短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【花言葉には頼らない】

6話【ストレプトカーパスの花言葉は『信頼に応える』】

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 鳥羽井が自分の家に田塚を招いた、数分後。


「──誠に、申し訳ございませんでした……!」


 田塚が、頭を下げた。

 怪我もなく、結果としては未遂で終わったが、掴みかかったのは事実だ。深々と、田塚は頭を下げ続けた。

 頭を下げる田塚に対し、父親は笑みを浮かべる。


「いやいや、気にしないでくれ。……むしろ、娘を守ろうとしてくれたんだ。心配してくれてありがとう」
「滅相もございません……」

「それに、君が店長さんだろう? いつも娘がお世話になってます」
「滅相もございません……!」


 頭を下げ続ける田塚のもとに、鳥羽井が近寄った。
 そして、お茶の入った湯呑を置く。


「馬鹿。早とちり。人騒がせ。女たらしの最低男」
「うぅぅ! いつも以上にキミの言葉が刺さるっ!」
「ハッハッハ! ……そうだ! せっかく来てくれたんだしなにか手土産を渡そうか!」


 二人のやり取りを眺めた父親はそう言い、席を立つ。
 茶の間で二人きりになり、鳥羽井は頭を下げる田塚を見つめた。


「なんで、走って追いかけてきたんですか」


 隣に座り、ポツリと呟く。


「私は、店長のことを、きっと傷つけました。店長にとって、私はただの【お花】なのに……そのことに、腹を立ててしまって。私は、店長の善意を拒絶しました」

「──違うよ」


 すかさず否定の言葉を口にした田塚に対し、鳥羽井は目を丸くする。

 ──すると、突然。……田塚に、手を握られた。


「違う。キミは他の花──女性とは、違うよ。さっきのは……少し、カッコつけたくて。だから咄嗟に出た、ただの建前って言うか……」


 いつも流暢に女性を口説く田塚を知っている鳥羽井としては、今目の前に居る田塚の様子が、見慣れない。

 だからこそ。


「……ふっ、あはっ」
「えっ? こ、この場面で笑うのっ? どうしてっ?」
「もうっ、あははっ。店長、いつもとギャップありすぎですよっ」


 鳥羽井は、笑ってしまった。
 その姿は逆に、いつもツンとしている鳥羽井を知っている田塚としては、見慣れない。

 ──だからこそ。


「或兎ちゃん」
「えっ。て、店長、なに……っ?」


 田塚は、距離を詰める。
 手を握られ、距離を詰められ。田塚に片想い中の鳥羽井が、動揺しないわけがない。

 そんな鳥羽井にまるで、追い打ちでもかけるかのような勢いで。田塚は鳥羽井の瞳を、真剣に見つめる。


「僕、初めて会った時から──」


 田塚が口を開いた。

 ──その時だ。


「──ンンッ! ンンッ!」
「「──っ!」」


 ──父親が、戻ってきたのは。

 数分前の穏やかな笑みはどこへいったのか。父親は、普段の娘と同じ──それ以上に冷え切った目をしている。


「あ~……店長さん? 今、うちの娘になにか……【なにか】言いかけましたか?」
「滅相もございません!」

「でしたら、娘の手を握るその手はいったい?」
「たまたまぶつかってしまいました!」


 慌てて離れる田塚と、そんな田塚を睨む父親を見て。鳥羽井はぼんやりと、考えてしまった。

 普段の自分と田塚は、周りからこのように見えているのか。……漠然と、そんなことを。 




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