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ライラック王国~ダウスト村編~
構える青年たち
しおりを挟む窓の外には馬に乗った複数の男達が見えた。
覗こうと思って立ち上がろうとしたら、またシューラに押し込められた。
「君はここにいな。」
シューラは鋭い口調で言った。
それには逆らえないものがあり、ミナミは頷いてまたソファに座った。
マルコムは窓を外から見えないように覗き込み様子を見ている。
イトもマルコムと逆サイドの窓の縁に身を寄せて外に視線を走らせている。
「…覆面の男…達か。武器もあるね。」
マルコムは舌打ちをすると、荷物の方に向かい槍を取り出した。
「外に行くなら俺も行く。」
イトは切れ長の目を細め、村まで歩いていた時のような気の抜けた表情からは考えられないような鋭い雰囲気をさせていた。
マルコムはその様子を興味深そうに見たが、直ぐに引き締まった表情をして頷いた。
「イシュはお嬢さんをお願い。」
「わかった。」
マルコムにシューラは頷いた。
マルコムとイトが窓に手をかけて開けようとしたとき
廊下から慌ただしい足音が聞こえ、勢いよく扉が開かれた。
素早くシューラが刀を抜いて切り上げられる体勢を取った。
「俺だ!!待て待て!!」
扉を開けたのはガイオだったようで、シューラの様子に慌てていた。
「扉閉めなよ。」
シューラは涼しい顔で刀を構えたままガイオを見ていた。
ガイオはシューラに言われるまま扉を閉めた。そして、彼に刀を構えるのを止めるように言った。
「イシュ君…予想以上の手練れだな…君もそれ並?」
イトが興味深そうにマルコムを見ていた。
「今は外のクズどもだよ。」
マルコムは蔑むような目を外の盗賊と呼ばれた者達に向けていた。
外の盗賊は馬を大げさに騒がしくして走り、外に出ている者に襲い掛かるというか脅すように大げさに攻撃をしようとしている。
「待て二人とも…外部の人間にそこまで手を煩わせることは…」
ガイオがマルコムとイトを止めようとした。
「俺、ああいうクズ嫌いなんだよ。」
マルコムはガイオに視線を向けるとすぐにまた窓の向こうを見た。
「俺は、この村を狙う輩に興味がある。」
イトはガイオに視線を向けることなく、窓の向こうを見たままだ。
「…止められても俺は行くから。」
マルコムは窓を開き、縁に足をかけた。
「止めない。」
ガイオは俯きながらもしっかりとした声で言った。
それを聞いた途端マルコムは窓から飛び出した。それに続くようにイトも飛び出した。
部屋は二階だが二人とも綺麗に着地した。
外にいるのは馬に乗って武器を持った物騒な男達だ。
マルコムとイトの装備はどう見ても劣っている。
ミナミは部屋に置いてある荷物を見て、その中にまだ武器があることを思い出した。
マルコムたちの持つ武器では足りないのではと思い、荷物の方に駆け寄ろうと立ち上がろうとした。
何かできるわけではないが、不安がミナミの身体を動かした。
シューラはミナミの肩に手をかけた。
「あいつは大丈夫だよ。」
シューラはミナミを見て頷いた。
「見たでしょ。あいつが小屋の壁をぶっ壊すところ。」
「…うん…でも」
「…今更何かできるわけじゃないから。大人しくしてよ。何かあったら僕が行く。」
シューラはミナミの不安が拭えない様子を見て、何を言っても無駄だと思ったようだ。
「わかった。」
ミナミはシューラに従いソファに座ったままでいた。
「外の様子を見てくれる?ついでに窓も締めて。」
シューラは扉の前で立っているガイオを見て言った。
お世話になるのに関わらず丁寧な口調でないのは、今が緊急事態だからだろう。
「わかった。」
ガイオは窓に駆け寄った。
彼は窓を閉めようとしたようだが、手が止まった。
外を見て呆然としている。
「あの…どうし」
ミナミはガイオの様子から更に不安が煽られた。
「…イシュとやら…。」
「モニエルは…何者だ?」
ガイオは目を見開いて驚きを隠せない様子でシューラに訊いた。
ただ、目線は惹き付けられるように外を見たままだった。
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