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【星巡り】
【愛のある星】
しおりを挟むその星で出会ったのは、ひとりのとても美しい女性だった。
「愛よ! 私たちには愛があればそれでいいの! だって、愛って素晴らしいじゃない? ……ねぇ、お嬢さん? 貴女もそう思うでしょう?」
美しい女性は、煌びやかなドレスを揺らしながら私に近付く。
この星は、愛で満ちている。少し瞳を動かせば、あちらこちらに恋人と思しき人々が映った。
──貴女にも、好きな人が?
女性に訊ねると、花のような笑みが向けられた。
「勿論よ! 好きな人は沢山いるわ!」
──【沢山】?
周りの人々をよく見てみると、女性の言っていることが分かる気がする。
約束の時間が過ぎたのか、とある一組の男女は別れた後、また別の男女に会っていた。……どうやら、この星は愛に溢れている星らしい。
──相手にも、貴女以外に好きな人がいるのですよね?
──貴女はそれを、寂しいとは思いませんか?
女性は、目を丸くした。
「『寂しいかどうか』ですって? とんでもない! だって、私はその人に愛されているのよ? そして、私もその人を愛している。だったら、これ以上に素敵なことなんてないんじゃないかしら?」
──なるほど。
この星で重要なのは、愛があるかどうか。愛があるならそれで良くて、ないならそれまでらしい。
興味深い星だとは、思う。ここで暮らしたなら、私はきっと寂しさを感じないのかもしれない。
──もうひとつ、質問してもいいですか?
「勿論! なんでも訊いてくださいな!」
女性の笑みに頷いた後、私は訊ねた。
──貴女の愛する人が無一文で、なんの地位がなくても。……貴女はその人を、愛していられますか?
女性は……やはり、笑みを崩さなかった。
「──当然よ! だって私、その人のことをお金で愛したわけじゃないもの! お金で愛したのなら、それはその人を好きなこととイコールにはならないわ!」
──どういうことでしょうか?
女性は意気揚々と、まるで惚気話を聞かせるかのような高揚ぶりを見せる。
「お金があるから愛した。……それって、お金の付属品を愛したことにならないかしら? お金を持っている誰かを愛したのなら、それはお金と付き合うことができないから、付属品であり且つ、付き合うという行為ができるその人と付き合っているということでしょう? 地位に関しても、同じことが言えるわ。……違う?」
それは……私にとって目から鱗が落ちるような話だった。
それが、この星の【愛】。この星の、全てなのだ。
──お金がなくても、愛があるのなら。……貴女は、幸せですか?
私の呟きに対する返事は、私に対するものではなかった。
「──あっ! あの人こそ、私の愛する人だわ! 待って~、素敵な彼~!」
不意に。
私は女性から、押し退けられた。
足を踏み外した私は。……そのまま、星から落下した。
「あぁ、そうそう。そう言えば、貴女……どうして──」
女性の声が、よく聞こえない。
愛のある星が、どんどん遠ざかっていく。
……もしも、もしも。
あの星の人々が、愛する人と引き離されたら。彼女たちは、どう思うのだろう。
あの星から落下していく私には、到底分かるはずもない話だけれど。
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