短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【残念イケメンVS残念イケメン(仮)?!】

5話【我之くんはヒロイン?】

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 翌日から、小野賀は我之のいる教室に姿を現さなくなった。

 初めは小野賀が来ないことに驚いていたクラスメイトたちであったが、数日もすると【心配の矛先】が変わる。


「我之くん、大丈夫?」
「最近、元気ないよね……」
「もしかして、小野賀様が教室に来ないから?」


 その矛先は、言うまでもなく我之に向かった。

 そう。明らかに、我之の元気がないのだ。数人のクラスメイトが、日を分けて我之に訊ねてしまうほどに。

 けれど、我之の返事はいつも誰に対しても同じだ。


「心配してくれて、ありがとう。でも、私は元気だよ。むしろ、教室が静かでいいじゃないか」


 クラスメイトは、二人になにがあったのか。その詳細を知らない。
 けれど、我之の気持ち──恋心は、知っている。だからこそ、なにかをしてあげたかったのだ。

 しかし、なにがあったのかを知らないがゆえに、深くは踏み込めない。

 ──そんな中、ただ一人だけ。唯一、動ける人間がいた。


「──白華。今日の昼休み、ちょっと時間ちょうだい」


 全ての事情を知っている唯一のクラスメイト──皆葉杏歩だ。


 * * *


 昼休みになり、我之は皆葉に指定された約束の場所に来ていた。そこは、いつぞやに小野賀が女生徒から告白されていた場所だ。

 なんとなく落ち着かない気持ちで皆葉を待っていると、すぐに我之は顔を上げた。


「……あっ、杏歩。こんなところに呼び出して、どうしたんだい?」


 笑みを浮かべる我之のもとに、皆葉が歩み寄る。

 ──その笑顔が【作り笑い】だと、皆葉はすぐに見破った。


「白華。最近さ、放課後にくっだらない理由でファミレスに呼び出さなくなったよね」
「えっ? ……あ、あぁ、そうだね。いや、私も少しは反省してね? あまり杏歩に迷惑を──」

「──白華」


 誤魔化す我之と、皆葉は距離を詰める。


「──今から白華に告白するから、よく聴いて」
「──えっ?」


 真剣な表情で伝えられた【告白】という単語。いったいどんな告白なのか、我之は身構えた。

 絶交宣言か、それとももっと別のなにかなのか。不安を強く抱きながらも、我之は小さく頷く。

 もう一歩、皆葉が我之に近付いた。

 ──その時。


「──やはりッ! 俺様は納得がいかないぞォオッ!」
「「──っ!」」


 騒々しい足音と共に、聞き慣れた怒鳴り声。我之と皆葉は声がした方を振り返る。

 駆け寄ってきたのは……間違えもしない。


「──小野賀っ?」


 ──そう、小野賀壱馬だ。


「オイッ、貴様ッ! 皆葉と言ったか? その女は俺様のライバルだッ! 幼馴染だかなんだが知らないが、勝手に盗ろうとするなッ! この、泥棒猫がァアッ!」


 小野賀の言葉に、我之は驚く。……しかし、皆葉は冷静だった。
 そして、皆葉は【告白】の真意を口にする。


「いや、小野賀君。ちょっと聴いてほしい。……最近、白華はずっと元気なくてさ、気持ち悪かったんだよ」
「き、気持ち悪い……っ?」

「だから、小野賀君の気持ちを代わりに告白しておこうかなと思って」
「俺様の気持ち、って……ハァアアッ?」


 愕然とする我之と驚愕する小野賀だったが、小野賀はあることに気付いた。

 ──校舎の窓から、自分たち三人を眺める生徒たちの視線に。


「~ッ! ……我之ッ、ちょっと来いッ!」
「えっ、ちょ──小野賀っ?」


 気付くと同時に注がれる視線に耐えかねた小野賀が、我之の手を引いて走り出す。

 一人残された皆葉は、自分を見下ろす生徒全員に、親指を立ててみせる。

 ──そう。この高校に通う生徒全員が、実は【二人の気持ち】を知っているのであった! 




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