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5話【通院】
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どうやら俺は、知らぬ間に馬男木先生から【軽率なこと】を訊かれていたらしい。
心当たりの無い俺が視線で『分からない』と伝えると、馬男木先生が困惑し始めた。
「あ、えっと……あの、ボク……訊いたじゃ、ないですか……っ」
「何をでしょうか」
「その……ご、ご関係性、を……っ」
その言葉でようやく、馬男木先生が言いたいことを察する。
おそらく馬男木先生は【俺と鷭の関係性を訊ねたこと】を気にしているのだろう。
不安そうな顔で視線を彷徨わせている馬男木先生に向かって、俺は首を横に振ってみせた。
「俺と鷭の関係について、でしたか。……俺が知らないだけで、バンシーとリビングデッドは手を繋いではいけないとか……そういう何かがあったんですよね。その辺り、できれば詳しく聞――」
「そ、そんなものありません……っ!」
「ム……?」
またもや盛大な勘違いをやらかしたらしい。
どうやらバンシーとリビングデッドが手を繋いでも問題はないようだ。確かに、馬男木先生に握手を求めた時は何の問題も無いと言われていた。
――ならばどうして、馬男木先生はそんなことを気にしたのだろうか。
心の中で呟いた疑問が届いたのか……馬男木先生が独り言のような声量でポソポソと呟く。
「半司さんにも謝ったのですが……あの時、ボクが勝手に……こ、こいっ、恋人と、勘違い……してしまって」
「俺と鷭が? いや、馬男木先生……それはあり得ないです。割と。本気で。本当に」
「け、結構食い気味に否定、するんですね……?」
心外だ。鷭とは性別を越えた友人ではあると自負しているが、恋仲に発展するかと訊かれるとノーと答える。鷭に同じことを言ってみたら似たようなこと――もっと酷いことを答えるだろう。そんな関係性だ。
「そもそも、鷭は綺麗な顔が好きです。俺は対象外ですよ」
絶対にありえないと知ってもらう為、プライバシー云々をガン無視して付け加える。
すると今度は、馬男木先生が食い気味にかかってきた。
「あ、貴方の顔は……か、カッコいいです……っ!」
「馬男木先生の方が断然綺麗です。比べものになりませんよ」
「ひ、あ……っ!」
だから断然、鷭に好かれるのは馬男木先生だと伝えたかったのだが……どうやら俺は何か間違えたらしい。
「ま、馬男木先生? 水滴が……」
「み、みみ、みな、見ないで、ください……っ!」
しまった。馬男木先生は照れ屋だ。
照れる沸点はよく分からないが、どうやら俺の本心にある評価で体温を上昇させてしまったらしい。毛先だけでなく、指先からも水滴が滴っている。
とにもかくにも、お互い胸に突っかかっていたことを打ち明けられてスッキリした。これで来週の診察まで、モヤモヤしないで済む。
心当たりの無い俺が視線で『分からない』と伝えると、馬男木先生が困惑し始めた。
「あ、えっと……あの、ボク……訊いたじゃ、ないですか……っ」
「何をでしょうか」
「その……ご、ご関係性、を……っ」
その言葉でようやく、馬男木先生が言いたいことを察する。
おそらく馬男木先生は【俺と鷭の関係性を訊ねたこと】を気にしているのだろう。
不安そうな顔で視線を彷徨わせている馬男木先生に向かって、俺は首を横に振ってみせた。
「俺と鷭の関係について、でしたか。……俺が知らないだけで、バンシーとリビングデッドは手を繋いではいけないとか……そういう何かがあったんですよね。その辺り、できれば詳しく聞――」
「そ、そんなものありません……っ!」
「ム……?」
またもや盛大な勘違いをやらかしたらしい。
どうやらバンシーとリビングデッドが手を繋いでも問題はないようだ。確かに、馬男木先生に握手を求めた時は何の問題も無いと言われていた。
――ならばどうして、馬男木先生はそんなことを気にしたのだろうか。
心の中で呟いた疑問が届いたのか……馬男木先生が独り言のような声量でポソポソと呟く。
「半司さんにも謝ったのですが……あの時、ボクが勝手に……こ、こいっ、恋人と、勘違い……してしまって」
「俺と鷭が? いや、馬男木先生……それはあり得ないです。割と。本気で。本当に」
「け、結構食い気味に否定、するんですね……?」
心外だ。鷭とは性別を越えた友人ではあると自負しているが、恋仲に発展するかと訊かれるとノーと答える。鷭に同じことを言ってみたら似たようなこと――もっと酷いことを答えるだろう。そんな関係性だ。
「そもそも、鷭は綺麗な顔が好きです。俺は対象外ですよ」
絶対にありえないと知ってもらう為、プライバシー云々をガン無視して付け加える。
すると今度は、馬男木先生が食い気味にかかってきた。
「あ、貴方の顔は……か、カッコいいです……っ!」
「馬男木先生の方が断然綺麗です。比べものになりませんよ」
「ひ、あ……っ!」
だから断然、鷭に好かれるのは馬男木先生だと伝えたかったのだが……どうやら俺は何か間違えたらしい。
「ま、馬男木先生? 水滴が……」
「み、みみ、みな、見ないで、ください……っ!」
しまった。馬男木先生は照れ屋だ。
照れる沸点はよく分からないが、どうやら俺の本心にある評価で体温を上昇させてしまったらしい。毛先だけでなく、指先からも水滴が滴っている。
とにもかくにも、お互い胸に突っかかっていたことを打ち明けられてスッキリした。これで来週の診察まで、モヤモヤしないで済む。
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