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1章 嫌われ者は学園を去る
閑話 sideルレディオ
しおりを挟む「あーーーーーっ!!お金っ!!!」
五月蝿い。誰かが叫ぶ声に目が覚めた。
明日から通う予定のこの学園の下見に来た俺は護衛をまいて学園の中にある森の木の上で眠っていた。
隣国との交流のためだとか何とか理由をつけられて体良く追い出された俺はこの国の王子と交流とやらをしなければならず3つも下の奴らと同じ空間で授業を受けなければいけない。正直死ぬほど憂鬱だった。
ただ、この国の3分の1ほどの国土しか持たない自国にはないだだっ広い学園の構造には興味があり、わざわざ前日に来て見学していたのだ。俺は自由に見て回りたかったが、学園側と自国からの案内役と護衛という名の監視役共がオマケとして着いてきた。監視役同士、反りが合わないのか俺を挟んで常に睨み合う。お前ら俺の監視はいいのかよ。
そう思いつつ、言い表せないほど窮屈な状況から隙を見て抜け出して勝手に見て回ってたのだ。まあ、結局は抜け出して早々、こんなところで寝てしまっていたが。
段々と目が冴えてきて声が聞こえた方を覗き込んでみる。
この学園の生徒だろう。制服に身を包んだ白髪の華奢な男が頭を抱えてしゃがみこんでいた。
(なんだコイツ。変なやつだな。)
うんうんと唸っている青年に妙に興味を引かれてつい話しかけた。少しからかってやると大袈裟な程に反応して顔を真っ赤に染める。俺の言動に全力で振り回されてるのが段々と可愛く見えてきた。
ついつい反応見たさにからかい続けているとキャパオーバーだったのふらっと意識を失ってしまった。
(まじか。耐性がないにも程があるだろう。)
咄嗟に支えてやったがあまりにも体が軽くて心配すると同時にやりすぎたことへの罪悪感をおぼえる。ずっと立って抱えてやるのはさすがに辛いのでさっきまで寝てた木の幹に座り込んで俺の太ももの上に小さな頭を乗せてやった。
柔らかな白い髪をゆっくりと撫でてやるとむにゃむにゃ言って擽ったそうに身じろぐ。のんびりと眠る猫のようで久々に癒された。
なんだかつられて眠くなってきてぼんやりと自分の足の上で眠る青年を眺めているとなにか手帳のようなものが落ちているのに気がついた。
拾いあげて見るとそれはこいつの生徒手帳だった。
「リアム…カンタビア……?」
どこかで聞いたことがある気がする名前に首を傾げる。が、なかなか思い出せずにモヤモヤしていると眠っていたリアムが急に飛び起きた。再び頭突きされそうになったのを咄嗟に身を引いて避ける。
リアムはしばらくキョロキョロして俺の存在に気づくと、警戒心むき出しの猫のようにして俺から距離をとった。
(そんなに警戒しなくてもいいのに。)
反応が可愛らしくて思わず口角が上がる。そんな俺に警戒と動揺を隠せてないリアムをからかってやると思っていた反応と違った。
俺を無視してどこかへ行こうとするリアムを反射的に引き留める。
ほとんど無意識の自分の行動への驚いたもののすぐにそれを悟られないように誤魔化そうとする。リアムと目が合うと桜色の瞳にじっと見つめられて頬に熱が集まった。
その事に気付かないふりをしてリアムの手を引き、隣に座らせた。
最初は不機嫌そうに俺と会話してたが、会話が進むにつれ、リアムの口数は減り、表情はなくなっていった。
なぜ名前を知っているのか聞かれた俺いまだ手に持ったままだったそんなリアムに生徒手帳を返そうとした。
が、それは失敗に終わる。
リアムを呼ぶ声が少し遠くから聞こえてくる。どうやらリアムのことを探しているようだ。
何かあったのか聞こうとリアムの方を見ると立ち上がって駆け出すところだった。
咄嗟に引き留めようと手を伸ばしたがするりとかわされてしまう。
走り去っていくリアムの後ろ姿を見つめながらただただ呆然と立ち尽くしていた。
先程見たとき書いてあったクラスは自分と同じだったが、なんとなく胸騒ぎがして手の中の生徒手帳をきつく握る。
(明日…。明日、返せばいいよな…。)
モヤモヤした気持ちを隅に押しやって明日からの学校生活に思いを馳せた。
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