短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【花言葉には頼らない】

最終話【ナデシコの花言葉は『純愛』】

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 翌日の、閉店後。


「待って待って。送るよ」


 いつもと変わらず、帰ろうとする鳥羽井を田塚が引き留めた。


「ですから、何度も何度もお伝えしていますけど。店長は私のことを心配せず、しっかり休んでください」
「だから。僕はスーパーで買い物があるんだって」


 普段と変わらない笑みを浮かべて、田塚は鳥羽井の隣に立つ。
 そんな田塚を見上げて、鳥羽井は俯く。


「なるほど。では、メインは私ではなくお買い物……と」


 昨晩、お花扱いをされたのが相当気にかかっていたらしい。思わず呟いた子供っぽい言葉に、鳥羽井は自分でガッカリした。

 すると、田塚は肯定。


「──いや。メインは『もう少しキミと一緒にいたい』って下心、かな」


 ──せず、否定した。

 驚く鳥羽井は、自分より背の高い田塚を見上げる。すると視線の先で、珍しいものを見た。


「──ごめん。あんまり、見ないでほしい」


 ──それは、頬を赤く染めている田塚だ。

 つられて、鳥羽井も顔を赤くする。
 すかさず俯いた鳥羽井に気付き、田塚は顔を覗き込む。


「あれ? もしかして、照れてる?」
「っ! みっ、見ないでほしいって言ったのはそっちじゃないですかっ! だから私は、そのっ。……目を、逸らしてあげているだけですっ!」

「じゃあ、こっち見て?」
「さっきと矛盾していますっ!」


 田塚から顔を背け、鳥羽井はそそくさと歩き出す。
 そんな鳥羽井を後ろから追い、田塚はすぐに隣へ並んだ。


「ごめんごめん。謝るから機嫌直し──ちょ、速い速いっ! 待ってよ!」
「別に、置いていっているわけではありません。私の足が速いだけです。……若いので」
「凄く怒ってる!」


 慌てて追いかけると、すぐにその距離は縮まった。
 そして田塚は、隣を歩く鳥羽井の手を握る。


「えっ。ちょっと、なに……てっ、店長っ?」
「僕、オジサンだからさ。こうでもしないとついていけないんだ」

「もしかして、怒ってます?」
「まさか! 大人の男はこんなことで怒らないよ」


 手を繋いだまま、田塚は笑う。


「それに、僕は花屋の店長だよ? 我慢強くないと、花なんて育てられないでしょ?」


 それは、私を花扱いしているんですか? そう反論しようとするも、鳥羽井は閉口した。


「そうですか。それはまぁ、なんとも難儀な性格ですね」


 今日は、父親が途中まで迎えに来てくれているのだが。……あえてそれは、伝えずに。

 嬉しさの反面、大人の余裕を見せる田塚が少しだけ憎い。だからわざと、手を放さないのだ。

 決して、放したくないからではない。……鳥羽井は自分にそう、言い聞かせた。




【花言葉には頼らない】 了




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