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【目が合わなくても愛してる】 *

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 ゆっくりと、扉を開く。そしてそのまま、部屋の中を覗いた。

 ベッドと、学習机。そして、パソコンが置かれた机があるだけ。実に殺風景で、シンプルな部屋だ。
 無駄な物が一切無く、生活感らしき物は今朝着替えたであろう寝巻のみ。きちんと畳まれた寝間着が、ベッドの上に置かれている。

 部屋の中に入り、宮古は吸い寄せられるかのようにベッドへと近付く。


「す、ごい。迫の、寝巻だ……っ」


 ベッドの上に畳んで置いてある寝巻を見て、宮古は手を伸ばそうとする。


「迫、パジャマじゃなくて……シャツと短パンで、寝てるんだ。……知らな、かった」


 てっきり、迫はパジャマで寝ていると思っていた。意外な一面に、宮古は頬をゆるめる。

 ──だが、慌てて手を引っ込めた。


「バッ、バカ……ッ! 迫は、僕を信頼して部屋に入れてくれたんだろ……ッ!」


 宮古なら、一人で迫の部屋に入ったって、なにもしない。迫はそう思って、宮古を一人にしたのだろう。
 危うく迫の信頼を裏切りそうになった宮古は、伸ばしかけた右手を、左手で握る。そしてすぐさま、ベッドから視線を外した。

 次に目を向けたのは、パソコンだ。
 機械には疎い宮古だが、そんな宮古の目にも……迫の部屋に置いてあるパソコンは、高そうに見えた。


「このパソコンで、昨日の荷物……注文、したのかな……?」


 視線がパソコンから、椅子に移る。
 迫が座った、椅子。視線が釘付けになりそうな自分を、宮古は慌てて叱る。


「バカ、僕のバカ……っ! だから、迫は僕を信じてくれてるんだってば……っ!」


 宮古は頭を何度も横に振り、今度は学習机に視線を移した。
 そこで宮古は、見覚えのある物を見つける。


「──え、ッ?」


 学習机に近付き、机上に置いてある物を、ただただジッと見つめた。

 やがて硬直が解けた体を動かし、宮古は宮古の視線を釘付けにした【とある物】を手に取り、表と裏を見る。


「……な、んで? ……こ、れ……って……えっ?」


 ──それは決して、迫の部屋にあってはいけない物だった。……あるはずが、ないものだ。

 なぜならならそれは──。

 ──その瞬間。


「──な、に……?」


 聞き覚えのない音が、宮古の鼓膜を揺さ振った。

 激しい、電気のような音。けれど、銃を乱射した音のようにも聞こえる……耳障りな、音だ。
 その音はどう考えても、日常的に聞くことはないはずの音。宮古は、音がした方をゆっくりと振り返る。


「……ッ、さ──」


 後ろに立っていた人物の名前を、宮古は呟こうとした。

 ──だが、できなかった。


「──そっか。見ちゃったんだね、宮古?」


 不可解な音を鳴らしている黒い物体が、宮古の首筋に押し当てられる。


「──ッ!」


 それによって、宮古はバランスを崩す。
 呆気無く床に倒れ込んだ宮古は、頭を強く打ち付けてしまう。

 どうして、迫の部屋に【あれ】があるのか。……そう考えると同時に、宮古の意識はプツリと切れた。 




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