嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶

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1章 嫌われ者は学園を去る

第8話

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  ───っはぁ、、、、はぁ、、ん"、っ、、う"ッ、、ケ"ホッ、ゲホッ"、カ"ッ、、、はぁ、はぁ"……

 (つ"ッ、つ"か"れ"た"っ、、、。)

 正門の近くにある木に手をつきながら必死に息を整える。ただでさえ体力のない僕に全力疾走はかなり堪えたようで中々呼吸が元に戻らない。授業が始まり、人がいない正門の辺りで僕の荒い息の音だけがひどく響いた。
 エル達のことは何とか巻けたようでもう声は聞こえない。授業もあるしさすがに諦めたのだろう。安心してほっと息を吐き出した。

 「はぁ…。そろそろ行かなくては…。」

 憂鬱な気分になり、ぱしっと頬を叩いて気合いを入れる。すぐそこにある正門を出て少し歩けば馬車の乗り場だ。
 正門を守る騎士になるべく気づかれないように忍び足で通り抜ける。騎士が守っているとは言ってもこの学園は基本的に結界で守られているのでお飾りみたいなものだ。現に今も2人揃って寝こけている。大層なご身分だ。

 小走りで馬車の乗車所に行くと御者の姿が見えない。普段は大体この辺りに立っているのに。馬の世話でもしているのかとすぐ側の馬小屋を覗きに行ったがそこにもいなかった。

 (仕方がないから諦めて別の方法を探すか…。)

 そう思って馬車の横を通り過ぎようとした時、馬車の中にちらっと人影が見えた気がした。
 まさかこんなところで寝ているだなんて…と思いつつつま先立ちをして覗き込んでみる。


 、、、、、、、、、、、、いた。


 騎士だけでなく御者まで仕事をサボって寝ているとは…。果たして大丈夫なのだろうか。
 馬車の中で気持ちよさそうに眠る中年男性を見ながら呆れる。どうやら学園の理事長は人を見る目がないみたいだ。

 しかし、困ったことになってしまった。御者がいないと馬車にも乗れないし、自分で動かそうにも経験が一切なかった。乗馬自体は何とかできるがお世辞にも上手とは言えないので正直最終手段にしたい。

 (と、なると、、、、。)

 馬車の方をちらっと見る。御者は未だ起きる気配が無い。本当に最悪なタイミングで来てしまった。
 度々馬車を利用しているといっても僕の場合御者にも当然のごとく嫌われているので利用したい時に毎回乗せてもらえる訳では無い。時にはより高額な料金を請求されることもある。そのため、馬車を利用したいとなると割と苦労するのだ。

 (仕方がない…。)

 僕は意を決して馬車の扉を強めに叩いた。しんと静まり返った空間にコン、コンというノックの音だけが響く。
 しばらく同じ動作を繰り返しているとギシギシと音を立てて大きな図体を持ち上げる御者が見えた。

 ここからが勝負だ。御者は寝起きで既に機嫌が悪そうだ。その場から動かないまま固唾を飲んだ。
 少し離れたところに立っていた僕は近づいて来た御者が馬車のドアに手をかけたのとほとんど同時に深く息を吸い込んで出てきた御者にむかって口を開いた。




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