです。
人知を超えた力を持つ、神とも呼べる存在…。

この世界にはその力を狙ってか、二人の母親を追う者もいます。
二人がこの教会に来たのも、両親がその追っ手から二人を逃がす為…。

二人がこの教会にやってきた日の事を思い出します。
ミンスが泣いてそれを話し、この教会に来た日を思い出して涙が浮かんでしまいます。
家族と離れ離れになる悲しみ、それを背負って二人はここへやってきたのでしょう。

だから二人には、できるだけ負担はかけたくありません。
かつて親友だった実の子である彼等を…
何より、まだ小さな彼等に苦労をこれ以上かけたくないという思いがありました。



お昼も近い時間。
やっとミンスは起きてきて、一人で食事を済ませました。

ミンスはそれを終えると、クロマと遊ぶ為に外へ出ました。
施設の外には、簡易的に作られたサッカーゴール。
男の子の多いこの施設では、子供達はみんなサッカーをして遊びます。
ミンスはサッカーをしているクロマに言いました。

「クロマ、一緒に遊びましょう?」

「うむ?わかった。」

クロマは返事をしましたが、すぐにそこへグレネがやってきました。

「ミンスやっと起きたか!じゃあみんなでサッカーやろうぜ!」

「それもそうだな。」

とクロマ。
グレネが登場すると、すぐにミンスは不機嫌になってしまいます。
ミンスはクロマの腕にしがみつくと言いました。

「嫌です!わたくしはクロマと二人で遊びたいのです。」

ミンスはグレネを睨んで言ったので、グレネもその視線に悪意を感じてしまいました。
グレネもミンスを睨むようにして言います。

「ミンスはいっつもクロマとクロマとって、クロマ以外に遊ぶヤツいないのかよ!」

そう言われると、ミンスは言い放ちます。

「わたくしはクロマ以外要らないのです!」

そう言って言い合いを続ける二人。
私は止めようとしましたが、そこでクロマは言いました。

「落ち着けミンス、グレネもそのくらいにしてやってくれ。」

グレネはそう言われると、ミンスから視線を逸らして言います。

「そのくらいって、いっつもミンスの悪態を我慢してんの俺なんだけど!」

クロマはそれに溜息をつくと、更に続けます。

「私からミンスによく言っておこう。私はミンスと遊んでくる、またな。」

そう言ってクロマは、ミンスの手を引いてその場を後にしました。
ミンスはグレネに舌を出して「べ~」と言います。
グレネは怒りを感じているのか、足で地面を強く踏みつけました。
他の子供達は、グレネの周りに集まります。

「ミンスってホントに感じ悪いよね。」

それに対し、グレネは鼻で「フン!」と言うとミンスの後ろ姿を見つめました。

「俺達を敵みたいに見てて、あんま好きになれねぇ。」

「だよね!」

周囲の子供達はミンスに反感を持っているのか、みんな頷いてしまいました。
私が止めようとした時、グレネは言います。

「どんなにこの教会で俺達と過ごしたって、ミンスの家族はクロマだけなんだろうな。
教会のみんなは家族だって、牧師様から言われてるのに。
俺達じゃミンス達の家族になれねぇのかな、情けねぇ。」

グレネはそう言うと、サッカーボールを手に持って歩きます。
周りの子供達もグレネについていきます。
そして言いました。

「グレネは頑張ってるよ、ただミンスがわからず屋なだけだよ。」

「そうかな?」

グレネはさっきとは打って変わって、虚しそうな表情を見せていました。
グレネはミンスの態度に腹を立てながらも、仲間に入れようと必死な様でした。

グレネはこの施設では最年長。
だからか子供達の面倒をよく見てくれます。
二人が入ってきたばかりの時も、率先して二人に関わったのもグレネです。
クロマも最初はミンスと同じく閉鎖的な雰囲気でしたが、グレネのお陰ですぐに馴染んでくれました。

グレネは施設の子供達の誰とでも仲が良いのですが、ただ一人ミンスだけは違いました。
子供達を引っ張るリーダー的存在のグレネ、多分本人もよく自覚しているはずです。
自覚しているからこそ、輪から外れようとするミンスを心配し、時には腹を立ててしまうようです。
グレネは最年長と言っても、まだたったの十歳。
みんなを引っ張ろうと、頑張りすぎていないか私は心配です。

…。
グレネはとっても悩んでいる様子でした。

後で、グレネとお話でもしようかしら。
ミンスとクロマの事で。
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