短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【残念イケメンVS残念イケメン(仮)?!】

4話【我之くんは可愛い?】

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 翌日の、放課後。


「──いや、なんでこうなった?」


 二人きりの教室で、皆葉は我之に訊ねる。
 我之の机には、所狭しと並べられた化粧品。それは全て、皆葉の私物だ。


「ありがとう、杏歩! では、私を最高に可愛くしてくれ!」
「駄目だ、人の話を聞いてない」

「杏歩。キミは将来、スタイリストになりたいのだろう? だったら、私を練習台に使ってくれてかまわない! そして、可愛くしてくれ!」
「それっぽいこと言い出した気もするけど、下心が全く隠せていない。……まぁ白華の言う通り、スタイリスト志望だけどさ」


 瞳を輝かせる我之を見つめ、皆葉はため息を吐いた。


「はぁっ。……分かった、やるよ。白華は素材がいいから、やり甲斐あるしね」

「それは『可愛い』ということかいっ? ありがとうっ!」
「この前は『格好いいって言ってっ!』とか言ってたくせに……」


 恋に対して盲目すぎる我之に苦言を呈したところで、なにも届かない。そうと分かっている皆葉は、化粧道具をひとつ、手に取った。


「よろしく頼むよ!」
「はいはい。分かったから、目を閉じて口も閉じて」


 皆葉の動きに気付いた我之は信頼を口にすると、すぐに目を閉じる。ウキウキと心を弾ませている我之に化粧を施すため、皆葉は顔を寄せた。
 ……その時だ。

 ──騒々しい足音と共に、教室の扉が勢いよく開かれたのは。


「──我之はいるかッ!」
「「──っ!」」


 驚いた我之と皆葉は、すぐに音がした方を振り返る。
 そこに立っていたのは、話題の人物だった。


「お、小野賀っ?」


 ──血相を変えた、小野賀だ。

 小野賀はいつも、我之の前では感情が高ぶっている。理由は様々だが、とにもかくにもいつも騒々しいのだ。

 ……だが、どうしたことだろう。今の小野賀は、普段とは違った。

 小野賀は教室の入り口に立ったまま、椅子に座る我之を睨みつける。


「校内新聞が刷り終わったので見せに来てみれば……ッ。なにをしている、我之」
「えっ、なに……って──」

「放課後の教室を、そんなふしだらな行為に使うとはな。……見損なったぞ、我之ッ!」


 小野賀の言葉に、我之は戸惑う。『ふしだらな行為』と言われて、我之は机の上に視線を落とした。

 化粧は、校則違反。そのことを、小野賀は言っているのだろうか。
 言葉を失った我之に代わり、皆葉が反論する。


「待ってよ、小野賀君。白華は──」
「杏歩、いいんだ。元はと言えば、私が杏歩に頼んだことだから。……小野賀、誤解しないでほしい。杏歩は、仕方なく私に付き合ってくれただけで──」

「──『白華』に『杏歩』だと……ッ?」


 眉間の皺を深くする小野賀を見て、皆葉は事態を把握した。
 だが、それを我之に伝えようとする直前。……小野賀が、吠える。


「──そういうこと、だったのか。……もういいッ! 勝手にしろッ!」


 そのまま、小野賀は教室から立ち去ってしまった。


「えっ? 小野賀……っ」


 即座に、我之は直感する。『小野賀を怒らせた』と。……『小野賀に嫌われたのかもしれない』と、我之は感じてしまったのだ。

 不意に頬を伝ったのは、いつもの幸福な涙とは違う。悲しみから零れ出る、苦しさを孕んだ涙だ。

 ──そう。我乃白華は、小野賀壱馬を怒らせてしまったのであった。 




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