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7話【予想外】
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薄々酒好きだとは思っていたが、まさか【酒に弱い】酒好きだったとは……予想外だ。
それにしても、馬男木先生が酔っているこの状況……他種族に偏見は無いけれど、他種族への知識が特段あるわけではない俺からすると、正しい介抱の仕方が分からない。
けれど放っておくこともできないので、俺は直接馬男木先生から教えてもらう決断をした。
「馬男木先生。何をどうしたら、馬男木先生の酔いは醒めるのでしょうか」
「あぁ~……酔い、酔い醒まし……ですかぁ? ふふ~っ」
普段はオロオロしていて、大体眉を八の字にしているからだろうか。無邪気に笑っている馬男木先生が新鮮で、何だか落ち着かない。
馬男木先生は綺麗な顔をしている。中性的で、初めて病院で見た時は二度見してしまったくらいだ。その時はまさか、担当医になるとは思っていなかったし、まさかこんな風に院外で会うとも思っていなかったけれど。
「貴方は、酔ったことってありますか~?」
「俺、ですか。まぁ、何度か」
そしてまさか、こんな風に雑談を交わすとも思っていなかった。
馬男木先生はニコニコと笑みを浮かべながら、クルクルと回していた指で俺が着ている服の袖を引き始める。
――すると不意に、潤んだ瞳を向けてきた。
「じゃあ、気持ちいいって……ご存知、ですよね……?」
見た目が綺麗な馬男木先生だけれど、普段は【可愛い】と思う。
いつも頼りなさそうな顔をしているくせに、やることなすこと何だって一生懸命で……何だか微笑ましく見えるからだ。
――なら、今の馬男木先生は……?
「こんなに気持ちいいのに……やめちゃうなんて、勿体無いですよね」
「馬男木、先生」
「ねぇ、山瓶子麒麟さん。ここは病院じゃありません。先生は抜いて――いっそボクのことも……半司さんみたいに、下の名前で呼んでください」
袖を引いていた指が、手に振れる。何の温度も感触もしないけれど、目で見ているから気付いた。
指と指を絡めて、どこまでも妖艶に……馬男木先生は俺を見上げている。
「半司さんだけ、ズルイです。ねぇ、お願いします。ボクのこと『雪豹』って、呼んでください……っ」
繋がれた手が、馬男木先生の頬まで引き寄せられた。
甘えるような声色でそう強請った馬男木先生は、引き寄せた俺の手に頬をすり寄せている。まるで、甘えたがりの猫みたいだ。
――その様子を見ていると、何故か……胸の辺りが、落ち着かない。
「ゆ、き……ひょう、さん……?」
「……えへっ。もっと呼んでください……麒麟、さんっ」
何だ? 何だ、何だ何だ何だこの状況は……ッ。
馬男木先生は、酔うと誰彼構わずこんな感じなのだろうか。
――だとすると、それは何となく面白くないぞ。
それにしても、馬男木先生が酔っているこの状況……他種族に偏見は無いけれど、他種族への知識が特段あるわけではない俺からすると、正しい介抱の仕方が分からない。
けれど放っておくこともできないので、俺は直接馬男木先生から教えてもらう決断をした。
「馬男木先生。何をどうしたら、馬男木先生の酔いは醒めるのでしょうか」
「あぁ~……酔い、酔い醒まし……ですかぁ? ふふ~っ」
普段はオロオロしていて、大体眉を八の字にしているからだろうか。無邪気に笑っている馬男木先生が新鮮で、何だか落ち着かない。
馬男木先生は綺麗な顔をしている。中性的で、初めて病院で見た時は二度見してしまったくらいだ。その時はまさか、担当医になるとは思っていなかったし、まさかこんな風に院外で会うとも思っていなかったけれど。
「貴方は、酔ったことってありますか~?」
「俺、ですか。まぁ、何度か」
そしてまさか、こんな風に雑談を交わすとも思っていなかった。
馬男木先生はニコニコと笑みを浮かべながら、クルクルと回していた指で俺が着ている服の袖を引き始める。
――すると不意に、潤んだ瞳を向けてきた。
「じゃあ、気持ちいいって……ご存知、ですよね……?」
見た目が綺麗な馬男木先生だけれど、普段は【可愛い】と思う。
いつも頼りなさそうな顔をしているくせに、やることなすこと何だって一生懸命で……何だか微笑ましく見えるからだ。
――なら、今の馬男木先生は……?
「こんなに気持ちいいのに……やめちゃうなんて、勿体無いですよね」
「馬男木、先生」
「ねぇ、山瓶子麒麟さん。ここは病院じゃありません。先生は抜いて――いっそボクのことも……半司さんみたいに、下の名前で呼んでください」
袖を引いていた指が、手に振れる。何の温度も感触もしないけれど、目で見ているから気付いた。
指と指を絡めて、どこまでも妖艶に……馬男木先生は俺を見上げている。
「半司さんだけ、ズルイです。ねぇ、お願いします。ボクのこと『雪豹』って、呼んでください……っ」
繋がれた手が、馬男木先生の頬まで引き寄せられた。
甘えるような声色でそう強請った馬男木先生は、引き寄せた俺の手に頬をすり寄せている。まるで、甘えたがりの猫みたいだ。
――その様子を見ていると、何故か……胸の辺りが、落ち着かない。
「ゆ、き……ひょう、さん……?」
「……えへっ。もっと呼んでください……麒麟、さんっ」
何だ? 何だ、何だ何だ何だこの状況は……ッ。
馬男木先生は、酔うと誰彼構わずこんな感じなのだろうか。
――だとすると、それは何となく面白くないぞ。
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