一羽の天使、悪魔の村にまい降りて。

うてな

文字の大きさ
55 / 61

55 ポインセチア=私の心は燃えている

しおりを挟む
やっとの思いでワレリーもレモンパイを完食すると、ニコライは館を冒険。

「おーはな おーはな」

ちなみに二人はニコライの後ろを歩いていて、ニコライは楽器を振りながらご機嫌だった。
ニコライはとある寝室の扉を覗くと、ベッドを見つけて二人に言う。

「ねる!」

「え?」

ガリーナは驚くと、ニコライは布団に飛び込む。
ワレリーとガリーナは顔を見合わせていると、ニコライは寝たままダダをこねるように二人を呼んだ。

「マーマ!パーパ!」

二人はベッドまで来ると、ガリーナはニコライの隣に寝た。
ワレリーはベッドの前で立ち止まっていると、ニコライは不機嫌な顔をしつつ、ワレリーを見ながらベッドを指差す。
ワレリーは苦笑しつつも寝ると、シングルベッドで狭い為か、三人は詰め寄って寝た。

ニコライは暫く楽器を振っていたが、飽きた為布団に置く。
するとニコライはガリーナとワレリーの顔をそれぞれ見ると、二人は微笑んでくれた。
二人の笑みを見ると、ニコライは急に無愛想な顔をして黙り込んだ。
ワレリーはニコライの異変に気づいていると、ニコライは手を伸ばしてガリーナの手を掴む。

「マーマ…」

ガリーナはニコライを見て目を丸くすると、ニコライは更に手を伸ばしてワレリーの手も掴んだ。

「パーパ…」

ワレリーはそっとニコライの顔を覗き込むと、ニコライは頬を膨らませて目に涙を溜めている。
ガリーナはそれに気づいたのか驚いて起き上がってしまう。

「ニコライ!?」

その声にニコライは驚いたのか、うつ伏せになって布団にしがみついた。

「ヤダ!そと、ヤダ!」

ニコライは掠れた声で訴える。
ガリーナは今までにないニコライの反応に戸惑うと、ワレリーは優しくニコライの背中を撫でた。
ニコライは顔を上げてワレリーを見ると、ワレリーは言う。

「大丈夫、私達はニコライを追い出しませんよ。」

ニコライはワレリーの服にしがみつくと、ワレリーはガリーナに言った。

「寝なさいガリーナ、ニコライが怖がっています。」

ガリーナは言う事に従って一緒に寝ると、ガリーナもニコライの頭を撫でる。
するとニコライはガリーナの方にも振り向くので、ガリーナは微笑んだ。

「マーマ!」

ニコライはガリーナにしがみつき、ガリーナはニコライを優しく撫でてあげた。

「ごめんね、驚かせちゃって。」


暫くしてニコライは落ち着いたのか、二人の手を重ね、更に自分が二人の手を包むようにして握る。
二人の手はあまりにも大きすぎて、ニコライの小さな手では包めない。
その為ニコライは不機嫌な顔をして言う。

「あかちゃん」

「え?」

ガリーナは目を丸くすると、ニコライはガリーナのお腹を触った。

「あかちゃん!」

「えっ」

ワレリーは声を出してしまうと、ガリーナは目が点になる。

「誰から習ったのそれ…」

ガリーナは呟くと、ワレリーはニコライに言った。

「が…ガリーナにはいませんよ…」

「な、なんで急にそんな言葉を…!」

ガリーナは慌てると、ワレリーは暫く考えてから言う。

「…ガリーナ、お話があるのですが。」

「え?」

ワレリーの言葉にガリーナは更に目を点にすると、ワレリーはレギーナの事を話した。


話が終わり、ニコライはいつの間にか眠っていた。
一通り話を聞いたガリーナは、気を落として言う。

「レギーナがそんな事を…」

「パーヴェルにも話したそうですね。
パーヴェルは、責任を持って受け止める姿勢だそうです。」

「そっか…それならいいんだ。
レギーナがパーヴェルくんに嫌われていなかったらそれで。」

ガリーナは微笑むと、ワレリーは困った表情を見せた。

「勘違いして欲しくないところは、パーヴェルは子供に関しての責任を負おうとしているだけである事。
レギーナに気が移ったわけではありませんし、勿論ガリーナを愛してしますよ。」

「わかってる。」

ガリーナは笑うと、ガリーナはスヤスヤと眠るニコライ手を軽く握る。

「ワレリーさんはどう思ってるの?」

ガリーナが聞くと、ワレリーは眉を潜めてからニコライを見つめた。

「…二人が新しい命を大切にしてくれる事を願います。
悪魔も…神も…この村にはいないのですから。」

ワレリーはそう言うと、ガリーナの手を握る。
ガリーナはワレリーの顔を見ると、ワレリーは真剣な顔をして言った。

「ガリーナ。ニコライを連れ、私と共に海外へ来なさい。」

ガリーナは驚いて言葉を失う。
ワレリーが握る力は強いが、ただ力任せにといった感じではない。

「私はガリーナを愛しています。
無論、ニコライも愛しています。

私は、ニコライの父になりたい。
あなたの、傍にいたい。」

ワレリーの熱い視線に、ガリーナは一切目を離す事ができなかった。

「あなたと初めて出会った時から気になり始め、大きくなった今では形容できないほど好きになっています。
とは言え、その大きな感情に気づいたのはつい最近…なのですが。」

「ワレリーさん…」

ガリーナが呟くと、ワレリーは照れ臭そうに微笑む。

「ごめんなさい、自信がついて調子に乗っています。
ニコライは私の事をパパと呼び、今ではガリーナとこれほど良い関係を築けているのです。
その上、今は気持ちの整理がついていて、想いが強く溢れてしまいます。」

そう言われたガリーナは、驚きを通り越して動揺。

「えっ、でも二人から選ぶなんて…!」

「おや?迷っているのですか?つまり私にもチャンスが?」

ワレリーは意地悪に微笑んでそう言うと、ガリーナはギクッとして表情を歪める。
ワレリーはガリーナを真っ直ぐ見つめた。

「私のものになってもらいますよ。」

ガリーナは涙目になってしまう。

(違う…!違うの…!どっちかを選んだらどっちかを傷つけちゃうの嫌なの…!)

すると、ニコライは目を覚ます。
二人は急に動いたニコライに驚いていた。
楽器を持って布団から降りるので、二人は起き上がってニコライを見る。

「ごはん…」

ニコライは寝ぼけてそう言うと、楽器を落としてしまった。
楽器は木で出来た床に落ちると、音が鳴る。
まるで、バチがついていた時の様に。
ニコライはその音を聞くと目を丸くした。

「あー!」

楽器を拾うと、ニコライはもう一度楽器を落とした。
再び音の鳴る楽器。
ニコライは嬉しくて飛び跳ねた。

「あーー!マーマ!パーパ!」

ニコライはそう言って二人に笑う。
ワレリーはクスッと笑うと、ニコライに言った。

「良かったですね、ニコライ。」

ガリーナはニコライが嬉しそうに遊んでいるのを見て、胸に手を当てる。

「良かったね。」

ニコライは暫くの間、楽器を落として遊んでいた。

 ==================

お誕生日会が終わった夕方、ガリーナは家までニコライを送っていた。
家にガリーナは入ると、リビングへ向かう。

「レギーナいるー?
ニコライが帰ってきましたよー。」

するとリビングにはレギーナだけでなく、パーヴェルもいた。
パーヴェルはガリーナに微笑むと、次にニコライを見て言う。

「おかえり。誕生日プレゼントは貰ったか?」

パーヴェルはニコライに対しては、表情に活気がないがそう聞いた。
ニコライは言う。

「あかちゃん!」

「ハア!?」

パーヴェルは過剰に反応してガリーナを見ると、ガリーナは苦笑。

「一緒にレモンパイを作っただけよ。
ほら、二人の分もあるわよ。」

パーヴェルはそう言われると、すぐに目を輝かせた。

「ガリーナの手作りい!?」

ガリーナはニコニコして言う。

「ニコライも生地を伸ばしたのよ?あとワレリーさんがメレンゲ作ってくれたの!」

「ひゃー!これは今食って感想言わなきゃ!」

パーヴェルはその場でパイを食べようと包丁を持ってくる。
パーヴェルはレモンパイをひと切れ切ると、大きな口でそのまま頬張った。
ニコライはそれを見て羨む。

「レモンパイー!」

ニコライは飛び跳ねてパーヴェルにしがみつくと、パーヴェルは嬉しそうに言った。

「美味い!!幸せ!」

パーヴェルはそう言ってもう一口。
幸せそうにご飯を食べるパーヴェルを見て、ガリーナは懐かしさを思い出して目に涙を溜める。
パーヴェルはガリーナを見ると、口にパイが入ったまま言った。

「どうしたガリーナ!」

「え…いや、なんか懐かしいなって…一緒に暮らしてた頃が…」

そう言われると、パーヴェルは目を丸くする。
それからパイを飲むと、笑顔になった。

「俺も。久々にガリーナの手料理食べられて幸せだぜ!」

レギーナはそんな二人に妬けていると、ガリーナは言う。

「実はね、さっきワレリーさんから告白されちゃって…迷ってるの私…」

パーヴェルはそれを聞くと、一度目を丸くしてから再び笑顔に。

「愛されてるな~ガリーナは!
にしても兄様もよくやった!にひひ!」

ガリーナは眉を困らせてパーヴェルに言う。

「も~真剣に悩んでるんだからね。」

「仕方ないな~!」

パーヴェルはそう言うと、一度頷いてから言った。

「今夜、兄様と決闘しよう。」

「え?」

ガリーナは目を丸くすると、パーヴェルはパイをひと切れ平らげてしまうのであった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...