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出会い~ライラック王国編~
複雑な兵士
しおりを挟むいつの間にか用意されていた服に着替え、ミナミは浴室と洗面所を通り、部屋に出た。
浴室を出てすぐに寝室ではなく、洗面所を挟んでいる。
だからミナミは安心して洗面所で着替えることができた。
部屋の出ると、すでにルーイが着替えた状態でいた。
更にアロウと用心棒の二人もいた。
「紹介が遅れました。俺はアロウと…こっちがイシュ、こっちがモニエルです。」
とアロウは自分と用心棒の紹介をした。
イシュと呼ばれたのは、白髪で赤い目の色白の青年で、モニエルと呼ばれたのが、茶色の髪と茶色の瞳をした顔に傷のある青年だった。
「えっと…ミナミです。」
ミナミもとりあえず自己紹介をして頭を下げた。
「彼はルーイです。」
ミナミは気が付いたら自分の横にいたルーイを指して紹介した。
ミナミの紹介にアロウだけが礼をした。
用心棒の二人は、どうやら礼を尽くすような仕事ではないようだ。
「それよりも…城で何があったんですか?」
アロウはそれが気になるようだ。
ミナミはルーイを見て頷いた。
「…噂では、帝国側が国王陛下を殺したと…」
「違う!!」
ミナミは大声で否定した。
そして魔力がピカっと光ってしまった。
その様子にアロウと二人の用心棒は目を丸くした。
「そんな噂信じないでください。」
ミナミは慌てて取り繕うように言った。
アロウは首を振った。
「もちろん信じていないです。帝国側がそんなバカなことをするはずが無いと…話していました。」
彼は魔力が光ったことに関しては全く触れないようだ。もしかしたらミナミのこの光らせる癖を知っているのかもしれない。
「はい。」
ミナミはアロウの様子を見て安心した。
ミナミは父親が第二王子であるホクトに殺されたことや、それを目撃してしまったために逃げていること、ルーイはオリオンの命でミナミに付いたことを話した。
そして、その際に帝国からの客人に匿ってもらったことも。
「…帝国からの客人…か。」
モニエルは何やら意味深に呟いた。
「第一王子のオリオン様は事態が落ち着くまでミナミを安全なところに置くように仰っていました。なので、国王陛下から聞いたこの宿を選んだんです。」
ルーイは付け足すように言うとアロウを見た。
アロウは頷いた。
「その話を聞く限り…城の中で一番信用できるのはオリオン王子だけだな…」
アロウは考え込むように呟いた。
「そう…ですね…」
ルーイも同意のようだ。
「えっと…助けてくれたフロレンスさんは?あの人のお陰で私は…」
「彼は異国の人間です。あなたが捕まった時の方が得が無い。」
アロウは断言した。
ルーイも同じように頷いていた。
「信用するな…ミナミ。」
ルーイはミナミの肩を叩いた。
アロウとルーイは同じ意見のようだ。
それに後ろの用心棒も強く頷いていた。
確かに彼らの言う通りかもしれないし、そうなのだろう。
ミナミはオリオンを今一番信用している。
だが、フロレンスに対しても同じような想いを持ちたいと思っている。
これは、願望だった。
ただ、今ここで口に出していいことではないのはミナミも分かった。
「…はい。」
ミナミは彼らに同意するように頷いた。
「とにかくこちらができることは、万一に備え、逃亡の準備くらいだ。情報収集はどうにかするから、二人はもう休みなさい。」
アロウはミナミとルーイを見て言った。
彼の言葉に従い休むことにしたが、ルーイは気まずそうな顔をした。
「どうしたの?」
「いや…同じ部屋なんだな…」
ルーイは自分とミナミが同じ部屋なことが気まずいようだ。
「代わろうか?君より腕は立つよ。」
白髪の青年、イシュが愉快そうにルーイを見ていた。
「いや!!大丈夫です!!」
ルーイは凄まじい勢いで彼を見て首を振った。
ミナミは心配になってルーイを見た。
自分と同じ部屋なのがもしかしたら窮屈なのかもしれないと思ったのだ。
「無理しなくていいよ。ルーイ。お兄様もきっと一緒に寝ろとは言っていないから」
ミナミはルーイの両手を取り、慰めるように笑いかけながら言った。
「絶対言わないけど…別の奴の方が危険だからいい。というよりも無理はしていない。」
ルーイは慌てて取り繕うようにミナミに笑いかけた。
「嫌だからじゃないの?」
「いや…ミナミが嫌なんじゃないかと…」
「別に気にしていないよ。だって、ルーイは大切な友達だから。」
ミナミは安心させるようにルーイの手を揺らしながら、首をコテンと傾けた。
その様子を見てアロウたちが溜息をついているのがミナミの視界に入ったが、彼等が何を考えているのかはミナミにはわからなかった。
結局ルーイと同じ部屋で休むことになり、部屋の外にイシュとモニエルが交代で付くことになった。
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