嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶

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1章 嫌われ者は学園を去る

第7話

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 「、、、で?結局なんで僕を引き留めたんだ?見知らぬ男に構ってる暇はないんだが。」

 男に隣に座るよう促されたのを断ってわざわざ引き留めた理由を聞こうと金色の瞳をじっと見つめた。男の頬がほんのり赤く染まり、視線を逸らしたかと思うと僕の言ったことは華麗にスルーしてまあまあとか何とか僕を宥めるように頭を撫でると掴んでいた手を引き、自然な流れで僕を隣に座らせた。
 この男の耳は聞こえていないのだろうか。僕がキッと睨みつけても効果は無いらしい。上機嫌ににこにことしている。

 「つれない事を言わないでくれ。知り合いだったら俺に時間を割くんだろ?俺はルディだ。これで知らない仲じゃないな?リアム。」

 この時、男が偽名を教えてきたことぐらい僕にもわかった。雰囲気やちょっとした所作から感じる気品は明らかに平民ではない。何か事情があるのだろうか。そう考えたが、僕には関係ないかと思い直す。とりあえずこの男をルディと呼ぶことにして先程からの疑問を投げかけた。

 「ところで何故僕の名前を知っているんだ?」

 そうなのだ。何故かルディは教えてもない僕の名前を先程から呼んでいる。
 かたや偽名(?)でこっちは言ってもない名前がバレているなんて不公平ではないか。そう思うものの、なんとなく理由は想像できてる。大方僕の噂を聞いたことがあってこの醜い容姿で噂の人物だと気づいたのだろう。
 段々と自分が冷静になっていくのを感じる。
 ルディは僕の問いかけにつらつらと答え始めたが、深く考え込み始めた僕の耳には届かない。

 (感情を隠すのが上手いんだな…。)

 こういう人間が周りにいなかった訳では無い。
 そういうのは友好的な態度で近づいてきて僕が気を許し始めると豹変し、他の奴と同じように僕を貶しながら暴力を振るって来るようになるただの性格の悪いやつがほとんどだ。
 しかし、そういう奴の中に稀に本当にヤバい奴が混ざっている。僕を奴隷として売り飛ばそうとしてきたり、空き教室に急に呼ばれたと思ったら複数人で強姦してこようとしたりするのだ。醜く、悪い噂も絶えない嫌われ者の僕になら何をしてもいいと思っているのだろう。本当に腹が立つ。
 今までは何故か僕がそういうことをされそうになると現場に義弟のエルが飛んできて助けてくれていた。
 だが、さすがに申し訳なくて最近はいくら友好的であろうと関わらないようにしてきた。ミラは例外だが。

 緩んでいた気を引きしめる。危なかった。もうエルは僕を助けてはくれないだろう。今ここでこいつになにかされてもひ弱な僕ではどうすることも出来ない。

 (隙を着いてどうにか逃げよう。)

 今度こそと決意を固める僕が話を聞いてないことにようやく気づいたルディが口を開いた時だった。

 「おい。リア「リア兄様~?どこ行っちゃったんですか~?」」

 「な、なぁ。本当にリアはこの辺にいるのか?」

 少し遠いところから聞こえる声に目を見張った。エルとマリーの声だ。
 きっと優しいふたりのことだから嫌いな僕のことでさえ突然いなくなったことで心配してくれているのだろう。
 嬉しくて胸の辺りが温かくなる。

 だがしかし、今ここで彼らの優しさに甘えているわけにはいかない。いつも僕に優しく接してくれたふたりには邪魔な僕が居ないところで幸せになって欲しい。

 声の大きさからしてまだ僕でも走ればまける位置にいるだろう。
 スっと立ち上がった僕はルディの僕を引き留めようとする手をするりとかわし、全速力で走り出した。




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