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第5章 マグロ

(前編)昼過ぎ 中 *

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 だからと言って……ショタを傷付け、泣かせていい理由にはならない。
 外回りをしていて、誰もいない三階の通路で蹲るマグロの前に、不意に影が差す。


「マグロ? お前さん、何やってるんだ?」


 目の前に立っていたのは、ゴリだ。マグロは素早く顔を上げて、視線を泳がせる。

 最近のゴリは、何かに悩んでいた。そんなゴリに、自分のせいでショタを傷付けてしまったと相談するのは、図々しいんじゃないか。マグロはそう考え、口を閉ざす。

 落ち着きの無いマグロに視線を合わせるよう、ゴリがしゃがみ込んだ。


「俺はショタみたいに、お前さんの考えが読めないんだ。だから、口に出してくれると助かる」


 そう言って、ゴリは笑った。

 自分だって悩んでいるのに、それでも部下であるマグロを心配してくれる姿が……マグロの胸から、言葉を溢れさせる。


「ショタ、を……泣かせて、しまって……」
「マグロが? ショタを? 何で?」
「オレが、ハッキリ……言えないから……っ」


 ショタのことが好きだから、業務として抱きたくない。たったそれだけの言葉が、上手く伝えられない……マグロはしどろもどろになって、ゴリに悩みを打ち明けた。

 マグロの呟きに、ゴリは考えるような素振りをする。

 マグロというニックネームの由来は、ネコの時……喘がず、何の反応も示さないから……マグロはふと、そんなことを思い出した。

 自分の為に悩んでくれているゴリを見つめて、マグロは口を開く。


「か、課長……この後、予定は……?」


 マグロの問いに、ゴリは小首を傾げながら答えた。


「四階で、二人分の依頼が入ってる……それが、どうかしたか?」


 ゴリの答えに、マグロは視線を泳がせながら……ポツリと呟く。


「あ、の……お、お願いが……ッ」


 そのお願いは、ゴリにとって予想外のものだった。



 営業部の事務所がある三階の通路で、マグロはゴリの上に乗り、向かい合うようにして抱き付く。


「……っ」


 ゴリの硬く、逞しいペニスをアナルで咥え込みながら、マグロは息を呑んだ。
 ゴリはマグロの腰に手を添え、腑に落ちないといった表情を浮かべながら、マグロの体を揺する。

 マグロからのお願いは【ゴリへの性処理依頼】だ。と言うのも、ただゴリとセックスをしたかったからではない。
 セックスをして、気持ちいいと……マグロだって思う。ただそれを、声にも表情にも出せないだけ。

 ゴリとのセックスで、自分が感じていることを口に出せたら……ショタにも気持ちを伝えられるんじゃないか……そういう算段だ。

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