リビングデッドと雪男

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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6話【招待】

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 通院を繰り返しつつ、会社に復帰して一ヶ月後。季節はまだ冬で、そろそろ忘年会シーズンに差し掛かりそうなある日のことだった。


「山瓶子~! 今日飲みに行かねぇ?」


 人間の同僚に、そんなことを言われたのは。

 仕事終わり、これから飲み会でも開こうとしているのか……事務所から出て行こうとしている三人のうち一人が、俺に声をかけてきた。

 ちなみにリビングデッドになってからというもの、俺は一度も宴会には行っていない。いくら俺が不在の間誰かが仕事をカバーしてくれていたとは言え、その仕事量は必要最低限だけだ。つまり……やることはそこそこ残っていた、ということ。

 けれどある程度落ち着いてきた今日、周りから見ても俺は仕事の落ち着きを取り戻せたらしい。その証拠が、この誘いだろう。


「あぁ、構わ――」
「――え? リビングデッドってアルコール平気なん?」


 答えようとしたその瞬間。声を掛けてくれたのとは別の同僚が、口を挟んできた。

 ――それは、純粋な疑問だろう。

 ――正直、俺も盲点だった。


「……確かに」
「いや『確かに』じゃないだろ? 分かんねぇの?」
「ム……」


 元々そこまで酒が好きというわけでもなかったから、気にしたこともなかったのだ。いざ言われてみると、答えに詰まる。

 もしも問題があったら、馬男木先生を困らせてしまうかもしれない。以前、舌を火傷しただけで不満そうだったからな。


「……すまない。次の通院時に確認してみる」
「そっかぁ~……まぁ、何か問題あったら俺らにも責任出ちゃうしな」
「確認したら教えてくれよな!」


 頷きで応じると、同僚三人組は事務所から出て行った。
 三人の後ろ姿を見ていると、妙に胸がソワソワした……気が、する。



 気になったことは即日訊きたくなるのが知的好奇心というものだろう。


「アルコール、ですか」


 いつもの診察を終えた後、俺は思い切って馬男木先生に訊いてみた。
 診察結果を書いていた手を一度止め、馬男木先生が俺に向き直る。


「えっと……人工の内臓を移植したら、問題はありません。アルコールを分解するのは肝臓なので、肝臓の移植ですね。リビングデッドだけが加入できる保険に、確か【内臓移植保険】があった筈です……えっと、確か内容は……」
「新しく内臓を移植する、または移植した内臓が壊れた時の修理や再移植の金額が安くなる保険ですよね」
「そうです。ご、ご存知でしたよね、スミマセン……」


 そうか、やはり人工の内臓移植か。


「そのままでも大丈夫、ですけど……人間の時よりは内臓の機能が低下しているので、酒豪でしたら移植をお勧めします……。あ、あの……かなり飲みますか?」
「いえ、全く」


 どうやら心配させてしまったらしい。それもそうか……普通、アルコールを好んで勧める医者なんていないだろう。

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