一羽の天使、悪魔の村にまい降りて。

うてな

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47 セントポーリア:小さな愛

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ワレリーとガリーナはマサミを連れて、村へ続く森の道を歩いていた。
マサミは言う。

「”森…嫌。ガリナ、ワレリー。”」

マサミは森の虫を見てそう言うと、ワレリーは察したのかガリーナに言った。

「ガリーナ、あなたはマサミと共に森の外から村へ行ってくれますか?」

「ええ。」

ガリーナがそう返答すると、ワレリーはガリーナに言う。

「そうです。ニコライに会いに行ったらどうですか?
ニコライも同い年の子と遊びたいでしょうから。私はもう一度町に戻って買い物をしますので。」

「え…わかったわ。」

ワレリーは静かに頷くと、ガリーナはマサミと手を繋いで森を出る道を歩いた。

「じゃ、また会いましょうワレリーさん!」

「お気をつけて。」

こうして二人は別れると、ガリーナはマサミが気になる。

(言葉が通じない上に小さい子供…!ちゃんと面倒見ないと…!)

 =========================

ガリーナはパーヴェル達の家に着くと、扉をノック。
するとレギーナが出てきた。

「ガリーナ。」

「おはようレギーナ。
あのね、さっき隣町まで行ってたんだけど、ワレリーさんの知り合いから子供預かっちゃって。
ニコライと遊ばせてもいいかしら?」

レギーナは呆れた顔をすると言う。

「アンタの子供なんだから自由にすればいいじゃない。」

その言葉にガリーナは苦笑すると、マサミを連れて家に入った。

「ニコライー!」

ガリーナは呼ぶと、ニコライは走ってやってくる。
しかしレギーナの前にやってくるので、ガリーナはしょんぼり。
レギーナは嫌な顔をするとガリーナを指差した。

「アンタ馬鹿なの?アンタのママはあっち!さっさと遊んできなさい!」

ニコライはガリーナとマサミを見ると笑顔。

「ぱーん!いもー!」

「芋…」

ガリーナは苦笑した。
マサミは首を傾げると、ガリーナは紹介する。

「あの子は、ニコライ!」

マサミはニコライを見る。
ニコライは二人に飛びついてくるので、ガリーナは噛まれないようにニコライを抱っこした。

「コラコラ、ニコライ駄目でしょ。」

しかしニコライは暴れ、離れて欲しいのかガリーナの腕を叩いた。

「痛い…!やめてニコライ。」

それでもニコライはやめないので、ガリーナは困ってしまう。
マサミは言った。

「”ニカライ。”」

ニコライはマサミの声に反応すると、マサミはニッコリ。

「”ニカライ!こっち!”」

マサミはそう言って外に出るので、ニコライはマサミを追いかけようとする。
ガリーナは不安であったが、ニコライを下ろした。
するとニコライはマサミを追いかけ、ガリーナもその後ろを追いかける。

二人は追いかけっこをしていて、マサミは楽しそうだった。
マサミは村の花畑を走り、ニコライも一緒に走る。
背丈の高い花畑に、二人は大歓喜。

「あっ…そこはあんまり走っちゃダメ…!」

ガリーナはそう呟いたが、流石に小さな子供では花はビクともしなかった。
村人も二人の追いかけっこを微笑ましく眺めている。
そのままマサミは何もない坂道の前に来ると、一度立ち止まる。
ニコライも追いつくと、ニコライも立ち止まった。

坂には、二人の影が映っていた。
マサミは自分の影を見ると、自分の影を追いかける。

「”待て待て~!”」

ニコライは自分の影を見ると歓声をあげた。

「おーー!」

そう言ってマサミを見ると、マサミの真似をして自分の影を追いかけた。

「”まてまてーー!”」

ニコライはマサミの言葉を真似する。
ガリーナはニコライがマサミに噛み付くのではと心配していたが、それを見ると安心した。

(普通に遊べてるわ、よかった。)

ガリーナは多少の息切れをしつつも、再び二人を追いかける。
マサミは先頭を走っていると、足がつって転んでしまった。
続いてニコライが走って通り過ぎたが、マサミに気づいて立ち止まる。
マサミは目に涙を溜めていると、ニコライはマサミの方にやってきた。

「いも!」

ニコライはそう言って、マサミに手を伸ばす。
マサミは顔を上げると、ニコライを見つめた。

「”ニカライ…”」

マサミはニコライの手を握ると、なんとニコライはそのままマサミを引きずる。
地面でズリズリと音を立てて引きずられるマサミ。
マサミはそれが楽しいのか笑った。
笑い声を聞くと、ニコライも楽しくなったのか口元を笑わせる。

そして追いついてきたガリーナは、それを見て蒼然。
引きずられたマサミ、マサミの高級そうな坊ちゃん服は土に汚れていた。
でも楽しそうな二人を見て、ガリーナは止めるに止められなかった。

 ==========================

ニコライとマサミは一度帰宅。
ガリーナはニコライとマサミに飲み水を与えてやると、レギーナに言った。

「聞いてレギーナ!ニコライがね、人に噛み付かなかったの!
いつもは近所の子供に噛み付いちゃうんだけど。」

レギーナは興味がないのか言う。

「興味ない。てか、流石に人間と食べ物の区別くらいついて欲しいわ。」

ガリーナはそれにムスっとしてしまうと、二人の方を見た。

マサミは大人しく水を飲んでいると、ニコライはコップの水をなんとマサミに頭からかける。
ガリーナは蒼白すると、ニコライはコップをレギーナに出した。

「もっと!」

「ニコライ!何してるの!?」

ガリーナは聞くと、ニコライはコップを床に置いてマサミの頭をくしゃくしゃとする。
マサミはこれも遊びだと思っているのか、楽しそうにしていた。
するとニコライは言う。

「あらう!」

それを聞くと、ガリーナは全てを察した。

(あ…マサミくんが芋に見えるから…洗ってから食べようとしてるんだわ…
今まで食べなかったのも、洗ってないからって事だったのかしら…)

ニコライは変わっていないと痛感すると、マサミもニコライに水をかける。
マサミもニコライの頭を洗っていると、ニコライは不機嫌な顔をした。
それからマサミを突き飛ばすと、マサミはその場で転んでしまう。

「ニコライ!」

ガリーナはそう言ったがニコライはマサミと距離を詰め、なんとマサミの頬を平手打ちした。
絶え間なく叩くので、ガリーナはニコライとマサミを引き剥がす。

「やめなさいニコライ…!」

マサミはニコライに殴られて痛かったのか、泣いてしまった。
ガリーナはマサミの頭を撫でて宥める。

「大丈夫?ごめんねマサミくん。本当にごめん…!」

マサミはしくしくと、嗚咽をか細く上げながら泣いている。
ニコライはそんなマサミを見ると、急に大人しくなって呟いた。

「マーマ。」

泣いている姿が、ガリーナと被ったのだろう。
ニコライはマサミに再び近づくと、マサミを撫でるガリーナを見る。
マサミはガリーナに撫でられて落ち着きを取り戻すので、ニコライも真似てマサミを撫でた。
マサミは涙目でニコライを見つめると、ニコライは腰に隠していた楽器を取り出す。
それからマサミの前で振ると、笑顔で言った。

「あーー!」

ガリーナも呆然とそれを見ていると、マサミはニコライの笑顔に釣られて笑う。
ニコライはマサミの笑顔を見ると、機嫌が良くなった。

「”ニカライ!”」

マサミはニコライを呼ぶと、ニコライはマサミをぼーっと見る。
ガリーナはそんなニコライを見て、優しく言った。

「マサミ、って言うのよ。」

ニコライはそれを聞くと、驚いた様子でガリーナを見る。
ガリーナは首を傾げると、ニコライはすぐにマサミを見て言った。

「マサミ!」

すると、マサミはリビングを走り回って言う。

「”ニカライ!こっち!”」

ニコライもマサミを追いかけると言った。

「マサミ!”こっち!”」

それを聞くと、今度はマサミがニコライを追いかける。
ニコライは楽しそうな声を上げ、逃げ始めた。
二人の騒がしさに、レギーナは不機嫌な顔をしてしまう。
ガリーナは勿論、その光景を見てとても嬉しく思った。
思わず目に涙を溜めてしまうくらい。

二人は暫く、家の中で追いかけっこを楽しんでいた。


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